2015/03/31 挑戦者たち

株式会社 カスタマーズディライト 代表取締役 中村 隆介 氏

ノウハウも経験もないまま飲食業界に参入。現在は、国内に54店舗を展開、アジア圏にも進出し、年内にはヨーロッパ出店も予定。中村氏の独自の展開手法と哲学に、新しい経営者像が垣間見える。

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自分が行きたくなる店を作りたい。そして、日本一の飲食企業を目指します!

24歳で建設会社の経営者となるが、将来を考えてノウハウも経験もないまま飲食業界に参入。持ち前の向上心と人を見抜く力で、よき協力者を得て店舗を拡大してきた。現在は、国内に54店舗を展開、アジア圏にも進出し、年内にはヨーロッパ出店も予定。その独自の展開手法と哲学に、新しい経営者像が垣間見える。

――建設会社の経営者から、飲食業界に参入した経緯を教えてください。

飲食業に将来性を感じたからです。実は中学生の頃からやんちゃだったため、高校には進学せず、建設会社で働き始めました。24歳で現場責任者を任され、その後、縁あって別の建設会社を譲り受けて独立。経営者になりました。その会社を十分に利益が出るようにしたのですが、下請けはどこまでいっても下請け。そんな建設業界で、会社を大きくしていくモチベーションを失っていました。同時に、自分の力で未来を切り拓ける新しい事業を考えるようになりました。それが飲食業だったのは、私自身、気に入った飲食店が少なく、自分が行きたくなる店を作りたいと思ったからです。

――飲食店の経験がまったくないなかで、大胆な挑戦でしたね。

ノウハウも経験もなかったので、最初はFCで出店しようと考え、様々なFCチェーンの本部を訪ね、話を聞きました。しかし、コックレスでできる業態は、出店や運営は簡単でも十分なノウハウを蓄積できず、将来につながりません。そんなときに、当時、「沖縄ダイニング ちゅらり」のFC本部だった企業の会長と知り合ったのです。私と似たような経歴で飲食業界に入った方で、応援したいと言ってくれました。また、「ちゅらり」の料理のほとんどが、店内で手作りなのも気に入って、FC加盟を決断。1号店は本部が探してくれたなかから、埼玉・JR大宮駅前の物件を選びました。

資金は、飲食業への参入を決めてからある程度貯めていましたし、飲食業が軌道に乗るまで、私自身は建設業に軸足を置き、その収益を飲食業につぎ込もうという考えでした。

スタッフは、社内で私の片腕だった人物を飲食部門の責任者に置き、そのほか、社員のなかで調理師免許を持っている人間と、接客業の経験がある人間にFC本部の研修を受けてもらい、2008年にオープン。そんな感じでスタートした1号店でしたが、想像以上に売上は順調でしたね。毎日の営業のなかで徐々に人も育ったので、翌年には2号店を出すことができました。

1980年、東京都三鷹市で生まれ、足立区で育つ。中学卒業後、地元の建設会社に就職。若くして現場監督を任されるが、24歳で独立し、建設会社の経営者に。2008年に飲食業に参入。現在は建設会社、内装会社、分社化した飲食企業などグループ6社を束ねる。

――3店舗目は自社ブランドで、ホルモン焼の店を出店されたそうですね。

知人に出店を打診されたのがきっかけでした。物件を見ていけそうだと判断し、すぐに決断。東京・板橋に出店したこのホルモン焼店は好調だったのですが、次に出した同業態の4店舗目で初めて手痛い失敗をしました。同じ知人が紹介してくれた高田馬場の物件で、エリアや競合店などの調査を十分にしないで出店したことが原因です。それまでの3店舗が好調で、慢心もあったのでしょう。このとき、現場はやはり自分でしっかり見なくてはいけないなと、痛感しました。

――その後、経営譲渡や居抜き物件を活用して出店を加速していきます。

ある方から、ブランドを商標ごと売ったという話を聞き、そういう方法があることを知りました。ブランドを、経験が浅い我々が一から生み出すのは難しい。それなら出来上がったものを買うのもありだと考えたのです。

いいブランドがあったら買いたいと周囲に話していたところ、すぐに話がきました。これがステーキとハンバーグの「ステーキハウス 鉄板牧場」で、3店舗まとめて買いました。

その後、ある大手チェーンが撤退した物件でハンバーグの店を始めた方から、経営が思わしくないので居抜きで引き受けてもらえないかという話がきました。投資も少なくて済み、やり方次第でいけると判断。こちらもステーキとハンバーグの店で、店名は社員の長谷川さんの名前から取って、「肉のはせ川」と名付けました。

さらに、その大手チェーンが全国で10店舗余りの撤退を予定していて、その物件も居抜きで譲りたいという話もきました。関東以外の地域の物件も多く、低投資で出店エリアを広げられるチャンスにもなると考え、「肉のはせ川」での出店を決めました。

現在、展開するやきとんの「筑前屋」も、もともと縁があってFCの権利を含めて譲渡されたものです。

――節目、節目でいい出会いがあったのですね。その後の海外進出は?

海外進出を視野に入れ、視察を兼ねて何回か遊びに行ったフィリピンのセブ島で、知り合いになった現地在住の日本人から、経営する日本レストランを買ってほしいと言われました、調査してみると、数字は悪いが立て直せる余地はある。ただ、現地での管理者が必要です。そこで、以前に知り合った現地ガイドで、信頼できるフィリピン人の女性に頼んだところ、快諾してくれました。すぐに、日本から会社のナンバー2を派遣し、現在はセブ島で2店舗を展開しています。

その後、タイにも2店舗を出店。今年は新たに、シンガポールとドイツへの出店も予定しています。

――昨年には、カオマンガイ専門店「ガイトーン」を出店しました。

「ガイトーン」は、タイで人気のカオマンガイ(※ご飯の上に蒸し鶏が乗った料理)専門の屋台で、ぜひ日本で展開したいと思い、通訳を同行して現地に交渉に行きました。最初は怪しんでいましたが、話をするうちに真剣さをくみ取ってくれ、日本でのライセンスを得ることができたのです。これまでもたくさんの会社からあった申し出を断ってきたのに、当社に許可を出してくれたのは、やはり責任者である私自身が直接、現地に行ったことが大きかったと思います。昨年、東京の渋谷と福岡の天神にオープンしましたが非常に好調で、今後も大都市を基本に、直営で展開していく予定です。

――店舗が拡大するなかで、どのように人材を育成していますか?

当社は、スタッフも会社の成長の一翼を担っていることにやりがいを感じてくれています。だから、地方への出店時も喜んで行ってくれる。私もある程度ベースを作った後は口出しせず、店長に任せています。方向性さえブレなければ、各店舗に独自性があっていいという考えで、任せれば応えてくれる。人材教育に関しても同様で、教育というより、「仲間作り」が店長の大事な仕事だと考えています。

沖縄への社員旅行での一コマ。常に新しいことにチャレンジする中村氏の夢、そして今後の会社の成長を、スタッフが支えている

――御社の今後のビジョンと、展望をお聞かせください。

国内は100店舗体制を目指しており、当面は3年以内が目標です。新業態を作って子会社化し、独立の意志がある社員に渡していきたい。また、本社を移転する予定なのですが、そこには24時間体制の託児所を作り、子供のいる女性も活躍できるようにしたいですね。海外へは、社員のモチベーションも高まるので積極的に出店していくつもりです。そして、最終的に目指すのは、日本一の飲食企業です。

ガイトーン TOKYO(東京・渋谷)
http://r.gnavi.co.jp/24tucsve0000/
タイ・バンコクの人気屋台「ガイトーン」のカオマンガイを再現。厳選した鶏肉をていねいにゆであげ、オリジナルソースをからめたエスニックな味が人気。
沖縄ダイニング ちゅらり 新宿大ガード店(東京・新宿)
http://r.gnavi.co.jp/a359101/
新宿駅西口に立地。沖縄の雰囲気を満喫できる店内で、手作りの沖縄料理や泡盛が味わえる。掘りごたつ席、座敷席など多彩な個室空間も魅力。

Company Data

会社名
株式会社 カスタマーズディライト

所在地
東京都江東区住吉2-8-11 あいおいニッセイ同和損保ビル4F

Company History

2008年 「沖縄ダイニングちゅらり 大宮店」オープン
2009年 建設業と飲食事業を分社化。「沖縄ダイニングちゅらり 千葉店」オープン
2013年 「筑前屋 バンコク店」オープン
2014年 「ガイトーン TOKYO」「ガイトーン FUKUOKA」オープン
2015年 シンガポール、ドイツに出店予定。現在、国内で直営店舗37店、FC店舗15店、海外に5店舗を展開

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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