映画『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』 - エンタメレストラン -

2017/02/03

エンタメレストラン

Vol.131
雨の日は会えない、晴れた日は君を想う
2月18日(土)より、新宿シネマカリテほか全国公開
http://ame-hare-movie.jp/
© Veit Helmer Film-produktion
【イントロ&ストーリー】
『ナイトクローラー』(2015年)の圧倒的演技で映画ファンを魅了したジェイク・ギレンホールの最新主演作。味気ない日々のなかで心を失ってしまった男が、妻の死をきっかけに自分を取り戻そうともがく様子をエモーショナルに描く。監督は『ダラス・バイヤーズクラブ』(2013年)、『わたしに会うまでの1600キロ』(2014年)などのジャン=マルク・バレ。ジェイク演じるデイヴィスと親密になるシングルマザーをナオミ・ワッツ、ジェイクの力になろうとする義父をクリス・クーパーがそれぞれ演じる。
★ウォール街で働く銀行員のデイヴィス(ジェイク・ギレンホール)。エリート街道に乗りながらもどこか空虚な毎日を送っていた彼は、ある朝、突然の交通事故で美しい妻を失うが、自分が一滴の涙も流せないことに気付く。「心の修理も車の修理も同じことだ。まず隅々まで点検して、組み立て直すんだ」という義父の言葉に従い、デイヴィスは身の回りのあらゆるものを破壊しはじめる。パソコン、妻のドレッサー、そして家…。そこで彼は、妻が遺した幾つもの“メモ”を見つけるが…。
【キャスト&スタッフ】
監督: ジャン=マルク・ヴァレ
脚本: ブライアン・サイプ
出演:ジェイク・ギレンホール、ナオミ・ワッツ、クリス・クーパーほか
配給:ファントム・フィルム

自販機の「M&M's」チョコがきっかけで人生が変わる物語
重荷を背負わされた人たちを描く、ヴァレ監督の巧みな演出

 美しい妻が突然、自動車事故で亡くなったのに、涙一滴流れず、悲しくない夫──。

 こう書くと、昨年公開された西川美和監督の『永い言い訳』と設定が酷似していて驚くのだが、これはジャン=マルク・ヴァレ監督の『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』のストーリーだ。ただ、大きな違いもある。『永い言い訳』で本木雅弘が演じた夫は妻の亡き後、周囲に向けて悲しみに暮れている演技をするが、本作の主人公(ジェイク・ギレンホール)は、「なぜ自分は悲しくないのか?」「そもそも自分たち夫婦はどういう関係だったのか?」「妻とは自分にとって何だったのか?」と徹底して自分に向き合う。

 その意味では、設定こそ似ているが、主人公が向かうベクトルは正反対と言っていい。妻の亡き後、ある家族との交流を通じて主人公が精神的な平穏を抱くようになる設定も似ているが、西川監督作品では同じ事故で妻を亡くした夫同士が結びつくのに対し、本作では予想もつかない偶然が用意されている。その“飛び道具”的なアイテムが、皆さんよくご存じ「M&M's」のチョコレートなのである。

 収容された病院で、手当ての甲斐なく妻が亡くなったとき、ジェイク演じるデイヴィスは突然、猛烈な空腹を覚え、廊下の自動販売機に25セントコインを5枚入れて「M&M's」のチョコレートを購入しようとする。ところが商品が引っかかり、自販機を押したり蹴ったりしても出てこない。デイヴィスはウォールストリートの銀行で役員を務めるエリートだから、普段ならそんな小銭には執着しない。だが妻を亡くした混乱の中、理不尽な出来事がどうにも許せず、自販機の管理会社に長い抗議文を郵送する。そして、数日後。夜更けに、担当者から職務を越えた電話がかかってくる──。

 「Do you have anyone talk to you?」(あなたには誰か、話せる相手はいますか?)

 ナオミ・ワッツ演じる苦情受付係のさり気ない優しさが、デイヴィスの凍えた心に灯をともし、2人はたびたび電話を通して会話をするようになる。彼女の家へ行き、不登校の息子とも交流し、手作りの料理を食べるようになる。その過程で彼は、亡き妻の心をなんとか理解しようと、妻の持ち物を狂ったように分解していく。身の回りの小物はやがて冷蔵庫などの家電となり、ついには部屋も家も「解体してしまえ!」と。バラバラにしたものの中には、いったい何があるのだろうか?

 振り返ってみればジャン=マルク・ヴァレ監督は、神から思わぬ重荷を背負わされた人間を撮り続けてきた。それまでの生活と人間関係を一新し、前の環境では出会うはずもなかった人と知り合い、深い精神性で結ばれるまでの物語。マシュー・マコノヒーにアカデミー主演男優賞を与えた『ダラス・バイヤーズ・クラブ』(2013年)も、主人公がエイズを発症したことで、薬を巡って、それまで嫌悪していたLGBTの人たちとともに戦っていく物語だった。『わたしに会うまでの1600キロ』(2014年)でリース・ウィザースプーンが演じたヒロインも、離婚と母の死を経て、長いトレイルウォークへと足を踏み出していく。たった25セント硬貨5枚で買える「M&M's」のチョコレートがきっかけで人生が変わる物語も、ヴァレ監督の巧みな演出をもってすれば、すんなり受け入れられてしまうのだ。

Text by 金原由佳(映画ジャーナリスト)
「キネマ旬報」「装苑」「ケトル」「母の友」「朝日新聞」など多くの媒体で執筆中。著書に映画における少女性と暴力性について考察した『ブロークン・ガール』(フィルムアート社)がある。取材・構成を担当した『アクターズ・ファイル 妻夫木聡』『アクターズ・ファイル 永瀬正敏』『鈴木亮平 FIRST PHOTO BOOK 鼓動』(すべてキネマ旬報社)、『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』(スペースシャワーブックス)が発売中。
ぐるなび通信大特集 ジャンル別に一挙紹介!ヒットメニュー2017

ぐるなびPRO for 飲食店

Copyright© Gurunavi, Inc. All rights reserved.