米国発 L.A.で人気のコールドプレスジュース 前編

果物や野菜の栄養素を失わずに、低温で低速圧搾で作る「コールドプレスジュース」。健康志向者の多いアメリカ・ロサンゼルスで人気となっている。前編ではその最新事情をリポートする。

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Vol.99

フレッシュジュースは通常、高速回転するミキサーを用いて作るが、この方法だと摩擦熱が発生し、熱に弱いビタミンや酵素などの栄養素が失われがちと言われている。それを防ぐために開発されたのが、刻んだ果物や野菜を低温で低速圧搾する「コールドプレス製法」だ。この製法なら摩擦熱の発生が抑えられ、栄養がほとんど損なわれないという。また酸素に触れにくいため、酸化も抑えられる。この高栄養価なドリンクが健康志向者の多いアメリカ・ロサンゼルスで評判になり、様々なコールドプレスジュースが登場し、話題を呼んでいる。前編ではそんなコールドプレスジュースの最新事情をリポートする。

地元の農家から野菜や果物などを仕入れ、素材にこだわったコールドプレスジュースを提供する店が人気。色合いも様々で、選ぶのも楽しい
(photo by clover)
人気のコールドプレスジュース10種を少量ずつセットにした商品もラインナップ。珍しい素材を使用しているものもあるため、まずは試して好みの味が見つけられると好評だ
コールドプレスジュースだけでなく、店内で食事を提供する店も登場。健康志向のメニューが受けている

製法だけでなく、素材にもこだわりを!

映画の都ハリウッドに2013年1月にオープンした「クローバー」(Clover)は、映画関係者やミュージシャンなどが多く訪れる人気の店だ。アメリカで広く読まれている日刊紙「USAトゥデイ」の「アメリカのコールドプレスジュースバー・ベスト10」に選ばれるなど、数々のメディアで紹介されている。客層は子供から年配の人まで幅広いが、主に20~50代のクリエイティブな職種の人々が多く集まる。

一番人気の「ザ・クローバー」(手前)と「グリーンリーフ・パレオ・チキンボール」。ジューシーなチキンのうまみと緑黄色野菜の味わいが楽しめる、人気の組み合わせ

同店のコンセプトは、「地元で生産された、主にオーガニックの農作物を使うこと。生産者と直接つながって農作物の生産方法を把握し、もっとも品質の高いコールドプレスジュースを届けること」と、経営者のカサンドラ・ウォーカー氏は語る。コールドプレスという製法で満足するのではなく、素材にまでこだわるのが人気の理由だ。

全18種類(1瓶480ml)のなかで一番人気は「ザ・クローバー」(8.50ドル=約1,020円)。ケール、キュウリ、セロリ、ホウレンソウ、梨、パクチー、ミント、ライムをコールドプレスでジュースにしたもの。鮮やかな緑色のジュースで、梨などの甘みとミントやライムのさわやかな香りをプラスすることで、野菜っぽさを和らげて飲みやすくしている。「地元の農家で採れた農作物を使って、その高い栄養価とおいしさをまるごとギュッと絞り出したジュースです」とウォーカー氏は胸を張る。

次に人気なのが「ゴー・ビッグ」(8.50ドル=約1,020円)。ビーツの濃いピンク色が特徴のジュースで、ケール、イネ科の一種カモジグサ、ニンジン、リンゴ、レモン、ショウガをコールドプレスでジュースにしている。ショウガのスパイシーさと、ビーツやリンゴ、ニンジンの甘みが絶妙なハーモニーを奏でる。

また、季節に合わせた料理も約10種類用意し、テイクアウトで提供する。取材した9月には「グリーンリーフ・パレオ・チキンボール」(7.50ドル=約900円)がジュースと一緒によくオーダーされていた。こちらはアーモンドで作ったソースを衣のようにチキンの胸肉にまぶしてグリルし、オレンジバーベキューソースをかけたもの。オレンジの甘みがチキンによくマッチし、人気の一品だ。

コールドプレスジュースのよさを最大限に活かすため、素材にこだわる。そんな姿勢が成功へ導いたといえるだろう。

店内では、無料で試飲もできる。ビーツを使った「ゴー・ビッグ」も試飲のリクエストが多いコールドプレスジュースの1つ
コールドプレスジュースを凍らせた「クローバーポップ」(各3ドル=約360円)も販売。左からスイカ風味の「クエンチ」、パセリが香る「ゴールデングリーン」、生姜入り「ジンジャースナップ」
(Photo by Clover)
SHOP DATA
クローバー(Clover)
342 South, La Brea Avenue, Los Angeles, CA 90036
https://www.cloverjuice.com/

常識を逸脱した今までにない素材で、他店と差別化

珍しい食材を使用して多くの人を魅了するコールドプレスジュースバーが、「ジュース・サーブド・ヒヤ」(Juice Served Here)だ。本店ともいうべきシルバーレイク店がオープンしたのは2013年9月。アーティストが多く居住する街での出店で注目を浴び、ロサンゼルス・ウィークリー誌など、数々のメディアで紹介されている人気店だ。店内は20~40代のファッション、音楽関係者たちで賑わう。

左からハラペーニョ入りの「ブロック・ロッキン・ビーツ」(10ドル=約1,200円)、チョコレート味の「スーパーチョコ」(12ドル=約1,440円)、レモネード味の「チャコール・レモネード」(8ドル=約960円)

「常識をくつがえすことがコンセプト」と語るのは、共同経営者のグレッグ・アルターマン氏。これまでにコールドプレスジュースに使われたことのないユニークな食材とレシピで、20種類のフレーバーを1瓶443.6ml(15液量オンス)で提供する。

「スーパーチョコ」(12ドル=約1,439円)には、カカオパウダーのほか、まったりとした甘さが特徴のアカテツ科の植物の木の実ルクマや、アブラナ科の多年生植物マカ、栄養価が高いと言われていることからスーパーフードとして人気の植物チアやクコの実を使う。真っ黒な見た目が印象的な「チャコール・レモネード」(8ドル=約960円)には、鉱物(ケイ酸塩鉱物)の一種モンモリロン石のパウダー化したものや活性炭を使うなど、食材という言葉の範疇から飛び出したものまで使用している。

さらに珍しいのが、ピンク色の「20ドルジュース」(20ドル=約2,400円)。こちらはビーポレン(蜂花粉=蜜蜂が集めてくる花粉)など、自然食品をふんだんに使ったもの。「濃厚なココナッツクリーム、ビーポレン、ハチミツの甘みで、満腹感が味わえるジュースです」と、マーケティング副部長のモリー・クーリガン氏。

そのほか、ビーガン(卵やバターなどを含むすべての動物性食品を食べない菜食主義)フードも9種類提供。一番人気は「ビーガン・ペスト・カラードグリーン・ラップ」(10ドル=約1,200円)だ。ケールやヒマワリの種などを、キャベツによく似た大きな葉野菜カラードグリーンで巻いたものに、ヒマワリの種の粉末にオリーブオイル、塩、コショウ、デーツ(ナツメヤシの果実)、レモン汁などを加えて作ったさわやかなソースにつけながら食べる。

コールドプレスジュースがすでに流行となっているロサンゼルス。その製法だけでなく、「何を素材として用いるか」に、他店との差別化のポイントはシフトしてきている。同店はこのユニークなコールドプレスジュースで、今後2年間で30店舗以上を展開する予定だ。

店内でも食事ができるよう、ビーガンフードを販売。一番人気の「ビーガン・ペスト・カラードグリーン・ラップ」は、ヒマワリの種の粉末をベースにしたレモンソース(左)を付けて食べる
現在の売上トップ10(本数ベース)の10種類。これら10種をミニカップ(各60ml)で試飲できる「ザ・フライト」(8ドル=約960円)も提供
SHOP DATA
ジュース・サーブド・ヒヤ(Juice Served Here)シルバーレイク店
3827 Sunset Blvd, Los Angeles, CA 90026
http://juiceservedhere.com

取材・文/大山真理

通貨レート 1ドル=約120円

※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。