プロの調理人、店長がいることが、個人店の強さ - 繁盛の黄金律 -

2017/12/28

神山 泉の繁盛の黄金律

Vol.76
今回の黄金律
プロの調理人、店長がいることが、個人店の強さ

チェーングループは、調理の外部化、店舗の小型化に突き進む

 お店から人が育たない時代になっています。その理由は2つあります。

 ひとつは、調理の外部化、簡略化です。昔は、下ごしらえもすべてお店でやっていたものですが、できあいの外から仕入れた食材を使うようになって、調理の基礎の基礎を学ぶ機会が失われてしまったのです。もうひとつは、店舗が小型化したことです。社員は店長ひとりで、残りはすべてパート・アルバイトというお店が増えています。昔のように、支配人がいて、副支配人がいて、料理長がいて、スーシェフがいて、正社員従業員が10人いて、というような大所帯のお店は本当に少なくなっています。都市のホテルや大型レストラン、あるいは地域いちばんの割烹店など、例外的に残っているだけです。

 チェーン店の多くは、調理の外部化、店舗の小型化をとことん追求しています。小型化して投資額を抑え、正社員は店長1人にして人件費を抑える。そして、スキルを持った調理人を置かなくても商品を提供できるように、店舗調理を圧縮します。これによって、商品を均質にクイックに提供できる仕組みを構築し、それを多店舗展開の原動力とします。当然、店からは人材が育ちにくくなってしまいます。

 しかし、マクドナルドを見てもわかるとおり、チェーンも要所要所に巨大店を出しています。実は、この巨大店が人材育成の「館」なのです。ここには、店長、副店長がいて、そのほかに正社員が2~3人います。こういう大型店で「マネジメントの最低ユニット」を確保し、ここが教育店舗となるわけです。料理人の育成は?というと、それは考えていません。料理人がいなくても商品を提供できる形になっているからです。チェーングループは、外部化、小型化、コックレスをしなければ生きていけないから、そうしているわけです。

人材を育てるためには、教える人と、教わる人が必要

 それでは、個人店はどうやって生き延びるかというと、チェーンの真似をしないこと、チェーンではできないことをやり続けること、これに尽きます。個人店というと、どうしても小規模店でということになりがちですが、出発の第一号店はそれで仕方がないとしても、可能な限り大型化に向かうべきです。大型化というと、「それは無理です」という話になりますが、できるだけ大きな店にする、ということです。

 

 前にも書きましたが、1店目の小型店が繁盛したら、同じ小型の2号店を出すのではなく、近くのより大きな物件に引越しをすることです。ここでいう大型物件とは、調理人の技術を上げられること、人が育つ規模であること、この2つの要件を備えていることを意味します。

 中国料理の繁盛チェーンがほとんど見られないことに着目してください。中国料理というのは、とりわけ店舗調理を重視する業種です。「強火で鍋振り」という基本技術が店に内包されていないと、おいしい中国料理ができないからです。ここでチェーングループはつまずきます。調理人を育成しながらチェーン化などは、とても進められませんから。

 店舗規模も前述のように、チェーンは大型化が苦手です。個人店でも家賃は上がりますし、大型店営業はチェーン同様に難しいのですが、人材育成の面から、最低限のマネジメントユニットを持てるだけの規模を持つことで、その店から人材が育っていくようになります。これが必ず武器になります。料理もサービスも、チェーンでは出せない高質なものを提供できるようになるからです。マネジメントの最低ユニットという言葉を使いましたが、それは「教える人がいて、教わる人がいる」ということです。それにより教える人のモラルが上がり、教わる人の技術やサービス能力が高まるのです。技術をただ単に持っている人と、それを他人に教えることができる人との間には、能力の点で天と地の開きがあります。

 チェーングループはもはや、このマネジメントのユニットをお店で持てなくなっています。店には正社員(=店長)が1人、が通常の形になっています。ですから、個人店がチェーンに勝つためには、お店にマネジメントユニットを確保しておくことが大事になります。これが私の言う「大型化」です。規模が大きく、店長以下の正社員を確保しておかなければならないのですから、売上が小さくてはやっていけません。売上は、客単価×客数ですから、客数が多くて、ある程度客単価が高い商売でなければ成立しないということです。

 そう考えると、低価格チェーンがやっているような商売は、個人ではやってはいけない、ということになります。技術を持った人間がいて、チェーンでは出せないレベルの高いサービスをするメンバーがいる。そして、しかるべき単価が取れる商売を行う。ここにこそ個人店の存在意義、真骨頂があります。個人店で小さな規模で繁盛している店もたくさんあるでしょう。それはそれでいいのですが、次の一手をどう進めるか、です。同じような小規模店をもう1店出そうとは考えないことです。お店の規模をもうひと回り大きくしてみよう、と考えることです。技術を持った人間が店舗調理をしっかり行い、人が育つ。また、素晴らしいサービス要員を育成して、さらに繁盛させようと考えるならば、当然、一定の規模と人の数が必要になってきます。この方向を目指そう、というです。

 チェーン全盛の時代ですが、チェーンの弱い部分、やれないことは何なのかをしっかり吟味すれば、生き残る道がはっきりしてきます。チェーンが入り込みづらい領域で戦うことを、心がけなければなりません。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
株式会社エフビー 代表取締役
神山 泉
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

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