店舗調理を限定しないと、生き残れない(前編) - 繁盛の黄金律 -

2018/08/31

神山 泉の繁盛の黄金律

Vol.84
今回の黄金律
店舗調理を限定しないと、生き残れない(前編)

無意味な店舗調理は、どんどん「外」に出す

 私は、口を開けば「店舗(内での)調理が大事」と言っていますが、ここでその真意をもう一度明らかにしておきたいと思います。店舗調理というものは、面倒くさいものですから、できればないほうがよいです。コンビニなんかを見ていると、本当に楽チンそうに見えますね。弁当も惣菜も多種類揃えてありますが、どれも店外で作ったものを並べているだけです。それがどんどん売れていきます。コンビニの例外は、一杯出しのコーヒーとフライドチキン、それに焼鳥です。「あれのどこが店舗調理なんだ!」とお怒りになる読者もいらっしゃるでしょうが、店でほんのちょっとでも手を加える部分があれば、店舗調理品の分野に入るのです。

 これだって、効率から言えばやらないほうがよいのですが、その部分があることで質が上がり、差別化を実現できるから店に残しているわけです。外食業の店舗調理は、その領域がまったく違いますが、考え方は同じです。質が上がり、例えばコンビニの商品とまったくレベルの異なるメニューを生み出すことができるから、店舗調理にこだわるのです。逆に言えば、差を生み出さない店舗調理なんか、やっていても仕方がない、ということになります。無意味な店舗調理は、どんどん「外」に出すべきです。

 プロの調理人は、自分の技能を過信しすぎていて、何から何まで店で調理をするから高品質なメニューを生み出すことができるんだ、と考えがちです。自分が劣悪な環境の中で、長いこと親方にしごかれてきて、ようやく現在の腕と地位を得た、という想いが強いために、部下や新人にも、同じ“修業”を強(し)いがちです。しかし、若い人たちにとっては、それは拷問以外の何ものでもありません。もはやそんな時代ではありません。そんなことをやっていたら、この外食業には若い人が誰一人入ってこなくなります。

 しかし、店舗での最終調理を重視する私の考えは、微動だにしません。それこそが外食業の最強の武器である、と確信しています。それだからこそ、前述のように、差別化の武器にならない調理は、店から「外」に出していかなければなりません。

外部化、集中化の基準は、よりおいしくなること

 つまり、調理作業の腑分(ふわ)けが必要だ、ということですね。その作業の腑分けについては、やはりチェーングループはとことん追求しています。チェーングループは店舗に調理人が存在しない、と個店のオーナーは考えがちですが、そんなことはありません。「ロイヤルホスト」にも、「木曽路」にも、「餃子の王将」にも、プロの料理人がちゃんといます。それぞれが自社のカリキュラムに沿って、自前の料理人の育成を進めています。チェーンや大手外食企業の調理人育成のポイントは、店でやらなくていい調理はさせないし、教えないことです。外注化、集中化できるものは、店から排除。この一言に尽きます。

 例えば「餃子の王将」。今、絶好調の中華チェーンですが、これまでは看板商品の餃子は、「あん」をセントラルキッチン(CK)で作って、それを店に配送して、店でひとつずつ成形していました。それが差別化のポイントだという確信があったからです。ところが一昨年、埼玉県の東松山に70億円の巨費を投じて、餃子専用のCKを作りました。これによって、関東地区の店では、店舗での成形作業をやめたのです。しかし、そのCKを作るときに、決めたことがひとつありました。それは、「店で成形するよりもおいしい餃子を作る」ということでした。集中化(CK化)したほうがよりおいしい餃子を作ることができる。このことに全エネルギーを傾けたのです。

 口で言うのは簡単ですが、そのためには大変な苦労がありました。素材とその組み合わせの見直し、機器と製造工程の開発、温度管理など、あらゆる要素を総合して「よりおいしく」を追求したのです。特に重視したのが、フレッシュ・ローテーションです。つまり、その日に作ったものを、その日のうちに使い切る、ということです。ですからもちろん、配送、管理は冷凍ではなく、冷蔵です。鮮度のよいものを、その状態を保ったまま店で最終調理し、今まで以上においしく提供する。これに全社を挙げて取り組んだのです。

 その結果は、というと、1店舗あたりの餃子の販売数が飛躍的に高まりました。前よりおいしくなったという評判を得たのです。以前は、ここが肝(きも)だということで、店舗内での成形にこだわっていましたが、その考えを変えて、外部化(CK化)を実現して、より高質な商品を生み出すことができました。

 しかし、すべてのメニューを外部化したわけではありません。餃子以外のメニューについては、むしろ店舗調理にとことんこだわったのです。調理力は、店によってバラつきが激しかったのですが、調理人の再教育、再訓練によってバラつきをなくし、技術の底上げを図ったのです。本社に“調理道場”を作って、そこでもう一度、基礎技術を叩き込みました。店数は730店以上あるのですから、これは一大事業です。各店から順次、調理人を本部に集めて、特訓を行ったのですから、一大社内革命を行ったといえます。これを持続的に行うことで、店ごとの料理のバラつきは小さくなり、チェーン全体の質の底上げが達成されました。この“一大事業”は、今も行われています。(後半へ続く)

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
株式会社エフビー 代表取締役
神山 泉
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

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