米国・LA発 SNSに載せたいアイス 後編

ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に客が写真をアップすることが、店の認知拡大の近道。後編は“思わず写真を撮りたくなる”カラフルでかわいいアイスを提供する店を紹介する

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Vol.126

「写真をアップしてもらい、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で話題になること」。それがアメリカの飲食店における集客のためのキーワードの1つとなっている。特に比較的低価格なアイスクリーム店などは、SNSを積極的に活用する10~30代の女性にとって入りやすいこともあり、SNSの宣伝効果が高い。写真を見た人が来店し、自らも写真をアップ。それを見た人がまた来店するという、いわゆる「客が客を呼ぶ」状況が自然にできあがるからだ。

そのために大切なのは「客が商品の写真を撮りたくなること」。後編では、いかにも若い女性が好みそうな「カラフルでかわいい」アイスバーやアイスクリームを提供する話題店を紹介する。

メキシコ生まれの「パレタ」と呼ばれるアイスバーは、主にフルーツが原料なのでカラフル。ここにナッツなどのトッピングやチョコレートのコーティングを加えてさらにかわいく仕上げる
カラフルでかわいいアイスクリームを提供する店でよく見かける光景。買ったアイスクリームをまずはその場で写真に撮り、SNSに投稿する
店舗の内装も写真映えするようにカラフル。テーブルの上だけでなく、壁をバックにした写真など、撮影を楽しめるようにすることもポイントの1つ

その名の通りポップでカラフルなおしゃれアイスバー

ロサンゼルス国際空港から車で20分ほど南に行ったサウスベイエリアの都市・トーランス。治安がよくて暮らしやすいといわれるこの街のショッピングモールに、2014年6月、「ポップバー(Popbar)」2号店がオープンした。さらに南のオレンジカウンティに位置する1号店のオープンからちょうど2年後のことだ。

「ヨーグルトポップ」のストロベリーに、ミルクチョコレートを斜め半分にコーティングし、キャラメル味のポップコーンを砕いたものをトッピング。さらに、ホワイトチョコレートの縞模様も追加

この店のユニークなところは、もともとカラフルなアイスバーに、さらにトッピングやコーティングを施し、客が「私だけの一品」を仕上げられる点だ。

来店したらまず、ガラス張りのショーケースに並ぶ「パレタ」と呼ばれるメキシコのアイスを選ぶ。 「パレタ」とは、フルーツをそのまま使った見た目がカラフルなアイスで、大きく分けるとジャンルは3つ。1つは「ポップシャーベット」と呼ばれるシャーベット系で、アプリコット、グレープフルーツ、キウイフルーツなど15種類(1本3ドル49セント=約370円)。ほか、「ポップジェラート」というジェラート系がバナナ、コーヒー、抹茶など12種類で、「ヨーグルトポップ」というヨーグルトが混ざったジェラート系がクラシックヨーグルトとストロベリーの2種類。それぞれ1本3ドル99セント(=約423円)だ。

アイスを選んだ後は、追加料金50セント(約53円)でアーモンド、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、ココナッツ、粒々チョコレート、キャラメル味のポップコーン、砕いたワッフルコーンの7種類から好きなだけトッピングを選択。さらに各50セント(約53円)追加でダークチョコ、ミルクチョコ、ホワイトチョコ、ミントダークチョコ、キャラメルダークチョコの5種類から、コーティングも好きなだけチョイスできる。コーティングの方法も、全面コート、斜め半分コート、細い縞模様の3種類。つまりパレタ本体29種類、トッピング7種類、コーティング5種類、かけ方3種類で、組み合わせは多種多様。自分が撮った写真が誰かとかぶることは、そうそうない。

見た目をかわいくしたいときにはカラフルなシャーベット系の「パレタ」を選んで、その色を活かすためにコーティングは控えめに。シックに決めたいときはチョコやバニラなどのジェラート系がおすすめ。その日の気分に合わせて着替えるような「ファッション感覚」で楽しめるのが、女性たちから高い人気を誇っている要因だ。

客層はファミリーやカップルなどが中心で、子どもから大人まで楽しめるのが売り。SNS自体も文章中心のものから写真中心のものへと人気が移行する中、かわいくカラフルなアイスバーはますます話題を呼びそうだ。

左は「ポップシャーベット」のパッションフルーツ。右はポップジェラートの抹茶にダークチョコレートを斜め半分コーティング。ヘーゼルナッツをトッピングし、さらにホワイトチョコレートで縞模様を追加
「全面コート」と「斜め半分コート」の場合、チョコレートクリームにアイスバーを浸すが、「縞模様」の場合、スプーンで描く。上手な店員には常連客から指名が入ることも
ポップバー(Popbar)
21540 Hawthorne Boulevard Suite 401C Torrance, CA 90503
http://www.pop-bar.com/

アイスも内装もカラフル。SNSパーティで一気に拡散!

ロサンゼルスのダウンタウンから車で10分ほど西に行った場所にあるコリアンタウンの繁華街に、2015年の5月オープンの「メリズイタリアンアイス(Meli’s Italian Ice)」がある。

バニラカスタードの上に、パッションフルーツ、パイナップル、レモネードの3種類のイタリアンアイスをのせたSサイズ。さっぱりとしたアイスと濃厚なカスタードの相性が抜群

この店の特徴は、鮮やかなシャーベット状のイタリアンアイス。ビビットなカラーが印象的で、子供はもちろん大人までワクワクさせられる。

サイズはスモール(3ドル=約318円)、ミディアム(4ドル=約424円)、ラージ(5ドル=約530円)の3種類でカップのみ。バニラやチョコレートなど定番フレーバーから、バブルガムやコットンキャンディー(綿あめ)など、アメリカのお菓子系フレーバーまで合計20種類のフレーバーの中から4種類まで選ぶことができ、カスタードクリームと組み合わせることも可能。トッピングやソースはなく、アイスそのものの色を組み合わせて全体的にカラフルに仕上げる。

店舗の内装もアイスに合わせて、赤、青、黄の円をあしらった壁紙を用いたポップな雰囲気。テーブルの上だけでなく、鮮やかな壁を背景にして撮影してもらえるように工夫している。

さらにユニークな試みとして、オープン時にファンの多い人気ブロガーやSNSユーザーを無料で招待して1日限りのパーティをしたことが挙げられる。これにより店の情報はすぐに広がり、認知度が一気に上昇した。近年では、このようにブロガーやSNSユーザーを招いたオープニングパーティを開くことも1つのトレンドになっている。招待された側も一種のセレブ気分が味わえるとともに、最新店舗にいち早く来店できるメリットもあり、“WIN WIN”の関係となっている。

このように、フォトジェニックな商品を売りにした店はアイスクリームに限らず今後も増加しそう。SNSユーザーをターゲットにした斬新なメニューの誕生に、これからも目が離せない。

バニラカスタードに、ストロベリーとピーチとバブルガムの3種類のイタリアンアイスを組み合わせたMサイズ。アイススクープで少しずつ取り、色を重ねてカラフルに仕上げる
フレンチカスタードだけやイタリアンアイスだけのオーダーも可能。その日の気分でカラフルに仕上げたり、シンプルに楽しんだりできる
メリズイタリアンアイス(Meli’s Italian Ice)
4059 West 3rd Street Los Angeles, CA 90020
https://www.facebook.com/MelisItalianIceLA/

取材・文/押見由香(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1ドル=約106円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。