2015/04/28 特集

地震が起きたらこう動くべし。飲食店がやるべき準備と発生直後の対応方法

大災害から月日が経過するたび、災害対策を忘れてしまってはいないだろうか。グラッと来た瞬間に動けますか?災害は何かが起きてからでは遅い。いざという時、お店を守るための対策を学び、より安全で、信頼される店づくりを目指そう。

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更新日:2024.1.26
※地震など災害時の対策として、一部更新いたしました。是非ご活用ください。

東日本大震災から月日が経過。あのとき、災害に対してさまざまな対策を講じた飲食店も、今ではすっかり忘れてしまっていないだろうか。何かが起きてからでは遅い。そのことをあらためて肝に銘じ、いざという時、「楽しい場所」のお店を守るための事前対策と瞬時の動き方を学び、より安全で、信頼される店づくりを目指そう。

株式会社ウェルネット 代表取締役 山根 義信氏
1958年、石川県生まれ。東京経済大学卒業。陸上自衛隊在職中に三原山噴火災害、日航機御巣鷹山墜落事故など、多数の災害派遣出動実績を持つ。2001年、株式会社ウェルネット設立。事業内容は企業の防災対策指導など多岐に渡る。中小企業診断士、社会保険労務士、行政書士。「会社を守る防災マニュアルの作り方」(マネジメント社)など著書も多数。

目次
定期的な訓練を通じて防災への想像力を高める
地震:グラッときた瞬間に動けるか?まずは役割分担の明確化から
ノコギリ、バール、軍手は万が一のために必須!
厨房はまず火元チェック。ホールは安全確保を優先
地震発生に伴う停電にも対策が必須
火災:人為的な要因が大きい火災。起こさない対策が何より重要
吸い殻や口火を厳重管理。避難経路も常にチェック
事前に手段を講じやすい風水害。予報を軽視せず、然るべき準備を!

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定期的な訓練を通じて防災への想像力を高める

一口に災害といっても内容はさまざまだ。例えば地震など予測困難な天災は、最悪の事態を想定して準備を怠らない姿勢が重要だし、台風のように予報精度が高い風水害なら、被害を最小化する「減災」の視点が必要になる。また、人為的要因の大きな火災は、とにかく防止策の徹底に尽きるだろう。

ただ、飲食店の災害対策を考える際には変わらない鉄則がある。「お店にはお客様やスタッフの安全を守る義務がある」ということだ。おいしい料理を提供するのと同じく、災害対策も重要な業務の一部。この事実を忘れてはいけない。多くの企業で防災対策を指導するコンサルタントの山根義信氏は、そのためには「日常における当たり前の想像力こそが重要」と話す。

「この瞬間に何か起きたらどうすればいいか、真剣に考えてみること。これがすべての危機管理の基本です。でも、実際はできていない飲食店が少なくない。私は、飲食店に入ると必ずテーブルの下などに懐中電灯があるかを確認します。地震の後は、かなりの確率で停電が起こる。初めて来たお店で周囲は真っ暗、しかも、足下に割れたグラスなどが散乱しているかもしれない状態では、ケガをしていなくても動くことは難しい。とはいえ、席数に足りる懐中電灯を準備しているお店は、ほとんどないのが現状なのです」。

本特集では地震と火災に分けて、必要な「事前対策」と「発生時の緊急対策」を紹介する。掲載したチェック項目を再確認すれば、店舗に足りない対策が見えてくるはずだ。

「そのうえで災害を想定した訓練を行ってください(下表参照)。いくらマニュアルを準備しても、運用の仕方がわからなくては意味がありません。毎年、防災の日(9月1日)に実施するだけでも効果があります。具体的な訓練を行うことが、防災への想像力喚起にもつながるのです」(山根氏)。

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地震:グラッときた瞬間に動けるか?まずは役割分担の明確化から

ノコギリ、バール、軍手は万が一のために必須!

災害への事前対策で重要なのは、役割分担の明確化。これは地震だけでなく、あらゆる防災の基本と言える。

「まずは、災害時に指揮を執る防災責任者を決めます。そして、有事の際はその人の判断に従うというルールを、スタッフで共有しておく。通常は店長さんが務めますが、休みのときの代行者も決めておきましょう。ほかにも火災の場合の消火係、お客様を安全に避難させる誘導係なども割り振っておく。それに基づき訓練をしておけば、混乱は最小限に抑えられます」(山根氏)。

来店客の安全確保には、地震発生時に店周辺でどんな事態が起こりうるか、調べておくことも必要だ。自治体発行のハザードマップには、液状化や土砂崩れなど、二次災害のリスクが地域別に記載されている。それに応じて避難のシナリオも変わってくるはず。店内についても、やはりお客様のケガ防止という観点から照明器具・ボトルなどの落下防止、什器備品・設備などの転倒防止をチェックする。「ちょっとした対策の有無で、被害が大きく変わることも多いのです」と指摘する山根氏。

さらに、「大きな棚なども、小さなネジで壁に固定するだけで、転倒のリスクは激減します。シャンデリアなどの照明器具も、万が一落ちると非常に危険です。チェーンを二重にするなど、必要に応じて対策を講じてください。什器は、使わない際はこまめに施錠し、中に入っているものが出ないように注意する。最近は、食器やドリンクの瓶などを壁に飾っているバルなどをよく見ますが、そのような場合もお客様の頭上を避けたり、高い場所の瓶類は固定するなど、対策が必要です」。

また、避難経路の確保は当然だが、意外に見過ごされがちなのが、消火器の位置。すぐ取り出せなくては、火災時の被害が拡大してしまう。周辺に物を置かないのはもちろん、揺れで何かが落ちたり、什器が動いた場合もすぐ使えるよう、置き場所を注意したい。

「揺れが大きいと、ドアをこじ開けて避難したり、下敷きになった人を救助しなければいけない場合も出てきます。そこで、少なくとも常備しておきたいのがノコギリ、バール、軍手。これらがなかったために、救助が遅れたケースは実際、少なくありません。また、救急用品はお客様の分も想定して多めに用意しておきましょう」。

厨房はまず火元チェック。ホールは安全確保を優先

営業中に地震が発生した場合、厨房担当者はまっ先に火を消すこと。

「震度が大きいと気持ちが動転しがちですが、飲食店にとって一番怖いのは火事の二次災害。揺れが収まったらすぐにガスの元栓、フライヤー、グリルなどをチェックしましょう。それでも火が出てしまった場合は、すぐ消防署に通報することが大事。火が小さいから自分たちで何とかしようなどと、安易に考えるのは命取りです」と、山根氏。

一方、ホールスタッフは来店客の安全確保を最優先に考え、行動すること。揺れが震度4(棚の食器類が音を立て吊り下げているものも大きく揺れる)を超える場合は、テーブルの下に避難するよう大声でアナウンスする。また、飛散したガラスでケガをしないように、窓側の人にはすぐ席を移ってもらうことも忘れてはいけない。そして揺れが収まったら、あらかじめ決めておいた経路で避難誘導する。

「地震の場合、発生直後の揺れが一番大きい。この時点では落下物を避けることが重要で、焦ってすぐ建物外に誘導するのは禁物です。オフィス街であれば、ビルのガラスが落下してくる危険もある。直後はテーブルの下に身を隠し、その後、すみやかに屋外退去。この順番を普段から意識付けしておきましょう。ただ、ドアや窓が歪んで開かなくなることには、注意が必要です。避難経路を確保するためにも非常口はすぐに開放します。これも普段から担当者を決めておきましょう」。

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地震発生に伴う停電にも対策が必須

大きな地震が起きた場合、一時的にせよ、停電が起きる可能性は高い。そこで、地震と停電は常にワンセットで対策を考える必要がある。灯りが消えると人は強い不安を感じ、パニックに陥りがちだからだ。そんなときは店のスタッフが暗闇の中で声を出して、来店客に非常用電灯(懐中電灯)の場所を案内する。同時に、電気の復旧の見込みを伝えるのも重要。その一声が、店内にいる人全員の冷静な行動につながるのだ。

「外が見えるお店なら、周りのビルに光が灯っているか目視してみます。見える範囲に電気が来ていれば、停電の規模はさほど大きくない。その場合、電力会社に連絡すれば復旧の見込み時刻がわかるかもしれません。また、混乱が続くと未精算で帰られる人も出てきます。レジが使えない場合、手計算で早めに会計していただくことも大切。冷蔵庫に氷を入れて食材を腐らせない工夫なども大切です。さらに気をつけたいのは、店内で絶対に火を使わないこと。停電が長引くとよく、ライターで周囲を照らそうとするお客様がいますが、万が一ガス漏れしていた場合、引火の危険性があります。このことも、まっ先にアナウンスしなければいけません」(山根氏)。

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火災:人為的な要因が大きい火災。起こさない対策が何より重要

吸い殻や口火を厳重管理。避難経路も常にチェック

同じ災害でも、火災は地震と違ってヒューマン・エラー(人為的ミス)に起因するものが大半。一にも二にも事前対策の徹底が重要だ。出火原因として多く見られるのが、タバコの不始末。

「特に要注意なのが吸い殻です。灰皿の中身をゴミ箱に捨てて集積所に出したところ、その後に出火というケースは少なくありません。店内・店外問わず、吸い殻はゴミ箱に捨てない。そのうえで、ゴミ箱の管理も徹底しましょう。集積所をきれいに保つのは放火予防の観点でも有効です」(山根氏)。

口火、種火の消し忘れも怖い。古い店舗では、まれにガス管が老朽化しているケースがあり、万が一ガス漏れした場合、口火を点けっぱなしだと引火して大事故につながってしまう。

「意外なところでは、厨房のダクトも出火原因になりがち。過去にはファンモーターのベルトが切れたまま換気扇を回し続け、空回りしたシャフトが過熱して出火した事例や、油汚れでダクトの吸い込みが開かなくなり、過熱から火事になった事例がありました。コンロやダクト周辺は常にきれいな状態に保っておくことが大事です」。

電化製品のスイッチ入れっぱなし、無理なタコ足配線なども過熱の原因。ガス漏れと重なると惨事につながりかねないので厳重に管理したい。また地震以上に重要なのが、火災時の避難経路の確保。数秒の遅れが命取りになるだけに、来店客をスムーズに誘導できるよう、スタッフは常にルートを把握しておく必要がある。もちろん、経路上に障害物が置かれていないかどうかも、随時、確認しておかなければいけない。

「雑居ビル内などの店舗の場合は、定期的にエレベーターではなく階段を使ってみて、荷物が置かれていないか、避難口が開くかなどをチェックしてください。また、火はいったん燃え広がるとプロの消防士でも食い止めることが難しい。初期消火が重要なことはもちろんですが、たとえボヤ程度でも消防署への連絡はためらわないこと。面倒を恐れて、自分で何とかしようなどと思うと取り返しがつかなくなります」。

事前に手段を講じやすい風水害。予報を軽視せず、然るべき準備を!

ここまで述べてきた地震・火災以外にも、強風・豪雨など風水害への対策も不可欠だが、両者には大きな違いがある。いつ起こるかわからない前者に対し、後者は天気予報の発達によって、その到来時期と規模が事前にある程度わかるという点だ。「情報収集を行えば、風水害の被害はかなり減らせます。例えば、大型台風が接近している場合、当然、水害のリスクは高まる。自治体のハザードマップと店舗構造を考え合わせれば、土嚢で浸水を防ぐなどの手段が講じられます。また、強風が予想される場合は、看板やベンチが飛ばないよう固定する必要がある。天気予報を軽視せず、然るべき準備をするのは、飲食店で働く人の義務だと言えます」(山根氏)。

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