ハワイ発 フレッシュメニューが話題の農場カフェ 前編

ハワイではカフェやレストランを備えた牧場や農場が急増し、話題を呼んでいる。前編では、牧場内だからこそ手に入る新鮮なミルクや肉類を使ったこだわりメニューを提供する店を紹介する。

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Vol.81

常夏パラダイス・ハワイの主な産業は、観光に次いで「農業」が占める。離島はもちろん、一見都会的なオアフ島でも、市街地を離れれば牧場や農場などの農地が多い。そんなハワイでは昨今、カフェやレストランを備えた牧場や農場が急増し、話題を呼んでいる。前編では、牧場内だからこそ手に入る新鮮なミルクや肉類を使ったこだわりメニューを、広大な自然の中で味わえる人気の2店舗を紹介。生産からメニュー開発まで人気の秘密に迫る。

オアフ島東海岸にある広大な牧場では、約500頭の牛が完全放牧で飼育されており、併設のカフェではその牛肉を使ったハンバーガーを堪能できる
牧場で提供されるハンバーガーは分厚くてジューシー。子どもたちも夢中でかぶりつき、ぺろりと平らげるおいしさで、地元客・観光客ともに人気
マウイ島にあるヤギ牧場ではカフェを設けて、そこで生産された様々なフレイバーのチーズを提供。とろけるような舌触りでクセも少なく、食べやすいと好評だ

放牧牛による極上ハンバーガーを絶景とともに堪能する!

観光客で賑わうオアフ島のワイキキから車で約45分。「裏オアフ」と呼ばれるウインドワード(東海岸)沿いの緑深い渓谷に、4,000エーカー(約500万坪) の広大な敷地を誇り、1850年から続く由緒ある家族経営の大牧場「クアロア・ランチ」がある。主に観光客向けの乗馬やバギーライド、カヤックなどのアクティビティツアーを行っていることで有名だが、敷地内に併設する牧場直営のカフェ「アンティ・パッツ・パニオロ・カフェ」(Auntie Pat's Paniolo Cafe)はハワイ在住の地元客にも人気だ。

ボリューム満点の「クラシックバーガー」。パティが驚くほどジューシーで病みつきになる味わい。カリっとした食感のポテトも付く

2004年にオープンしたセルフサービス形式のこのカフェには、ハワイらしいメニューのビュッフェやプレートランチもあるが、牧場で飼育したビーフを使用したハンバーガーが目玉だ。「ここで飼育された『クアロア・ビーフ』は、牧場内でしか購入できません」と、同牧場広報担当のメイ氏は語る。「クアロア・ランチ」の牛はブラックアンガス種が主流で、親牛と子牛を合わせ、常時約500頭を飼育している。人工飼料などは一切与えず、100%草食で、どこまでも続く牧草地でのびのびと飼育された牛たちは、ストレスフリー。その肉は脂肪分が少なく、良質のビタミンが豊富でヘルシーというのが特徴だ。

一番人気はシンプルな 「クラシックバーガー」(9.75ドル=約1,140円)。口にした瞬間、パティのジューシーさにまず驚く。特製ソースを使って絶妙な加減で焼き上げたパティは、パンからはみ出すほど大きく肉厚。噛むと、肉汁がじゅわっと染み出し、口の中に旨みが広がる。牛肉があまり得意ではないという人も「ここのハンバーガーは何度も食べたくなる!」と絶賛するほどだ。

ハンバーガーはほかにも、スイスチーズとマッシュルーム入りの「アンティ・パティズ・メルト」、トロピカルフルーツのソースがハワイらしさを演出する「クアロア」(ともに11.50ドル=約1,350円)、「クアロア・テリヤキ・ビーフ」(10.50ドル=約1,230円)などがあり、もちろんどれもここで飼育されたクアロア・ビーフを使用している。

屋外のラナイ(ハワイ語でバルコニー)のテーブル席は見晴らし抜群。ここで心地よい風に吹かれながら、上質かつフレッシュなハンバーガーを食べればぜいたくな時間が流れる。地元のみならず、海外からのリピーターが多いのも納得できる。

店のラナイ(バルコニー)から眺められる景色は格別。ワイキキとはまた違った景観で食事が楽しめる
理想的な環境でのびのび飼育される牛たち。広い渓谷を自由に動き回るため脂肪分が少なく、草食のため良質のビタミンを含んだ肉となる
SHOP DATA
アンティ・パッツ・パニオロ・カフェ(Auntie Pat's Paniolo café)
Kualoa Ranch
49-560 Kamehameha Hwy.
Kaneohe, HI 96744 U.S.A.
http://www.kualoa.com/

牧歌的なマウイの牧場でヨーロッパ風チーズを味わう

マウイ島のカフルイ空港からハレアカラ・ハイウェイを走った高地の農業地帯クラにあるヤギ牧場「サーフィン・ゴート・デイリー」(Surfing Goat Dairy)。ここは、ドイツでの仕事を引退した後、マウイ島に移民したドイツ人のトーマスとエヴァ・カフサック夫妻が、2002年「ヨーロッパ風チーズが恋しくて」開いた牧場だ。夫人が一旦ヨーロッパに帰り、オランダなどでチーズ作りを修業してきたという。1日2回手作業で搾乳を行い、絞ったミルクはそのまま特別な管を通り、保存室へ運ばれて熟された後、製造室へ移されチーズが作られる。

カフェで提供されるモッツァレラチーズとトマト、自家栽培のバジルを使った「カプリース・サラダ」。まろやかなチーズが新鮮なバジルと合わさって美味

ハワイの気候は温暖なため、夫妻はソフトチーズとクリームチーズの製造に専念。トーマスさんが実験しながら考案するチーズのフレイバーは、ベーシックな「フェタ」や、「BBQ」「フレンチドリーム」「マンゴースプリーム」など30種があり、ハワイでは類を見ない本格的な味が好評で、マウイの高級レストランからの引き合いも多い。

2010年にオープンしたカフェでは、そんな手作りのチーズが味わえる軽食メニューを提供。屋根があるだけで風が吹き抜ける空間に、テーブルが11卓。メニューはチーズ6種とクラッカーのセット「フレッシュ・フライト」(12ドル=約1,400円)、5種のチーズとパンのセット「チーズ・プラッター」(18ドル=2,110円)、そしてモッツァレラチーズとトマト、自家栽培のバジルを使った「カプリース・サラダ」(12ドル=約1,400円)などをそろえ、牧歌的な景色の中で食すことができる。そのほか、チーズ以外にも、マウイ産コーヒーや手作りアイスティー、牧場で栽培したレモンで作るレモネードなどのドリンクや、チョコトリュフ、チーズケーキなどのデザートも用意する。

できたてのゴートチーズ(ヤギのチーズ)は、舌の上でとろけるように柔らかい。ゴートチーズは日本では一般的でないが、クセや臭みが少なく食べやすい。ヨーロッパ人が作る本格派チーズはまさにグルメと呼ぶのにふさわしい品質で、一般的なスーパーで売られているチーズしか食べたことのない人には新鮮な驚きがあるはずだ。

牧場で飼育したヤギの乳から作った製品をその場で食す。ハワイの天候と景色を楽しみながら、本格チーズを堪能する。そんな究極のぜいたくが経験できる場所として、訪れる人が絶えないのだろう。

牧場での搾乳は朝夕2回。手際よく搾乳を行い、乳は管を通って保存室へ運ばれた後、チーズの製造室へ移される
マウイの青空の下、牧場ののんびりした雰囲気が楽しめるカフェ。ケータリング付きでウェディングなど特別イベントも行える
ゴートチーズをチョコで包んだ「チョコトリュフ」は意外なおいしさ。フレイバーはなんと40種あり、土産としても喜ばれそうだ
SHOP DATA
サーフィン・ゴート・デイリー(Surfing Goat Dairy)
3651 Omaopio Road
Kula, Maui, Hawaii
http://www.surfinggoatdairy.com/

※通貨レート 1ドル=約117円

※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。