2013/12/17 挑戦者たち

株式会社ヴィクセス 代表取締役 中元 孝太氏

東京と新潟でイタリアンを中心に13店を展開。2010年に25歳で独立して以来、破竹の勢いで事業を拡大し続けている。店長経験ゼロ、自己資金ゼロからの成功の裏には、人を大切にする経営哲学があった。

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業界の常識に縛られず理想を追求。常に“他人本位”でサービスを提供したい

東京と新潟でイタリアンを中心に飲食店13店を展開する、株式会社ヴィクセスの中元孝太氏。2010年に25歳で独立して以来、破竹の勢いで事業を拡大し続けている、業界でも注目の若手経営者だ。店長経験ゼロ、自己資金ゼロからの鮮やかな成功の裏には、"人"を大切にする経営哲学があった。

――独立した時点で、飲食店の現場での経験は少なかったと聞きました。

20歳で入社した店舗流通ネット株式会社は、飲食店の出店から退店までを幅広くサポートする会社でした。そこで営業マンとして働くなかで、様々な飲食店経営者の方々とお会いし、「将来は自分も独立したい」という憧れが芽生えました。飲食に関心があったというよりは、成功も失敗も多くの事例を間近で見られたのが、たまたま飲食業界だったから、という感じですね。

その後、転職した株式会社エー・ピーカンパニーでは、店舗開発やエリアマネージャーを経験。そして、再び店舗流通ネットに戻った頃には、憧れが確かな目標に変わり、25歳での独立を決意しました。20代のうちに実績を上げた方が、業界内での注目も高まりますし、自身のモチベーションにもつながると考えたからです。

――目標どおり、25歳で独立されましたが、当初は困難もあったのでは?

飲食店の店長経験もなく、自己資金もほぼゼロからのスタートで、渋谷に物件を見つけた時点ではまだ業態も決まっていない状態。以前から何かと目をかけてくださっていた、株式会社エムグラントフードサービスの井戸(実)さんにも相談に乗っていただき、同社のイタリアン業態「CONA」のライセンス店として1号店をオープンしました。開店資金の1000万円は、個人ファンドで調達。1年後に一括返済することが借り入れの条件だったので、プレッシャーになったと同時に、原動力にもなりましたね。半年は試行錯誤の状態が続き、ようやく経営がうまく回り始めたのは、信頼できる仲間の社員4名が加わってから。この経験が、“人”が一番の価値であるという、現在の経営理念につながっています。

振り返ってみると、現場での経験の少なさ、特に調理経験がないことは、逆によかったと感じています。料理についてはキッチンスタッフに一任し、自分は店全体を動かすことに専念しようと割り切れた。業界の常識もあまり知らなかったので、「誰もやらないことをやろう」と発想も自由でいられる。加えて、若いことのメリットもありました。挑戦する姿勢を金融機関や大家さんから応援してもらったり、先輩の経営者の方々からも、折に触れて様々な助言をいただける。30代での独立では、なかなかこうはいかなかったと思いますね。

1984年、東京都狛江市出身。専門学校卒業後、20歳で店舗流通ネット株式会社に就職。23歳の時に株式会社エー・ピーカンパニーに移り、その後、再び店舗流通ネット株式会社に勤めた後、25歳で独立。現在、東京都内と新潟県長岡市内に飲食店13店舗を展開。

――3店舗目で、初のオリジナル業態となる店舗を出店されましたね。

井戸さんに頼っていては、同業者に、そして、誰より井戸さんに認めてもらえないと思ったのです。1号店のオープンからちょうど1年後に、3店舗目のイタリアンバル「HOME」を出身地の東京・狛江にオープン。その後、イタリアンを中心に居酒屋やラーメンなどの業態にもチャレンジしながら、2012年に4店、2013年に6店を出店し、現在13店舗を運営しています。そのうち3店を新潟県長岡市に構えたのは、小学生時代の一時期を過ごした土地への恩返しの思いから。よく「地方には競争相手もいないが人もいない」と言われますが、フタを開けてみれば、これまで長岡にはなかった店ということもあって、連日盛況です。地方にも潜在的な可能性はまだまだあると、私自身が再確認しました。

業態やエリアを分散させることは、自然災害などの不測の事態が起きた際のリスク軽減でもあります。また、多業態を手がけることで、スタッフの能力や持ち味を発揮する道を広げることができる。実際に、「蔵出し味噌 麺場中山魂」のオープンに際しては、「ラーメン店をやりたい」と真っ先に手を挙げた社員に、店長を任せました。

――多業態で成功を収めていますが、店づくりで大切にしていることは?

お客様にインパクトを与えるための“フック”を大切にしています。「グラスワイン時間無制限飲み放題」や「ワンコイン(500円)ピザ」などがその一例で、そういったわかりやすい仕かけがあると、口コミで情報が広がりやすい。それをきっかけにまずは足を運んでいただき、来店してからは、スタッフの人間力やサービスでお客様の心をつかみたいと考えています。

スタッフに常に伝えているのは、「他人本位」の意識を持つこと。お客様を含め、関わるすべての人の気持ちを考えて行動や発言をするという意味で、会社の理念としても掲げています。一方で、「他人本位」から逸脱しない限りは、スタッフは自己の考えで主体的に行動すべきというのが私のスタンス。だから、当社にはマニュアルも研修制度もありません。代わりに、スタッフの交流イベントを定期的に開催したり、社内でSNSを活用したりと、スタッフ同士のコミュニケーションを密に保つことを心がけています。お客様の満足度はもちろんですが、「働くことが楽しい」という満足感が、おのずと売上向上にもつながると考えています。

――2012年には美容業界へも進出。現在2店舗を展開中ですね。

きっかけは、私自身が客として美容室の仕組みに疑問を感じていたことでした。どうしてこんなに料金が高いのか、なぜその割に美容師の給料は安いのか。美容業界に縁もゆかりもない立場だからこそ、常識に捉われない新しいことができるのではないかと考え、2012年7月に1店舗目の美容室を東京・調布にオープンしました。「カット1999円」をはじめ、様々な独自のサービスを打ち出し、飲食店と同様にこちらも来店客の口コミに支えられ、売上も伸びています。

「常識を覆すサービスを提供したい」という点で、私にとって飲食も美容もフィールドは同じ。先入観を排除し、「自分が客ならこんなサービスがほしい」という目線で物事を考えられるのが私の強みです。仮に飲食や美容についての知識や現場経験が豊富だったら、今のスピードでビジネスを拡大することはできなかったかもしれません。

社員の平均年齢は24歳と、会社全体が若いエネルギーに満ちている。定期的な社内イベントを通じてコミュニケーションを図る

――店舗展開や会社経営における、今後の目標を教えてください。

次の段階としては、結婚式や二次会などにも対応できる大箱のレストランを出店したいですね。また、旅館業にも興味があります。将来的には、リゾート施設の運営なども手がけたいと考えています。根底にあるのは、サービス業界のあらゆる固定観念を覆すという大きな夢。サービスを共通軸に、ビジネスをスケールアップさせながら、夢の実現を目指していきます。

独立した当初は、「30歳までに○店舗出店」といった数字を目標に置いていたこともありましたが、次第にもっと仲間を増やしたい、人間力を備えた会社にしたい、という方向へと経営者としての目標がシフトしてきました。飲食の現場においては、モノを作る・売る・渡すのはすべて人の手。会社も同様で、突き詰めれば“人”に行き着くのだと思います。社員一人ひとりが「独立するより、ここでみんなと夢を叶えたい!」と思えるような、そんな働き甲斐のある会社をつくっていきたいですね。

田町ワインライブラリー ESOLA(東京・田町)
http://r.gnavi.co.jp/5r5mm77b0000/
50種類以上のワインと日本酒が、1,990円で時間無制限飲み放題。野菜とフルーツのビュッフェ食べ放題(500円)も女性を中心に人気が高い。
吉祥寺 PIZZA&WINE ESOLA(東京・吉祥寺)
http://r.gnavi.co.jp/6sg3647k0000/
2013年11月にオープン。50種類のワイン飲み放題(1,990円時間無制限)に加え、生地から手作りの自家製窯焼きピザが1枚500円で楽しめる。

Company Data

会社名
株式会社ヴィクセス

所在地
東京都渋谷区円山町15-4 近藤ビル4F

Company History

2010年 「Ue CONA 渋谷道玄坂離れ」オープン
2011年 「Ue CONA田町店」オープン。「HOME」を狛江にオープン
2012年 「HOME 笹塚」「上原ワインライブラリー ESOLA」など、4店舗をオープン。美容室1号店を調布にオープン
2013年 「長岡PIZZA&WINE ESOLA」など、5店舗をオープン。現在、飲食店13店、美容室2店を運営

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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