映画『ブルゴーニュで会いましょう』 - エンタメレストラン -

2016/11/18

エンタメレストラン

Vol.126
ブルゴーニュで会いましょう
2016年11月19日(土)Bunkamura ル・シネマほかにてロードショー
http://bourgogne-movie.com/
© ALTER FILMS - TF1 FILM PRODUCTIONS - SND
【イントロ&ストーリー】
世界的なワインの生産地であるフランス・ブルゴーニュ地方を舞台に、時代の波に乗り遅れたワイナリーの再建に挑む家族の人間模様を描く。監督は本作が長編2作目となる新鋭、ジェローム・ル・メール。ブルゴーニュの美しい四季を背景に、全編ロケ撮影を敢行。1本のワインがもたらす、再生と絆の物語を撮りあげた。職人気質で頑固な父親役には、フランスを代表する名優ジェラール・ランヴァン。そんな父に反発しながらも、ワインづくりに情熱を傾けていく息子には、役者であり『イヴ・サンローラン』ほか監督としても高い評価を受けるジャリル・レスペールを起用。この秋、ワイン好きには必見の1本。
★ワインの名産地ブルゴーニュで生まれ育ち、パリに出て辛口のワイン評論家となったシャルリ(ジャリル・レスペール)。順風満帆な人生を送っていた彼のもとに、ある日、実家のワイナリーが経営不振で買収寸前という知らせが届く。久しぶりに父親のフランソワ(ジェラール・ランヴァン)と再会したものの、「ワインは家族でつくるもの」という代々の家訓を守ってきた父の態度は頑なで、2人の溝はなかなか埋まらない。それでも自身の手で再建を決意するシャルリ。だがテイスティング能力は一流でも、葡萄栽培やワインづくりはまったくの素人で…。
【キャスト&スタッフ】
出演:ジェラール・ランヴァン、ジャリル・レスペール、アリス・タグリオーニ、ローラ・スメットほか
監督:ジェローム・ル・メール
脚本:レミ・ブザンソン、ヴァネッサ・ポータル、ジェローム・ル・メール
配給:クロックワークス/アルバトロス・フィルム

全編ロケ撮影で描かれたワイン造りのディテール
浮かび上がるのは“批評”と“創造”を巡る葛藤の物語

 どんなジャンルにおいてもそうだと思うのだけれども、作り手たるもの、自分の作品が“評論家という人種”に理不尽に貶されたときはイラっとするし、口には出さなくても一度くらいはこう心の中でつぶやいたことがあるに違いない。

 「そんな偉そうな御託を並べるのならば、じゃあ、お前が作ってみろよ!」と。

 この映画『ブルゴーニュで会いましょう』の主人公シャルリは、パリで著名なワイン評論家である。研ぎ澄まされた舌と豊富な知識の持ち主で、ワインを評価する辛口のガイドブックは出せばロングセラーとなり、今年で7冊目を数える人気ぶり。実家はブルゴーニュ地方の老舗ワイナリーと恵まれており、名産地で生まれ育った環境が彼の才能を支えていた。が、ただし、実際にワインを造ったことはない。父親とそりが合わず、20歳のときにブルゴーニュを離れてしまったのだ。

 そんな主人公が、実家のワイナリーの倒産の危機に直面し、しぶしぶ帰郷してワイナリー再建に乗り出す。本作は、長年由緒ある畑を守ってきた父親に「ワインづくりは聖職だ、片手間にはできん」と叱咤され、悪戦苦闘するひとりの息子の話であり、また、実作へと挑む“評論家の矜持”の物語でもある。もし失敗したら、今まで書いてきたことがすべて、「偉そうな御託」になってしまうわけで……シャルリは、捨て身の覚悟でワインづくりに取り組む。

 見モノなのはそのプロセスとディテール。栽培や醸造の過程が、とてもていねいに描かれてゆく。さすがシャルリはトレンドに敏感で、ビオワインを求めて、あえて古典的な手法に回帰する。畑はトラクターでは耕さずに馬を使い、除草剤、化学肥料、殺虫剤なども用いず、有機農法を徹底させる。もっとも重要な、収穫時期のタイミングを探って判断が二転三転する場面は、ちょっとしたサスペンス映画の趣きだ。当たり前のことではあるが、大変な労力をかけてこそ芳醇なワインは生まれる。いや、これは、あらゆる創作物に通じもするだろう。

 全編、ブルゴーニュで撮影、言うなれば“真の主人公”は、風光明媚にして広大な畑そのものなのかもしれない。本作のフランス語の原題は『Premieres Crus(プルミエ・クリュ)』。“第一級”の意味で、畑の土壌の格付けのこと。最上級の“特急”は「Grands Cru(グラン・クリュ)」と呼ばれる。シャルリは幼い頃、祖父から教わる。「テロワール(terroir)、すなわち“畑の個性”が語りかけてくれ、ワインづくりの手助けをしてくれる」と。ブドウを取り巻く自然環境とよく対話し、時にはとことん格闘をして、そうして人はやっと、極上のワインを手に入れるのだ!

 ちなみにシャルリのような著名なワイン評論家をフランスで探すと、ミシェル・ベタンヌと、ティエリー・ドゥソーヴのコンビがいる。2人が毎年出す恒例のガイド本は、ワインの評判や売上にも大きな影響を与えるほど。まあ、ワインを愛する彼らに向かって「じゃあ、お前が作ってみろよ!」と言う人は、そうそういないとは思いますが──。

Text by 轟夕起夫(映画評論家)
「キネマ旬報」「映画秘宝」「ケトル」などで執筆中。近年の編著に「好き勝手夏木陽介スタアの時代」(講談社)など。雑誌「DVD&ブルーレイでーた」で連載した名物コラム『三つ数えろ!映画監督が選ぶ名画3本立てプログラム』も単行本化。取材・構成を担当した『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』がスペースシャワーブックスより発売中。

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