ペルー・リマ発 今、世界が注目するペルー料理とは?

ペルー共和国といえば世界遺産のマチュピチュを思い浮かべる方は多いと思うが、もう1つ、偉大な文化遺産がある。ペルー料理=ペルービアンだ。今、世界各国からペルービアンに注目が集まりつつある。

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Vol.13

ペルー共和国といえば世界遺産のマチュピチュを思い浮かべる方は多いと思うが、もう1つ、偉大な文化遺産がある。ペルー料理=ペルービアンだ。ペルービアンは多種多様な人種が存在するペルーで、古来アンデスの料理にスペイン料理、日本料理、中国料理などが混ざって生まれた料理で、刺身なども使われるため実は日本人にもなじみやすいと言われている。

ペルービアンの仕掛け人であるガストン・アクリオ氏の洗練された料理

昨年9月には、ペルーのカリスマシェフ、ガストン・アクリオ氏が企画から参画する食の祭典「Mistura」に世界のトップシェフたちが出席するなど、現在、ペルービアンへの注目が集まりつつある。日本のレストランでも「セビチェ」(魚介類のマリネ)や「アンティクーチョス」(串焼き料理)といった、今はまだ聞き慣れないペルービアンメニューが登場する日もきっと近いはず。始まったばかりのペルービアンの食トレンドを2回にわたってリポートする。

ペルービアンの味の決め手はこの黄色いトウガラシ「アヒ・アマリージョ」
リマの街中の風景。これからは食を求めてペルーを訪れる人が増えるかも

国民的スターシェフが仕掛け人!?「エルブリ」のフェラン・アドリア氏も注目するペルービアン

今、ペルーは空前のグルメブームの中にある。
首都リマで毎年開催される、食の祭典「Mistura」(リマ国際フェスティバル)はペルー人の関心事の1つだし、有名シェフ、ガストン・アクリオ氏はロックスター並みの扱いだ。彼は、まさにペルービアンブームの火付け役的存在であり、スペインの世界的レストラン「エルブリ」(現在は閉店)のフェラン・アドリア氏をはじめ、世界のカリスマシェフたちが彼のもとを訪れるほどだ。ちょうど日本でスターシェフたちが対決するグルメ番組が華やかだった頃に似ている感じである。

ペルービアンの代表的料理「セビチェ」は刺身のマリネ。日本人にもとてもなじみやすい一皿だろう

ペルービアンとは、ペルーという国の移民の歴史がそのまま反映されたような料理だ。アヒ・アマリージョ(黄色いトウガラシ)などアンデス由来の香辛料をベースに、スペイン料理、日本料理、中国料理のエッセンスが加わっていて、我々日本人にはとても食べやすい。

なかでも代表的なメニューを挙げるとしたら、国民的料理「セビチェ」だろう。リマの街中に無数にあるセビチェリアと呼ばれる魚介専門店では、みんなこのセビチェを「まずはこれがなくっちゃ」という感じで食べている。

セビチェとは、2cm角くらいに切った白身魚の刺身をタマネギやトマトと合わせ、レモン汁やアヒ・アマリージョなどのスパイスでマリネしたもの。カルパッチョに似ているが、もっとスパイスが効いていて(そんなに辛くはない)深みのある味わいだ。この代表的ペルービアンを、ニューヨークの高級レストランなどでは既にメニューに加えており、次なる食のトレンドとして、世界的に注目が高まっていることがうかがえる。
世界の都市にゆっくりと浸透し始めるペルービアン。まずはその発信源となった地元の人気店をご紹介しよう。

料理家であり、実業家であり、ペルービアンの伝道師として活躍するガストン・アクリオ氏
一つひとつの料理の美しさ、盛り付けのこだわりもアクリオ氏の料理の魅力

スターシェフがリマに開いた店ここからペルービアンの世界が広がった

スペイン植民地時代の面影を残すリマの瀟洒な建物にさりげない看板が掛かった「アストリッド・イ・ガストン」は、ペルービアンの仕掛け人であるスターシェフ、ガストン・アクリオ氏が手掛けた最初の店だ。トレンドの発信源であるこの店なくして、ペルービアンは語れない。

もともと屋台料理の「アンティクーチョス」も、アクリオ氏の手にかかれば洗練を極める

アクリオ氏は、スペインの料理学校とパリの名門「ル・コルドン・ブルー」で学んだ、洗練されたヨーロッパ料理の手法を用いて伝統的ペルー料理をモダンに仕立てた。そうして生まれたペルービアンを、高級料理として自らテレビの料理ショーで紹介。さらに、料理本の執筆、料理学校を作るなど、徹底して広報・教育・啓蒙活動で広めてきた。その結果、世界から注目されるようになったのだ。
ただ、値段的にいえばこれらの料理はそんなに高級というわけではない。もちろんペルーの物価からすれば高級だが、飲み物を含めなければ1人3,000円もかからない。

座席数は30席ほど。照明を少し落とし、ジャズが流れていてとても落ち着く雰囲気だ。バー・スペースがあり、カクテルの名前が黒板にびっしりと並ぶ。ブドウ果汁を原料としたペルーの蒸留酒「ピスコ」をベースにしたカクテルが多いようだ。地場の酒は料理とも相性がよく、さらに食欲が掻き立てられた。ペルービアンをメニューに取り入れる際には、このピスコの存在も忘れてはならないだろう。

アクリオ氏の会社La Machaでは、現在12カ国に30のレストランを展開し、2011年度で5,500万ドルの利益を見込むという。さらにこれまでの南米、スペインなどのラテン文化圏から、北米へと店舗を展開している。ペルービアンの勢いや恐るべし、である。次回は北アメリカ、そして世界へと広がるペルービアンをお伝えする。

「アストリッド・イ・ガストン」のバーコーナー。黒板には無数のカクテルの名前が
ブドウから作られる蒸留酒ピスコはペルービアンに合う。これは「ピスコサワー」
ASTRID y GASTON
(アストリッド・イ・ガストン)
Calle Cantuarias 175, Miraflores, Lima, Peru
営業時間
12:30~15:30
19:45~23:45
日曜定休
http://www.astridygaston.com/

取材・文/栗原伸介
写真・取材協力/Laura Fryer/Michelle Lehmann
www.thousandflavors.com (アンティクーチョスの写真)
Communications(MLC)/ASTRID y GASTON

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