食材も人材も、買い叩いては「良いもの」は手に入らない - 繁盛の黄金律 -

2018/06/29

神山 泉の繁盛の黄金律

Vol.82
今回の黄金律
食材も人材も、買い叩いては「良いもの」は手に入らない

コストの中で買い叩いていいものは、水道光熱費だけ

 「利は元にあり」という言葉は、どうやら誤解されて広まっているようです。「材料を安く手に入れれば、それだけ得られる利益も大きくなる」。こう考えられていて、それが流布しているようです。外食業では、食材費と人件費と家賃、それに水道光熱費が4大コストですが、この中で安く買い叩いていいものは、水道光熱費だけです。

 水道光熱費は、確かに安く手に入れたほうが得でしょう。安く手に入れたからといって、水もガスも電気も粗悪品をつかまされるというわけではありませんから。話はそれますが、水道光熱費は安くならないと思っていませんか。これは大きな間違いです。入手ルートを正しく切り替えれば、必ず安く手に入ります。ただし、その販売元(水道局、電気会社、ガス会社)がその情報を出さないようにしているだけです。4大コストのうち、唯一買い叩いていいものなのに、たいてい「先方の言い値」で支払っています。おかしいですね。

 一方、食材費、人件費、家賃は買い叩いてはいけません。いずれも、買い叩くと劣悪品しか手に入らなくなります。家賃を買い叩くと、ほしい物件が手に入らなくなるだけですが、食材費と人件費に関しては劣悪品が送り込まれてきます。「良いものは少ない」。これが万古不変の真理です。この場合の「もの」は、2つの意味があります。「物」ならば食材、「者」ならば人材です。ともに良質な「もの」は少ないのです。買い叩いて、いいものが手に入る道理がありません。

 まず人材について。「安くコキ使ってやろう」と考えている経営者のもとに、いい人材が集まってくるでしょうか。来るはずがありません。今、手元に資金がなくても、働く人を少しでも幸せにしよう、少しでも豊かな人生を送らせてあげたい、と心底考えて、コツコツと努力し続けている経営者に、人材というものは自然に集まってくるのです。

 アメリカに「チックフィレ(Chick-fil-A)」という有名なチキンチェーンがあります。全米に約2,000店舗あって、1店あたりの年商が約4億円という大手チェーンです。しかも、日曜日は全店休み。「休息日に働いてはいけない」という経営者の考え方からそうしています。この店の入口に、こんな看板が掲げられています。「従業員が楽しく働いていると、店がきれいになります。料理がおいしくなります。料理が早く提供されます。お客様から笑顔がこぼれます」。何と素敵な言葉でしょう。これこそ、外食業の理想の姿ではないでしょうか。しかし、これを実現できている店は少ないのです。

 チックフィレは、既存店の客数が伸び続けています。しかも、主力商品は2品だけと、超シンプルです。従業員第一主義を掲げている経営者はずいぶんいますが、「言っていることとやっていることが違いすぎるぞ」と注意したくなる人が結構多いですね。結局、チックフィレも、従業員をいい人材に育て上げられたからこそ、成長の持続力もあって、しっかりと利益が出る会社になれたのです。やはり「利は元にあり」だったのです。

買い叩く人は、「よいもの」を手にすることができない

 食材も同じです。1円でも安く、と血まなこになり、担当者の尻を引っぱたき、仕入れ業者をおどかし続ける経営者が何と多いことでしょう。こういう経営者は、一時的に安く手に入れることはできるでしょうが、長くは続きません。仕入れ業者も、いっときは我慢しますが、損は必ず取り戻します。買い叩く人に「良いもの」を供給し続けることは、あり得ません。「利は元にあり」というのは、なるべく生産者に近づけ、という意味です。魚ならば港に行って、直接漁師や、あるいは養殖業を営んでいる人々と接することです。牛や豚や鶏も同じです。農産物も同じです。あなた(読者の方々)は、一度でも漁場や生産地に行ったことがありますか。どうやってモノがつくられ(あるいは獲られ)ているか、実見したことがありますか。

 漁師も生産者も、自分で獲ったりつくったりしたものに、誇りを持っています。きちっと評価をしてくれない人には、絶対に使ってもらいたくない、と思っています。「良いものは少ない」のですから、その少ないものを、どうして価格にしか関心がない人に手渡すことがありましょうか。

 生産者が豊かになって幸せになればなるほど、良質で適正価格の食材が手に入るのです。生産者の収入をどのようにして上げようか、どうすれば豊かな生活を送れるようにしてあげられるか。そのことを考える外食業の経営者だけが、お客さまに支持されて、利益を生み出す良質の商品をつくることができる、ということです。利益を上げる大前提は、良い食材を手に入れることです。そして生産者は、自分たちを大切に扱ってくれる人だけに、「良いもの」を差し出してくれます。

 大手チェーンは買い叩きをやっているのではないか、と思っている人はいませんか。そんなことはありません。なかにはそういうタチの悪い経営者もいるでしょうが、大方の経営者は生産者をとても大切にして、直接コミュニケーションを深めています。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
株式会社エフビー 代表取締役
神山 泉
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

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