2013/02/26 特集

あればいいわけじゃない!集客アップにつながる看板の作り方

決して目新しくはないが、飲食店にとって一番身近な広告媒体、それが看板だ。だが、その重要性をきちんと認識しているお店は意外に少ない。集客アップに直接結び付く作り方のエッセンスを業界のプロに聞いた。

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決して目新しくはないが、飲食店にとって一番身近な広告媒体、それが看板だ。だが、その重要性をきちんと認識しているお店は意外に少ない。集客アップに直接結び付く作り方のエッセンスを、業界のプロに聞いた。

アイワ広告株式会社 代表取締役社長 小山雅明氏
看板視認性の改善、S.I(ショップ・アイデンティティ)による集客サインコンサルティングの第一人者。有名外食チェーン店の集客アドバイザーをはじめ、看板によって集客を仕組み化する看板ドクターとして、多くの飲食店や小売店など、業種・業態を問わずV字回復に導く。飲食業界専門誌や業界新聞などで連載のほか、テレビ出演、講演などを行っている。
 主な著書に『看板の魅力で集客力がアップする』(かんき出版)、「儲かるお店は『見た目』で決まる」(実業之日本社)、監修DVD『看板を変えて、売り上げを伸ばせ!繁盛店への看板力』(日経BP社)、『お客を選ぶ店ほどお客に選ばれる』(日経BP社)、「人の心は『色』で動く」(三笠書房)などがある。
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看板の3つの確率を高めれば、非常に有効な集客ツールになる

「私の見るところ、看板を本当の意味で効果的に使いこなせている飲食店は全体の5%程度。残りは何らかの部分に改善余地があります」。

こう語るのは、看板に特化した集客理論を長く研究し、豊富な施行実績を持つアイワ広告の小山雅明氏。小山氏によれば「看板の役割は3つの確率を高めること」だという。

「1つ目は、お客様に店を発見してもらう確率です。繁盛店を作る秘訣はリピーターの確保。それには常に新規来店も促さなければいけません。すでに目的意識のある人たちに対してはインターネットによる発信などが有効ですが、不特定多数に広くアピールできるのはやはり看板。いかに立地がよくても認識されなければ存在していないのと同じ。チャンスを逃さないためにも正しい位置に看板を設置することが重要です」。

2つ目は「お客様に魅力を感じてもらう確率」。それには店の特徴やアピールポイントを、わかりやすく瞬時に伝えることが大切だ。「例えば、一口に居酒屋といってもお客様によってニーズは様々です。落ち着いてじっくり飲みたい方もいれば、気軽にワイワイ騒ぎたい方もいます。言い換えれば、看板を一目見ただけで、そこがどういう居酒屋なのかがパッと伝わらないとダメ。店側が自分たちのSI(ショップ・アイデンティティ)を再確認し、コンセプトに合った看板デザインを的確に作ることが求められます」。

そして、3つ目が「お客様を誘導して実際に入ってもらう確率」。お店の前で立ち止まっても、結局は入らずに通り過ぎてしまう店には、いくつか共通の理由があると小山氏。「まず典型的なのは、看板にまったく価格が出ていなかったり、店頭が暗かったりと、お客様を不安にさせる作りになっていること。また、地下や複合施設内の場合は、看板自体は目についても入口がわかりにいというケースも見受けられます」。

この「見つけてもらう」「魅力を伝える」「実際に誘導する」という基本の3要素は、どんな業態でも変わらない。これらを1つずつ検証し、確率を高めることで、集客アップに結び付けられる。次ページからは、その具体的な考え方を紹介しよう。

集客UPのために上げたい!看板の3つの確率

① 見つけてもらう=発見確率のUP
不特定多数の人に見つけてもらうツールとして看板は有効。使い方次第では立地の悪さも改善できる。

② 魅力を感じてもらう=魅力確率のUP
お店の魅力=SI(ショップ・アイデンティティ)をビジュアルで瞬時に伝えるのも看板の大きな機能。

③ 入店してもらう=IN誘導率のUP
看板にはお店の中の様子まで紹介する機能も。その役割は、敷居をまたいでもらって初めて完結する。

「見つけてもらう」ためのポイント

7秒手前から発見できるか

「車を運転している人がお店の存在に気付き、駐車場に入ろうとするには、一般に約7秒が必要だとされています。つまりロードサイドのお店は、最低でも7秒手前の位置でドライバーの目に看板が入ることが必須。この法則を知らずに掲示してしまうと、お客様は迷っているうちに通り過ぎてしまいます」(小山氏)。
例えば制限時速が40km であれば、設置位置は最低でも80m手前。助手席の人にストップウォッチで計測してもらえば、より正確にチェックできるだろう。また、この7秒という数値は急ぎ足の歩行者にもほぼ当てはまるという。「ロードサイドでも繁華街でも、大切なのは店のある程度手前でお客様に存在を知ってもらうこと。そのためには周辺環境をよく見て、風景に埋没しないデザインや色彩を心がけたいですね。通行人をハッとさせる『アメイジング効果』を常に意識するのも重要です」(小山氏)。

進行方向に対して直角に設置

ドライバーや通行人はふつう、進行方向を真っ直ぐ見ています。したがって看板は、基本的には道路に対して直角に設置した方が効果的です。ところが飲食店の方は、どうしても自分のお店に意識が行きがちなので、この当たり前の視線を忘れがち。客観的な通行人目線を最優先することは、看板設置の基本です」(小山氏)。
進行方向の目線に対しては、道路上の「突き出し空間」も有効だ。東京都の広告条例では、敷地外も1m 以下なら車道や歩道上に看板を掲出できる(道から看板の底辺までの高さが、車道は4.5m、歩道は3.5m 以上必要)。これも発見確率を上げる一つの手段だ。

店名<業態の法則

「店名ばかりが大々的に表記されていて、どういうお店なのかがまるでわからない。これは典型的な失敗パターンです。重要度が高いのは、名前より『何屋さんなのか』という情報。それも単に『そば』ではなく、『立ち食いそば』『そば居酒屋』など、業種と業態を両方兼ね備えたアピールをきちんと表に出す。さらに、これを遠くからでもわかるようにすることが重要です」(小山氏)。
また、欧文の表記は一瞬では伝わりにくいということも、頭に入れておこう。何屋さんなのかがわからない看板は用をなさない。格好悪く思えてもカナを用い、ビジュアルで補足するのが鉄則だ。

文字の"可読性"を意識する

ここでいう「可読性」とは、「離れた距離から文字が読めるかどうか」という意味。前述の「7秒前の法則」に基づいた設置位置から、パッと見たときに無理なく読めて、お店の存在をしっかり認知してもらえる大きさの文字を選ぶのが基本だ。
「交通標識などは基準がきちんと決められていますが、個人のお店ではそこを感覚で処理してしまっているケースが多い。目安は『文字サイズ=距離÷200』。例えば100m 手前から読んでもらうには、1文字あたり50cm の大きさが必要。近くから見ると大きく感じますが、実際にはこれでも最低限の大きさです」(小山氏)。

「魅力を感じてもらう」ためのポイント

「色彩効果」を考える

「どういう色を用いるかで、看板が人に与えるイメージは大きく変わります。お店の魅力(SI =ショップ・アイデンティティ)を素早く正確に伝えるという意味では、それを体現する色を使うことが重要。色自体が1つのメッセージなのです」(小山氏)。
飲食店における効果的な色使いは、通常の色彩心理学とも一味違う。「例えば同じ赤でも、周囲が暗いと明るく映るし、周りが明るければ暗く見えることも。単に暖色を使えば温かい印象を表現できるというような、単純なものではありません」と小山氏。店のターゲット層をよく考えたうえで、ベースカラーを決定したい。

写真を効果的に使う

競争が厳しく、常にある種の「飽和市場」と言える昨今の外食産業。その中で新規来店客を獲得するためには、商材そのものはもちろん、お店が提供するシチュエーションを積極的にアピールしていく姿勢が欠かせない。それは看板についても同じ。
「具体的には『メニュー写真+店内の風景』をセットで掲出することです。特に地下や商業施設内にある場合は、店内の雰囲気は外からわかりません。写真があると、お客様の不安感を取り除き、コンセプトを感覚的に理解していただけます。例えばファミリー向けの焼き肉店の場合、文字に加えて実際に焼肉を楽しんでいる家族の写真を入れる。『この店はこんなシーンで使えますよ』という提案を、看板として出すわけですね。データを取ってみても、写真のあるなしでは、集客にはっきりと差が出ます」(小山氏)。

鮮度を大切に

肉や魚、野菜などの食材と同じく、看板にも鮮度というものがある。意外に見落とされがちだが実は重要なポイントだ。
「この場合の鮮度とは、シンプルに新しさを指します。古ぼけてくすんだ看板は、かえってお店の信頼性を損なってしまうもの。昔からの観光地で、何十年も付け替えていないような壊れた看板を目にして、名店と知っていても入る気をなくしてしまったという経験をしたことはないでしょうか。逆に繁盛しているお店の中には、メニューやサービスの変更がなくても定期的に看板を付け替えているところが少なくありません。ロードサイド店で、すすや煙に汚れた看板も論外です。色褪せた印象を与えないためにも、看板は3年くらいの周期で替えていきたいものです」(小山氏)。

整理して伝える

「お店の魅力をもれなく伝えたいと思うあまり、何でもかんでも看板に盛り込んで、結局どういうお店なのかがわからなくなってしまう──。これも非常に多いパターンですね」(小山氏)。
看板作りには、情報を整理することも必要。店頭に置くスタンドなどでは、お客様のニーズごとにメニューをカテゴリー分けし、それぞれにわかりやすい見出しを付けるなどの整理も重要だ。「私がお手伝いしたうどん屋さんの場合、込み入った印象のあった店頭のメニュー看板を『名物のうどん』『お得なセット定食』『ちょっと一杯』という3つに整理し、それぞれ分けて表示したことで、来店客数が短期間でアップしました。お店の魅力の整理は、逃していた客層を掘り起こす効果もあるのです」(白石氏)。

SI(ショップ・アイデンティティ)=お店の魅力を重視する

お店の魅力を伝えるためには、まずは全スタッフの間で、お店のコンセプトとターゲット層がきちんと共有されている必要がある。この単純な基本が意外とできていないと、小山氏は指摘する。「私自身がコンサルタントを依頼された際は、スタッフの方々に必ず『ここは、どういうお店ですか?』と訪ねます。すると集客の芳しくない店ほど、オーナー、店長、従業員で言うことが違うのです。ショップ・アイデンティティが確立されていないと、どんなに派手な看板を掲げても効果は低い。お客様のニーズが細分化している昨今、『どんなお客様でも大歓迎』という看板は、結局のところ何も伝えていないことにもなってしまうのです」(小山氏)。

「入店してもらう」ためのポイント

矢印に効果あり

店内の様子がわかりやすい路面店に比べ、地下や複合商業施設内の店舗では、実際に店内まで誘導することが極めて重要になる。その際、大きな力を発揮するのが「矢印」だ。
「単純に思われがちですが、矢印のビジュアル効果はデータ的に実証されています。ある実験では、矢印付き看板は、ないものに比べて約10%も集客率が高かった。これを『角度を付けた矢印』、さらに『角度と動きを付けた矢印』にすると、より効果が高まり、最終的に18%もの差が出ています」(小山氏)。

入口は明るく

看板には「店の存在を認識してもらう」「情報=魅力を正確に伝える」という役割に加えて、「お店に対する不安感を取り除く」という機能もある。これもまた誘導確率アップの必須項目。
「高速道路をイメージするとわかりやすいかもしれません。極端に交通量が多くない日でも、トンネルの手前では渋滞が発生しやすい。これは人が暗闇に本能的な恐怖を感じてしまい、ついスピードを落としてしまうからです。飲食店についても基本は同じ。入口まわりが薄暗いと、初めてのお客様はどこかで不安感を抱いて二の足を踏んでしまいます。そういう場合も、ぜひ看板を有効に使っていただきたい。照明を備えたタイプなら、ライティングとお客様の誘導が同時に行えます。外装そのものに手を加える余裕がなければ、明るく光るスタンドタイプが手軽ですし、写真なども盛り込めて効果的でしょう」(小山氏)。

「野立て看板」を活用する

ポイント1で、「入店してもらうためには、店の7秒手前の地点で見つけてもらうことが重要」という基本を紹介した。その際、もっと前の位置から看板が目に入るように工夫すれば、より効率的に店舗まで導くこともできる。そこで効果を発揮するのが、道路沿いなどに設置する「野立て看板」だ。
「やや泥臭く感じられるかもしれませんが、確実な集客が見込める手法です。例えばロードサイド店では、『7秒前の法則』を守りたくても、歩道橋や街路樹などがあって、車中から店が視認できないケースも少なくありません。その場合、道沿いに野立て看板を設置しておけば、あらかじめお店の存在をアピールできます。反対車線からの誘導や奥まった立地への案内にも有効です。このように野立てに限らず看板というものは、使い方次第で立地条件ですらカバーできる有力なツールとなるのです」(小山氏)。