タイ発 伝統料理・ソムタムが変わる! 前編 - 海外トレンドリポート -

2018/07/12

海外トレンドリポートvol.165 タイ

タイ発
伝統料理・ソムタムが変わる! 前編

 タイでもっともポピュラーなサラダ「ソムタム」は、細切りにした青パパイヤやインゲンマメなどを臼に入れ、杵で叩き、香辛料や魚醤、ライムなどで味付けしたもの。もともと、ラオスやイサーン(タイの東北地方)の料理だったが、現在はタイ全土で食べられており、国民的料理のひとつになっている。

 そんなソムタムは、伝統的な料理ということもあり、おしゃれなイメージはあまりなかったが、最近、バンコクを中心にアレンジが加えられて話題となっている。前編では、若い層などに人気の“進化系”ソムタムを紹介する。

一般的なソムタムは、皮を剥き、細切りにした青パパイヤが必ず入る。ほかに、ニンジン、トマト、インゲン、ピーナッツ、小エビ、ニンニク、唐辛子など具材は様々
一般的なソムタムは、皮を剥き、細切りにした青パパイヤが必ず入る。ほかに、ニンジン、トマト、インゲン、ピーナッツ、小エビ、ニンニク、唐辛子など具材は様々
ソムタムの“ソム”は「酸っぱい」、“タム”は「(杵などで)つく」という意味。臼の中に具材を入れて、杵でついて具材を柔らかくしながら、混ぜ合わせる
ソムタムの“ソム”は「酸っぱい」、“タム”は「(杵などで)つく」という意味。臼の中に具材を入れて、杵でついて具材を柔らかくしながら、混ぜ合わせる
ソムタムは、屋台や庶民的な食堂では30~40バーツ(=約103~137円)ほどで提供される。カオニャオ(もち米)とともに食べるのが現地のスタイル
ソムタムは、屋台や庶民的な食堂では30~40バーツ(=約103~137円)ほどで提供される。カオニャオ(もち米)とともに食べるのが現地のスタイル

青パパイヤをカラッと揚げた“子供が喜ぶ”ソムタム

 バンコク西部にある「バーン・ソムタム(ソムタムの家)」は、30種近いソムタムがメニューに並ぶ、店名どおりのソムタム専門店。 “クーン・ヤイ(おばあちゃん)”と呼ばれている料理長のスパポーン・チュードーン氏とその家族が、自分たちが大好きなソムタムを売りに2004年5月、1号店をオープンした。以来、人気を呼んでバンコクとその近郊に現在7店を展開している。今回、紹介するのはバンコク屈指の高級住宅街スクンビットにあるもっとも新しい店舗だ。

 バリエーション豊富なソムタムメニューのなかでも異彩を放つのが、「ソムタム・ソース付きフライド・ソムタム」(80バーツ=約274円)だ。青パパイヤに衣をつけて揚げているのが特徴で、別添えのソース(ソムタムの味付けに使うタレを少し甘くし、とろみをつけたもの)をかけて食べる新しいスタイル。フライドポテトのような感覚で食べられ、ソースをかけると辛みや甘みが加わる。

 このメニューが誕生したのは、「子どもや10代の若者が喜ぶソムタムを作りたい」という想いから。経済発展に伴い、タイでは食文化が激変。西洋のファストフードを好む子どもも増えている。そんななか、昔ながらのタイ料理を彼らが食べやすいようにと知恵を絞り、“青パパイヤを揚げる”という発想にたどりついた。衣の割合や油の温度など、試行錯誤して完成。現在、ファミリーのほとんどがオーダーする大ヒット商品になった。

 スパポーン氏は、ソムタムのルーツであるラオスやイサーンにも足を運び、来店客を楽しませる新しいメニューを常に考えている。「ラオス伝統式ソムタム」(70バーツ=約240円)は、そんな地道な努力の末に生まれた一品。青パパイヤを千切りではなく、桂むきにして、きし麺のようにしているのがポイント。ラオスのある地方に行ったとき、この調理法を知ったことから生まれたメニューで、青パパイヤの新たな食感が楽しめると人気が高い。ラオスでは、カニを塩につけて発酵させて作った匂いの強い味噌を味付けに使っていたが、都会の人でも食べやすいようにとエビで作った味噌に代えるなど独自のアレンジも加えている。

 客層はファミリーが中心で、店周辺には外国人居住者も多いため、来店客の3割程を外国人が占めている。子供や若者を狙った料理や、伝統的な品を食べやすくアレンジした新メニュー開発が功を奏し、幅広い層の集客に成功している。

「ソムタム・ソース付きフライド・ソムタム」。ファストフード店の定番であるフライドポテトからヒントを得た。
「ソムタム・ソース付きフライド・ソムタム」。ファストフード店の定番であるフライドポテトからヒントを得た。
「ラオス伝統式ソムタム」は、青パパイヤを桂むきにして、パスタやきし麺のように提供。バンコクで食べられる店は少なく、差別化のポイントに
「ラオス伝統式ソムタム」は、青パパイヤを桂むきにして、パスタやきし麺のように提供。バンコクで食べられる店は少なく、差別化のポイントに
バンコク近郊のチョンブリ県などの漁師から仕入れるシーフードを使った「オイスター・ソムタム」(70バーツ=約239円)など、30種類のソムタムを提供
バンコク近郊のチョンブリ県などの漁師から仕入れるシーフードを使った「オイスター・ソムタム」(70バーツ=約239円)など、30種類のソムタムを提供
バーン・ソムタム(Baan Somtaum)
SHOP DATA
バーン・ソムタム(Baan Somtaum)
Soi Suk Chai, Khwaeng Phra Khanong, Khet Khlong Toei,Bangkok
http://www.baansomtum.com

SNS映えする冷やしソムタムが看板メニューに!

 バンコクの東部、庶民的エリアながらおしゃれなレストランやカフェが建ち並び、若者が多く集まるウドムスック地区にあるソムタム専門店「タム・イエン」。店名の“タム”はソムタムの略、“イエン”は冷えた(冷やした)という意味だ。

 看板メニューは、冷え冷えで提供する「アラスカソムタム」だ。ワタリガニやトウモロコシなど具材の異なる5種類を用意しており、特に人気が高いのがエビを使った「タム・アラスカ・クーン」(129バーツ=約441円)。エビ入りのソムタムの上に、タマリンドなどで作ったタレをシャーベット状にして乗せ、ドライアイスを入れた専用容器でさらに冷やして提供する。テーブルの上がドライアイスの煙で覆われ、写真を撮影する人も少なくない。仕上げにシャーベットを崩してソムタムと混ぜ合わせる。冷やされたことで青パパイヤのシャキシャキ感も増し、辛いソムタムと甘いタレとの相性も絶妙だ。

 オーナーのパッチャラ・パンタンクーン氏が、冷やしソムタムのアイデアを思いついたのはひょんなことから。屋台で買ったソムタムが腐らないように冷凍庫に入れたことを忘れ、翌日、凍った状態で食べてみたところ、「これはイケる」とひらめいた。しかし、タレと混ぜ合わせたソムタム自体を冷やすと青パパイヤのシャキシャキ感が損なわれてしまう。そこで、タレだけをシャーベット状にして、仕上げにソムタムと混ぜ合わせることに。さらに、ドライアイスを使って全体を冷やし、提供時の演出としてインパクトを出すことにも成功した。

 ほかにも、オリジナルのソムタムがあり、そのなかの一つが青パパイヤを苦手とする人のために考案した「青パパイヤ抜きのソムタム」(109バーツ=約372円)。ぷりっとしたエビとインゲンマメ、トマトなど酸味や辛さが一体になっており、青パパイヤが苦手でソムタムを敬遠していた人などから好評を得ている。また、辛い物が苦手な子ども向けに開発したのが、「揚げ卵とソムタム」(139バーツ=約476円)。揚げ卵はタイ料理の一つで、固ゆでした卵を油で揚げ炒めたもの。タマリンドのソースをかけており、これをソムタムとともに食べることで辛さが緩和される。

 流行に敏感な若者をターゲットにし、伝統的な料理・ソムタムに独自のアイデアを加えてアレンジした新ソムタムメニュー。SNSでの拡散も狙って、ビジュアルや演出などの工夫を施したのが成功の理由といえそうだ。

取材・文/梅本昌男(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1バーツ=約3.42円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。
エビ入りの冷たいソムタム「タム・アラスカ・クーン」。提供時は、容器の下からドライアイスの煙が広がり、客席からは驚きの声が。仕上げに、上にのせたシャーベット状のタレを混ぜ合わせる
エビ入りの冷たいソムタム「タム・アラスカ・クーン」。提供時は、容器の下からドライアイスの煙が広がり、客席からは驚きの声が。仕上げに、上にのせたシャーベット状のタレを混ぜ合わせる
「青パパイヤ抜きのソムタム」は、「青パパイヤがあまり好きではない」という来店客の声から生まれたメニュー
「青パパイヤ抜きのソムタム」は、「青パパイヤがあまり好きではない」という来店客の声から生まれたメニュー
子ども向けに開発した「揚げ卵とソムタム」。ファミリーでシェアできるようにボリュームは多めにしてある
子ども向けに開発した「揚げ卵とソムタム」。ファミリーでシェアできるようにボリュームは多めにしてある
タム・イエン(Tum Yen)
SHOP DATA
タム・イエン(Tum Yen)
3653-19 Udom Suk 1 Alley, Khwaeng Bang Na,Bangkkok
https://www.facebook.com/Tumyen/

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