「楽しく、愉快に、ノビノビと」働いてもらうための秘策(前編) - 繁盛の黄金律 -

2018/11/30

神山 泉の繁盛の黄金律

Vol.87
今回の黄金律
「楽しく、愉快に、ノビノビと」働いてもらうための秘策(前編)

多くのパート・アルバイトが1日でも早く辞めたがっている

 多少仕事がキツくても、「仕事が楽しく、お店にいると時間が経つのが早い」と働いている人(パート・アルバイト=PA)が感じていれば、そうそう簡単に辞めませんよね。当たり前の話です。そうはいっても、PAもいろいろな事情を抱えていますから、離職率ゼロというわけにはいきません。

 しかし、「店長や副店長、料理長の顔を見るのもいやだ、一刻も早く辞めたい」と思っているPAが大多数だったら、これは店側の問題であり、大問題です。「人間的に尊敬できない」「生理的嫌悪感を抱く」とまで言われたら、これはちょっと打つ手がありません。PAのほとんどがそういう感情を抱くとすれば、店の存亡にかかわります。というよりは、店は早晩つぶれるでしょう。

 店長がお客にだけはいくら目いっぱい愛想をふりまいても、お客も店に流れる嫌な空気を敏感に感じ取りますから、二度とその店に足を踏み入れることはないでしょう。「何でギスギスした空気が流れる店で飯を食わなきゃいけないんだ」と、口にこそ出さないものの、心の中でそうつぶやいて去っていくことになります。こういう話は、店長や副店長の個人の性格によるものが多いので、手の打ちようがないケースが多いのですが、今回と次回の2回に渡って、普通の店でやれること、離職率を下げるために効果があることを述べてみます。

スタッフ同士の仲が悪い店で、繁盛しているところはない

 前にも述べましたが、日々の店長の行動に関して、大前提となる「五カ条」があります。

  • ① 誰にも公平。えこひいきをしないこと。
  • ② いつもニコニコ。明るく、朗らか。
  • ③ 教育・訓練は、マンツーマンで、一作業ごとに徹底させる。できたときには、大いに褒める。
  • ④ 忙しいときは何でもやる。しかし、店全体に注意の目を向ける(特に、店の入口やデシャップ)。
  • ⑤ クレームは全部自分で引き受ける(自分=店長がいないときは、その時間帯の責任者)。

 これを実践できたら、離職率は大幅に下がるはずですが、これがなかなか難しいのです。「この五カ条は守り抜いている」と断言できる店長や副店長が、いったいどれだけいるでしょうか。

 また、働く人同士が仲の悪い店は、絶対に繁盛しません。帝王のような絶大な力を持つ料理長がいて、いつも緊張が支配しているキッチン。素晴らしい店の必須条件のような言われ方をよくされますが、そういう場所から生まれるものは、完璧だけど肩がこる料理なのです。お客は一度や二度は行くかもしれませんが、「もういいよ。飯ぐらい気楽に食べたい」という気持ちになってしまいます。フロアも同じです。店長の、悪い意味での厳しい目が隅々にまで行き渡っている店で食事をしたいと思いますか。基本的に和気あいあいで、従業員それぞれがイキイキ、伸び伸びと働いている。そういう店に、お客は集まるものです。もちろん、イキイキ、伸び伸び働くためには、個々人にサービスの技術がしっかり身に付いていなければなりません。

 自分のサービスに自信がなく、誰からもきちんと教えてもらえず、店長や上司の顔色ばかりをうかがっているPAが、どれだけ多いことでしょうか。その大部分が、“近々、店を辞めようと思っている”離職予備軍です。せっかく心躍らせて飲食業界に飛び込んできたのに、もったいないことです。ちゃんとした扱いをしてあげて、ちゃんと育成すれば、そして何よりも、成長を温かい目で見守ってあげれば、離職予備軍にはならないはずです。それどころか、飲食業の魅力に開眼して、「よし、私もこの業界に賭けてみよう」と思って、より深く関わることになるかもしれないのです。

 こういう前途有為な人生を、日々の営業でつぶしているのは、業界全体にとって、実に残念なことです。この業界の魅力をどうすれば感じてもらえるのか。その点について、次回詳しくお話しすることにしましょう(後編へ続く)。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
株式会社エフビー 代表取締役
神山 泉
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

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