イギリス発 進化したミルクシェイク 後編

イギリスで最近、様々なアレンジを加えた進化系ミルクシェイクが話題となっている。後編では、ハードリカーを加えたアルコール入りシェイク「ハードシェイク」に注目。その人気の秘密に迫る。

URLコピー

Vol.148

最近、イギリスでは、様々なアレンジを加えた進化系ミルクシェイクがトレンドになっている。前編では、クッキーやグミ、チョコバーなどのお菓子をトッピングしたものや、ケーキやアイスクリームをデコレーションした「フリークシェイク」(奇抜なシェイク)を紹介した。

こうした流れのなかで新たに生まれたのが、アルコール入りの「ハードシェイク」だ。ハードリカー(カクテルなどに使うアルコール度数の強い酒)を加えたシェイクという意味で、主にハンバーガーショップなどで提供されて話題となっている。後編では、このハードシェイクの人気の秘密に迫る。

「ハードシェイク」は、牛乳が入っているので「カルーア・ミルク」に近いともいえるが、シェイク独特の濃厚な口あたりはほかのお酒にはないもの。また、シェイクの味も(左から)チョコレート、オレオ、バナナなどバリエーションが豊か
アイスクリームのほか、生クリームやチョコレート、シリアルなどをトッピング。組み合わせの多彩さや鮮やかなビジュアルなども、「ハードシェイク」が人気となっている理由の一つだ
チョコレートアイスとココナッツのミルクシェイクに、ココナッツリキュールを加えたハードシェイク。まだ、登場したばかりのドリンクだが、今後、様々な組み合わせが生まれていきそうだ

アルコール入り「ハードシェイク」は、ハンバーガーとセットで!

ロンドン東部のオルドゲート・イースト駅から歩いてすぐの場所に、「チャック・バーガーズ(Chuck Burgers)」のスピタルフィールズ店がある。2012年9月、郊外の住宅街ハッチ・エンドに出店した1号店に続き、2016年7月にオープンしたハンバーガー専門店だ。

ストロベリーシェイクをベースに、ラム・クリームを加えた「センター・コート」(左)。ハンバーガーやフライドポテトに合うように、甘さ控えめですっきりとした味に仕上げている

店で用意しているハードシェイクは全6種類(各7ポンド=約980円、300ml)で、ノンアルコールの「シェイク」(4ポンド=約560円)やソフトドリンク(2ポンド=約280円)と比べると単価は高い。このなかで、2大人気メニューの一つが、オレオクッキー入りのシェイクに、デザートリキュールのラム・クリームを加えたその名も「オレオ・クッキー」。 滑らかなミルクシェイクのなかにサクサクとしたクッキーの食感が楽しめ、ほのかなラムの香りもアクセントとなっている。

もう一つの人気メニューが、チョコレートシェイクにゴールド・モルトウイスキー・クリーム・リキュールを加えた「スモアーズ」。カカオの風味がしっかり感じられ、例えるなら“さっぱりとしたウイスキーボンボン”といった味わいだ。

ハンバーガーショップなので、多くの来店客の目的は「ベーコン・チーズ・バーガー」(7.5ポンド=約1,050円)などのハンバーガーや「フライドポテト」(3ポンド=約420円)など。そのため、セットにするドリンクは「そのままでもおいしい」のはもちろん、「ハンバーガーやフライドポテトと合うこと」もポイントとなる。そこで、たどり着いたのが、ミルクベースだが重くなく、アルコール度数が低めのハードシェイク。用いるリキュールは17度前後のものばかりだが、ハードシェイク自体はおよそ1~2%くらいに抑えている。

客層は、20~40代の男女が中心。もともとほかのハンバーガーショップと同じようにビールやワイン、カクテルなども提供していたが、「ランチはビールやワインよりも軽めのアルコールを飲んで、ほろ酔い程度にしたい」「今まではノンアルコールを飲んでいたが、少しアルコールの入ったおしゃれなドリンクも楽しみたい」というニーズがあると考え、2014年にハードシェイクの販売を開始したところ、大評判に。食事をした後のデザートの代わりとしても好評だという。アルコールが苦手な人でも飲みやすく、味のバリエーションも豊富で、見た目もフォトジェニック。一方で、ノンアルコールドリンクと比べて単価や利益率を高く設定できるため、ハードシェイクは飲食店にとっても魅力的なメニューといえそうだ。

人気の「オレオ・クッキー」。牛乳が多めなので、アルコールはそれほど強く感じない。オレオのサクサクとした歯ごたえも楽しい
焦がしたマシュマロとウエハウスロールをトッピングした「スモアーズ」は、「見た目がかわいい」と女性から人気。もっとも写真が撮られるメニュー
チャック・バーガーズ スピタルフィールズ店(Chuck Burgers Spitalfields)
4 Commercial Street, London, E1 6LP
https://www.instagram.com/chuckburgerbar/

ハードシェイクがグループ客にも大好評!

ロンドン中心部にあるブルームスベリー・スクエア公園沿いのビジネス街に2006年2月にオープンした、「オール・スター・レーンズ(All Star Lanes)」のホルボーン店。レストランとボウリング場が併設された店舗で、ハンバーガーやステーキなどを食べながらボウリングも楽しめる。

一番人気の「オレオ・シェイク」。加えるリキュールはカカオフレーバーの「ベイリーズ」(17度)。シェイク(500ml)に入っているのはワンショット(30ml)なのでアルコール度数は約1%と弱め

「ハードシェイク」の提供を開始したのは、2014年初めから。味は、チョコレート、ストロベリー、バニラの3種類。そこに、ジンやラム、ウォッカなど数十種類のアルコールから来店客が好きなものを選んで加えるスタイルで、各7ポンド(約980円)。さらに、リキュールだけでなく、生クリームや菓子などをトッピングした5種類の「スペシャルハードシェイク」(各7.5ポンド=約1,050円)も用意している。

なかでも人気の「オレオ・シェイク」は、バニラシェイクにベイリーズ(カカオ、クリーム、ウイスキーをミックスしたリキュール)を加え、オレオクッキーと生クリームをふんだんにトッピング。さらに、企業秘密という「隠し味」を加えることで、かすかな塩味がアクセントとなり、甘みをさらに引き立てている。

同じく人気の「バイバイ・ミス・アメリカン・パイ」は、バニラシェイクにズブロッカ(ポーランドのウォッカ)を入れたものがベース。そこにバニラアイスと果肉入りのりんごジャム、ビスケットとキャラメルソースを加える。「飲むアップルパイ」とでも表現したくなるフルーティーな味わいだ。

ほか、「ストロベリー・バブルガム」にはボンベイ・サファイア(ジン)を、カラフルなシリアルをトッピングした「フルート・ループス」にはフランジェリコ(ヘーゼルナッツのリキュール)を、「チョコレート&ココナッツ」にはココ・カヌ(ココナッツのリキュール)をと、それぞれベースの味に一番合うアルコールを使っている。

「当店は、ボウリングを目的にグループで来店するお客様も多いので、シェイクは複数の人で回し飲みすることを想定して約500mlの大容量で提供しています」と、フロアスタッフのジャスティナス・サダスカス氏。週末の夜になると、ボウリングを楽しむ若者たちがハードシェイクを持って自撮りする姿が多く見られ、スイーツを好まない男性が、「アルコールが入っているなら」とオーダーすることもあるという。カクテルよりもカジュアル、見た目も鮮やかでシェアもしやすいことから、「パーティにぴったり」と若者から絶大な人気を獲得している。

アップルパイをイメージして開発された「バイバイ・ミス・アメリカン・パイ」には、りんごの果肉がふんだんに入ったジャムが使用されており、シャクシャクとした食感。りんごのほのかな酸味と甘い生クリームとの相性が抜群
フルーツ味のシリアルを混ぜ込んだシェイク「フルート・ループス」。朝食に食べるシリアルと同様に、牛乳と合わせているので相性は抜群
オール・スター・レーンズ ホルボーン店(All Star Lanes Holborn)
Victoria House, Bloomsbury Pl, Bloomsbury, London WC1B 4DA
https://www.allstarlanes.co.uk/

取材・文/塚田沙羅(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1ポンド=約140円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。