シアトル発「ビスケット」がトレンドに前編 - 海外トレンドリポート -

2017/03/09

海外トレンドリポートvol.133 アメリカ

シアトル発
古くて新しい!「ビスケット」がトレンドに 前編

 日本で「ビスケット」といえばクッキーのようなお菓子をイメージするが、アメリカでは、スコーンのようなものを指す。もともとアメリカ南部の家庭で朝食として食べられていた「古きよきおふくろの味」だったが、2008年ごろにニューヨークやロサンゼルス、シアトルなどの大都市を中心に南部料理ブームが起きて、それまでビスケットを食べる文化があまりなかった北部の都市にも広まった。今回は、すっかりビスケットが定着したシアトルで、定番の食べ方から新たに生まれたアレンジメニューまでを紹介する。

 前編では、アメリカではオーソドックスだが、日本であまり知られていないビスケットの王道の食べ方をリポートする。

ビスケットの主な材料は、小麦粉、ベーキングパウダー、ラード、塩、バターミルク。バターミルクとは、牛乳を発酵させた低脂肪の液体で、牛乳より軽い口当たりが特徴
ビスケットの主な材料は、小麦粉、ベーキングパウダー、ラード、塩、バターミルク。バターミルクとは、牛乳を発酵させた低脂肪の液体で、牛乳より軽い口当たりが特徴
ビスケットが見えなくなるくらいたっぷりとソーセージ・グレイビー(肉汁から作ったひき肉入りのソース)をかけるのが定番の食べ方
ビスケットが見えなくなるくらいたっぷりとソーセージ・グレイビー(肉汁から作ったひき肉入りのソース)をかけるのが定番の食べ方
ケチャップや激辛ソースの数々。ピリ辛のグレイビーにこれらを加え、自分好みの味に仕上げる人が多い
ケチャップや激辛ソースの数々。ピリ辛のグレイビーにこれらを加え、自分好みの味に仕上げる人が多い

「アメリカンブレックファースト」の新たなスタンダードに

 アメリカ北西部最大の都市シアトルのなかでも、1、2を争う繁華街であるロウワー・クイーン・アン地区。この中心部にある「トゥールーズ・プティ(Toulouse Petit)」は、2009年11月にオープンした南部料理専門店で、「シアトルのベスト朝食」「シアトルのベストレストラン」などに選ばれている。アメリカの南部料理は、「ジャンバラヤ」「フライドチキン」に代表されるように、香辛料の効いたメニューが多い。一方で、“南部の朝食”といえば、やはりビスケットだ。

 約40種類の朝食メニューのなかで、とりわけ南部らしさを感じさせるのが「バターミルク・ビスケット&ソーセージ・グレイビー」(13ドル=約1,456円)。直径7センチほどのビスケットが2つ並び、風味豊かなソーセージ・グレイビーがたっぷりかけられている。グレイビーとは、肉汁にワインや小麦粉などを加えて作ったソースのことで、これとビスケットの組み合わせが南部の朝食の定番。ビスケットのカリカリサクサク感と、グレイビーのトロ~リ感が絶妙にマッチし、やがてビスケットがグレイビーを吸い、フニャフニャと柔らかくなる。2つの食感が楽しめるおもしろい一皿だ。

 また、「目玉焼きなどの卵料理+ハムなどの肉料理+サイコロ状のベイクドポテト+パン」という組み合わせの「クラシック・エッグ・ブレックファースト」(13ドル=約1,456円)も人気。パン(トースト)はビスケットに変更することができ、せっかく南部料理専門店に来たのだからと、ビスケットを選ぶ人が多いという。ビスケットはトーストよりも小麦の風味が濃厚に感じられ、歯ごたえも楽しめると好評。卵料理は目玉焼き、スクランブル・エッグ、ゆで卵から、肉料理はハム、ベーコン、自家製ソーセージから、それぞれひとつずつチョイス。ビスケットには軽く切れ目が入っており、その間にバターやイチゴジャムを塗ったり、卵料理や肉料理をはさんで食べるのがポピュラーだ。

 ビスケットの食感はサクサクと軽やかだが、脂っぽさも感じられるため、ビスケットだけでも十分満足感を得られる。同店は、観光地にも近いため地元住民はもちろん、観光客の来店も多く、出張中のビジネスパーソンの姿もよく見られる。かつてはトーストが主流だったアメリカ北部の朝食シーンに、ビスケットがしっかりと定着していることがわかる。

「バターミルク・ビスケット&ソーセージ・グレイビー」。ビスケットの間に、半熟の目玉焼きがサンドされている。とろける黄身をグレイビーと混ぜ、ビスケットですくって食べる
「バターミルク・ビスケット&ソーセージ・グレイビー」。ビスケットの間に、半熟の目玉焼きがサンドされている。とろける黄身をグレイビーと混ぜ、ビスケットですくって食べる
「クラシック・エッグ・ブレックファースト」(写真は、スクランブル・エッグと自家製ソーセージの組み合わせ)。ソーセージは塩気とスパイスの風味が強く、シンプルな味わいのビスケットによく合う
「クラシック・エッグ・ブレックファースト」(写真は、スクランブル・エッグと自家製ソーセージの組み合わせ)。ソーセージは塩気とスパイスの風味が強く、シンプルな味わいのビスケットによく合う
平日の営業時間は、朝9時から深夜2時。アメリカ人にとって、ビスケットは“朝に食べるもの”なので、ビスケット提供はモーニング(~11:00)のみ
平日の営業時間は、朝9時から深夜2時。アメリカ人にとって、ビスケットは“朝に食べるもの”なので、ビスケット提供はモーニング(~11:00)のみ
トゥールーズ・プティ(Toulouse Petit)
SHOP DATA
トゥールーズ・プティ(Toulouse Petit)
601 Queen Anne Avenue, North Seattle, WA 98109
http://toulousepetit.com/

食べごたえのあるビスケット・サンドイッチ

 ダウンタウンからバスで20分ほどの場所にある、シアトル郊外のセントラル・ディストリクト地区。民家が立ち並ぶ静かな通りを進むと、不意に香ばしい油の匂いが漂ってくる。その匂いに先にあるのが、2015年9月にオープンした南部料理店「ファッツ・チキン・アンド・ワッフルズ(Fat's Chicken and Waffles)」だ。

 人気のメニューは、直方体のビスケットに、揚げたてのあつあつフライドチキンなどをはさみ、具材が見えなくなるほどたっぷりのソーセージ・グレイビーをかけた「ビスケット・サンドイッチ」(10ドル=約1,120円)だ。スパイシーな衣で包まれたジューシーな鶏モモ肉、風味豊かなベーコン、とろとろの目玉焼き、濃厚なグレイビーソースなどの具材を、存在感のあるビスケットがしっかりと受け止めている。一般的なハンバーガーに使われるバンズよりも食べごたえのあるビスケットではさむことで、男性でも食べ切るのに苦労するほどのボリュームだ。

 ほか、定番の「ビスケット&グレイビー」(10ドル=約1,120円)も好評。ソーセージ・グレイビーは、サラサラでほとんど液体のようなものから、どろりと粘度が高いタイプまで店によって様々だが、同店のものは、焦げ茶色で粘度の高い濃厚な味わい。量も多く、ひき肉もごろごろ入っていて、もはやソースというよりシチューのようだ。黒コショウ、パプリカパウダー、チリパウダー、クミンなどのスパイスがピリリときいており、食べごたえのあるビスケットとの相性もよい。

 健康志向の高いシアトルでは、「グルテンフリー」「低脂肪」「乳製品不使用」を掲げる飲食店が多い。対して南部料理店では、グルテンも脂肪も乳製品もたっぷり使う。ヘルシーな食事ばかりが続いたときに、問答無用の満腹感を求めて来店する人も多い。また、店のファンには、ミュージシャンやスポーツ選手もおり、大事なコンサートや大会の前に来店するケースも少なくないという。ボリューム感のあるビスケット料理は、エネルギーを充てんするのにぴったりの食事なのかもしれない。

取材・文/トゥルーテル美紗子(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1ドル=約112円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。
揚げたてのフライドチキン、カリカリのベーコン、とろける目玉焼きに濃厚なグレイビーがからまる「ビスケット・サンドイッチ」
揚げたてのフライドチキン、カリカリのベーコン、とろける目玉焼きに濃厚なグレイビーがからまる「ビスケット・サンドイッチ」
定番の「ビスケット&グレイビー」。ビスケットは一般的に丸い形をしているが、同店のビスケットは四角形
定番の「ビスケット&グレイビー」。ビスケットは一般的に丸い形をしているが、同店のビスケットは四角形
オーナーのマルカス・ララリオ氏。アメリカ南部出身の友人が作った料理に衝撃を受け、南部料理専門店をオープンさせた
オーナーのマルカス・ララリオ氏。アメリカ南部出身の友人が作った料理に衝撃を受け、南部料理専門店をオープンさせた
ファッツ・チキン・アンド・ワッフルズ(Fat’s Chicken and Waffles)
SHOP DATA
ファッツ・チキン・アンド・ワッフルズ(Fat’s Chicken and Waffles)
2726 E Cherry St. Seattle, WA 98122
http://fatschickenandwaffles.com/

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