2013/09/17 挑戦者たち

有限会社サンカンパニー 代表取締役 山川 大輔氏

埼玉県北部で6店舗を展開する有限会社サンカンパニー。業態は様々だが、いずれも地元住民から支持される繁盛店に成長している。商圏の小さいローカルエリアで勝ち続けられる理由を山川氏にうかがった。

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ローカルだからこそ“人”が大切。スタッフが輝いて働ける場を提供したい

深谷市や熊谷市など、現在、埼玉県北部で6店舗を展開する有限会社サンカンパニー。業態は様々だが、いずれも地元住民から支持される繁盛店に成長している。商圏の小さいローカルエリアで勝ち続けられる理由とは? 代表取締役の山川大輔氏にドミナント戦略の秘訣をうかがった。

――父親が料理人だったのが、飲食業界に入るきっかけだったそうですね。

子供の頃から中華の料理人である父を尊敬していて、「いつか父と一緒に店をやりたい」という夢を持っていました。高校卒業後、いったんはバイクメーカーに就職しましたが、19歳の時に退職して、父が経営していた中華料理店に入りました。しかし、私も若かったため、職人気質の父と考え方が合わないこともあり、別々の道を行くことに。一度気持ちをリセットしようと、オーストラリアのケアンズに行き、1年ほど滞在しました。帰国してからは「20代で居酒屋を出す!」という目標を立て、食料品の移動販売をしながら、2年間で開店資金を貯めました。その後、中華以外の料理や経営を学びたいと思い、熊谷にあるイタリアンで3年ほど修業を積んで、2002年に27歳で独立したのです。

――初出店以来、次々に店をオープンするなど順調だったと聞きます。

リタイアする父の店を引き継ぎ、1号店となる中華とイタリアンの創作料理店「楽食空間 山」をオープン。ここが深谷の住宅街のニーズをつかみ、繁盛店になりました。それから1年も経たないうちに、焼鳥業態の「炎や」を出店。その1年後にも、3店舗目の「つくね家 万歳」をオープンと、順調に出店していきましたが、2006年、浦和に4店舗目を出した頃から、人材の問題に直面しました。各店舗の店長へのマネジメントに関する教育が疎かになっていたのです。また、料理も店内での手作りにこだわるあまり、仕込みの量が多くなり、オペレーションも増え、辞めるスタッフが多く出ました。最終的には、常連のお客様から「料理の質が落ちた」と言われ、ショックでしたね。そこで、経営や組織作りを見直そうと考え、まず、セントラルキッチン(CK)を設立。各店舗のメインのメニューはこれまで通り店内で、そのほか全店共通のサイドメニューはCKで作るようにしました。その結果、現場スタッフの負担が軽減されると同時に、顧客満足度も上がりました。このCKがあったから、その後の出店にも踏み切れたのだと思います。

1975年、埼玉県深谷市出身。高校卒業後に就職した会社を1年で退職し、父とともに2年間、中華料理店を経営。その後、イタリア料理店で3年ほど修業を積み、2002年に27歳で独立。以後、深谷市を中心に多様な業態を次々とドミナント出店。現在、計6店舗を展開中

――ローカルエリアで、様々な業態を6店舗経営していますね。

業態は、その時に「これをやりたい」と思ったものを選んでいます。嗅覚とタイミングですね。2011年オープンの「漁火飯場 いろはのゐ」は、初めての和食業態。今は調理機器や冷凍技術の発達により、料理人が余っている時代。だからこそ、料理人が活躍できる店を作りたかったのです。

「いろはのゐ」は、深谷駅前で長年親しまれた老舗割烹の居抜き物件です。1階と2階を合わせて200坪と広く、家賃も高いだろうと最初は躊躇したのですが、大家さんが「若い人にこの場所で頑張ってほしい」と、家賃を格安にしてくださった。そんな交渉ができるのも、人とのつながりが強いローカルならではだと感じています。

――ローカルエリアで成功する店づくりの秘訣を教えてください。

ローカルと都会の大きな違いは、平日と週末の客数の差が非常に大きいこと。週末は混むので多数のスタッフが必要ですが、平日はそうでもないので人件費をかけられない。もし平日に混雑した場合は、店が回らなくなってしまうので、無理にお客様は入れません。来店していただいたお客様に満足してもらうことが一番ですから。

弊社の中で現在、もっとも多くのお客様に来店していただいている「博多もつ鍋・串焼き だるま山 熊谷店」は、最初から洗い場を大きく作り、お通しを廃止するなど、徹底的にオペレーションの効率化を図り、最小限のスタッフで店を回せるようにしました。さらに、熊谷にはそれまでニーズはあるものの、もつ鍋の専門店がなかった。そこで、より大衆的な串焼きをうたうことで来店しやすくし、実際に入ってみたら「本場のもつ鍋も食べられるんだ!」という驚きを加えました。もつ鍋の注文を、1人前から可能にしたのも受けましたね。

店のファンを作ることが重要なローカルエリアだからこそ、そこで働く“人”が大切だと考えています。そのため、弊社では「Q(クオリティ)、S(サービス)、C(クレンリネス)、A(アトモスファー=雰囲気)」に、「H(ヒューマン=人材)」も経営指針に加えています。

――会社として、理念浸透のために取り組んでいることはありますか?

弊社は串焼きや和食、もつ鍋やバルなど、異なるコンセプトを持つ、多様な業態の店を運営しています。その中でそれぞれの店舗が業績を上げられているのは、スタッフ全員に企業理念を落とし込んでいるからだと思います。そして、各店舗は企業理念のほかに、それぞれ「ストア理念」を持っています。実は、これが最大の強みです。新しい店がオープンする際には、どういう人をターゲットに、どういう店にしていくのかなど、ストア理念が書かれた事業計画書を店長が作成します。また、店ごとの決まりごとにしても、スタッフが、自分たちで話し合って決めています。

例えば、「きれいに掃除する」といっても、「きれい」の基準は人によって違いますよね。ですから、「ステンレスは人の顔が見えるくらいに磨く」とか、「床は裸足で歩けるように掃除する」など、できるだけ具体的に明文化するようにしています。そして、週に一度の幹部会、月に一度の店長会議や全体会議を通して、各店舗の現状や戦略を会社全体で共有しています。さらに、パートナー(アルバイト)教育にも力を入れており、定期的に接客のトレーニングやマナー講習などを行い、常により強い組織作りを目指しています。

年一回、従業員の家族が招待される「家族会」には、居酒屋(夜主体)という労務の共通の悩みである「子育て」について交流を図る目的も

――今後の会社のビジョンについて、具体的な目標をお聞かせください。

CKのある熊谷を中心にして、JR高崎線沿線、埼玉のローカルの駅前で居酒屋をチェーン展開したいと考えています。また、ロードサイドでラーメン業態も展開したいですね。今いる仲間とはずっと一緒に働きたいですし、そのために、会社として終身雇用も実現させたいと思っています。夜主体の居酒屋業態だけでなく、昼がメインの業態を展開することで、それぞれのライフスタイルにあった働き方ができるように、選択肢を増やしたいという思いもあります。

さらに、海外への展開としてオーストラリア・ケアンズへの出店を目指し、プロジェクトを進めています。これは、独立する時から決めていた夢。ケアンズは人がみんな陽気で、最高に楽しい場所。従業員には仕事だけでなく、「楽しむこと」も提供したいですし、そういう会社でこそ、誇りを持って輝いて働けると思うのです。オープンは自分が40歳になる2年以内が目標です。

居酒屋は「人と人が交流する場」。店を盛り上げ、わいわい賑やかに、楽しいひとときをお客様に過ごしていただく。こんなに楽しい仕事はないと思います。そんな「居酒屋の良さ」を、世界に発信していきたいですね。

漁火飯場 いろはのゐ(埼玉・深谷)
http://r.gnavi.co.jp/gb27900/
JR深谷駅前から徒歩1分に立地。2名から150名まで対応できる個室、送迎バスまで備える。契約農家・漁港から直送される鮮度抜群の食材が売り。
博多もつ鍋・串焼き だるま山 熊谷店(埼玉・熊谷)
http://r.gnavi.co.jp/gb27901/
串焼きはもちろん、本場九州から味噌や醤油を取り寄せて作るもつ鍋や水炊きが人気。店内には提灯が掲げられ、祭を感じさせる賑やかな雰囲気。

Company Data

会社名
有限会社サンカンパニー

所在地
埼玉県深谷市西島町2丁目1-3

Company History

2002年 1号店「楽食空間 山(さん)」オープン
2007年 セントラルキッチンを設立
2008年 「博多もつ鍋・串焼きだるま山 熊谷店」オープン
2009年 「三好屋商店 酒場」オープン
2011年 「漁火飯場 いろはのゐ」
     「博多うまいもん だるま山 本庄店」オープン
2012年 「深谷路地裏酒場 北海」オープン
     「深谷バル はまぐりや」オープン
     現在、計6店舗を運営

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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