米国・LA発スパイス&ハーブ系コーヒー 後編

最近、ロサンゼルスで話題の「スパイス&ハーブ系コーヒー」。前編では、スパイスなどを使ったコーヒーを紹介した。後編では、フラワーシロップを用いたフラワーコーヒー専門店などが登場。

URLコピー

Vol.154

最近、アメリカ・ロサンゼルスでは、ハーブやスパイス、さらにはフラワーエキスを加えてハーブティーのように飲む「スパイス&ハーブ系コーヒー」が注目を集めている。前編では、シナモンなどの「スパイス」やココナッツウォーターなどの「果汁」、さらには「ナッツ」をうまく用いたコーヒーメニューを提供する店を紹介した。

後編では、ラベンダーやローズなどの「フラワーシロップ」や「フラワーパウダー」を用いた「フラワーコーヒー」の専門店と、ミント、ナツメグ、クローブなどを用いた「ハーブコーヒー」を提供する店を紹介する。

シナモンなどのスパイスを使用する新感覚のコーヒーに加え、ラベンダーやローズなどの花や、ミントなどのハーブを取り入れたメニューが注目を集めている
鮮やかな自家製のフラワーシロップや食用花、フラワーパウダーなどをコーヒーと組み合わせたメニューも。見た目に美しく、特に20代、30代の女性から人気だ
「スパイス&ハーブ系コーヒー」は生まれたばかりのトレンド。市販のフラワーシロップなどは種類が限られていることもあり、自家製にこだわる店が多い

フラワーシロップを加えて、花びらを添える「フラワーコーヒー」の専門店

ロサンゼルス・ハリウッドのすぐ東側、約6kmに位置するコリアタウンは、その名のとおり、至るところに韓国語の看板が並ぶ繁華街。深夜まで営業するレストランやカフェ、スイーツ専門店などが軒を連ね、昼夜を問わず活気にあふれている。このコリアタウンのなかでも、交通量の多い通り沿いに、2017年2月にオープンしたのが「ビアコーヒー(Bia Coffee)」。元フローリストだったオーナー兼バリスタのシルビア・リー氏が手がける、100%天然の自家製フラワーシロップを用い、トッピングに花びらを添えた「フラワーコーヒー」の専門店だ。高級レストランなどで料理に花が飾られたり、食用花が使用されたりすることから、このコンセプトを飲み物に取り入れようと考え、出店に至ったという。

看板メニューの「ビア ローズラテ」。シロップでピンクに染まったミルクの層とコーヒーの層のコントラストがわかりやすいように、店内で飲む人にはグラスで提供している

来店客の多くが注文する「ビア ローズラテ」(5.40ドル=約610円)は、ラベンダーとローズのフラワーシロップをミルクに混ぜ、上からエスプレッソを注ぎ、有機食用花を乾かして挽いたフラワーパウダーと有機食用バラを飾った一品。コーヒーの香りが前面に出ており、バラの香りはしないが、一口飲むと、バラ特有の風味と酸味が口いっぱいに広がり、すっきりとした味わい。グラス下部のピンクと上部の茶色のコントラストも鮮やかだ。

また、2017年9月に新しくメニューの仲間入りをした「ビア バタフライピー ジャスミンラテ」(5.45ドル=約616円)は、ジャスミンの甘みを強く感じる一杯。「バタフライピー」とは、濃いブルーが特徴のマメ科の植物で、ミルクと混ぜることで青空のような鮮やかな水色に変化し、見た目にも美しい。

どのドリンクにも着色料などは一切使用しておらず、ピンクや紫などの鮮やかなシロップの色は、素材そのものの自然の色だ。

客層は20~30代の女性が中心。フラワーコーヒーの美しい色合いのコントラストと、花が飾られたかわいらしい見た目が好評だ。アメリカでも飲食トレンドのキーワードとなっている「SNS映え」を意識し、今後も、「ビア バタフライピー ジャスミンラテ」に続くカラフルで写真映えするメニューを開発していく予定だ。

「ビア バタフライピー ジャスミンラテ」は、ミルクの層がわずかに水色になっているのが特徴
ラベンダー入りのコールドブリューコーヒーに自家製生クリームをトッピングした「ビア ラベンダーハーブクレマコールドブリュー」(5.70ドル=約644円)。「ビア バタフライピー ジャスミンラテ」や「ビア ローズラテ」とは、ミルクとコーヒーの層が逆になっている
ビアコーヒー(Bia Coffee)
3907 W 6th Street, Los Angeles, CA 90020
https://www.instagram.com/bia_coffee_la/?hl=en

「モヒート」とコーヒーが融合した「ハーブコーヒー」

ロサンゼルスのダウンタウンの北、約15kmのところにあるグレンデールは、住宅地と大規模な屋外モールやショッピングセンターが集結するエリア。その大通り沿いに、サンフランシスコ創業の人気コーヒー専門チェーン「フィルズコーヒー(Philz Coffee)」のグレンデール店が2016年9月にオープンした。

ミントの鮮やかな緑が印象的な「ミントモヒート」。SNSや口コミで認知が広まり、初来店の人の大半がこれを注文する

人気メニューは、ハーブを入れた全4種類のアイスコーヒー。いわばハーブティーならぬハーブコーヒーだ。一番人気は「ミントモヒート」(4.50ドル=約509円)。新鮮なミントの葉と黒砂糖をカップの底で混ぜ合わせ、創業者のフィル・ジャバ―氏が7年かけて作り上げた「テソラ」というミディアムローストのブレンドコーヒーと乳脂肪分の多いヘビークリームを上から注ぎ、ミントの小枝をトッピングする。まろやかでスッキリとした軽い飲み口で、ミントの味や香りは強すぎず、ちょうどよいアクセントになっている。コーヒーというよりミルクティーに近く、コーヒー愛好家からは「唯一無二の新感覚コーヒー」と好評で、普段コーヒーを飲まない人からも「コーヒーは好きではないけれど、紅茶のようで飲みやすい!」と、幅広い層に受け入れられている。

また、秋から冬にかけて人気を集めるのが、新鮮なナツメグ、クローブ、シナモンパウダーとヘビークリームをミックスし、「テソラ」を注いだ「ジンジャースナップ」(4.50ドル=約509円)。一口飲むと、ジンジャークッキーを連想させるようなスパイスの風味がふんわりと口の中に広がり、ほっと落ち着く一杯だ。

客層は、子ども連れや観光客も含め、10代後半~40代が中心。「フィルズコーヒー」は、2018年1月現在、西海岸を中心に全米で44店舗を展開しており、ハーブ入りコーヒーは今後ますます注目度が高まりそうだ。

創業者のフィル・ジャバ―氏が生んだオリジナルブレンド「テソラ(Tesora)」のアイスコーヒーにヘビークリームを加えた「エクスタティック」(3.50ドル=約396円)は、キャラメルとナッツ、バターの香りが楽しめる
ミントの葉を乗せるなど、ワンポイントのアクセントでSNS映えする商品に変身。コーヒーに独特の風味を与えるだけでなく認知度アップにもひと役買っている。奥の2つは、「ジンジャースナップ」と「エスタティック」。
フィルズコーヒー(Philz Coffee)
7509 Sunset Boulevard, Los Angeles, CA 90046
https://www.philzcoffee.com/

取材・文/今井悠乃(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1ドル=約113円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。