株式会社 K.A.M rich foods 代表取締役社長 平野 健太 氏 - 挑戦者たち -

2018/07/31

「仕入れに真面目」を真摯に貫き、
北海道食材の魅力を発信したい

株式会社 K.A.M rich foods 代表取締役社長 平野 健太

炭焼きイタリアン酒場「炭リッチ」をはじめ、北海道や関東でFC 含め30店舗を展開する株式会社 K.A.M rich foods の平野健太氏。今年3月には北海道宗谷地域の活性化を目指した包括連携協定を地元町村会と結び、大きな話題に。異例ともいえる官民一体の取り組みや急成長の舞台裏など、これまでの歩みをひも解く。

――今年3月に締結した宗谷町村会との包括連携協定が話題を集めていますね。

 北海道の北端、宗谷地区の9町村からなる宗谷町村会と、地域の魅力発信や、食の付加価値を高める取り組みなどを、協力して進める協定を結びました。宗谷町村会とのつながりは9町村の1つ、豊富町(とよとみちょう)の温泉を個人的によく訪れていた縁で、町村会の会長である工藤栄光・豊富町長と知り合ったのがきっかけです。

 それ以前から当社では、道内各地の生産者との関係作りを積極的に進めており、2年前からは道南の知内町(しりうちちょう)で指定管理者として、「かき小屋知内番屋」を運営してきました。それらの取り組みを知った工藤町長から、声をかけていただいたのです。

 オホーツク海を望む宗谷地区は全国でも屈指の海産物が豊富に獲れる地域。一方で人口減少による過疎化や、漁業以外の働き口の少なさ、特定の水産物に収入を頼る不安定さなど、様々な問題も抱えています。工藤町長をはじめ各町村の方々から現状を聞き、北海道の外食企業として目をそらしてはいけない問題と感じたことが、今回の協定締結へつながりました。

 今後、官民一体で取り組みを進める予定で、各町村と連携した商品開発などもすでに始まっています。まずは、当社が経営する全店舗で月間9万人にのぼる来店客の方々に、宗谷の各町村の名前を知っていただくことが、最初のステップだと考えています。

――さかのぼって、飲食の世界に興味を持った最初のきっかけは?

 子どもの頃、外食したときに味わった料理のおいしさや特別感に、心からワクワクしたのが原体験です。高校卒業後にホテルや居酒屋で料理人として働き、道内の外食企業に8年間勤務した後、自分の店を持とうと27歳で独立。当時は社長になりたいとか、事業を広げたいという気持ちはなく、妻と2人で小さな店をやっていくつもりでした。しかし、以前の仕事仲間が「一緒にやりたい」と集まり、もともとの計画より2倍広い物件を借り、2013年2月に「炭リッチ」の1号店を札幌市内にオープン。イタリアンを肩肘張らずリーズナブルに楽しめる業態は、当時の札幌では珍しく、「フォアグラステーキ串」など看板メニューのインパクトもあり、連日繁盛しました。

 以降も、かつての同僚らが次々と仲間に加わり、1つしかない店舗に社員が5~6人いる状態に。そこで、1号店出店の4カ月後に「炭リッチ」2号店を、さらに、その3カ月後には3号店をオープンしました。つまり、必要に迫られての店舗展開です。翌年も早いペースで出店を重ね、東京にも進出して2店舗を出し、和食業態も始めました。どの店も売上は好調で、働きたいという人も次々に集まりました。今思えばこの頃から、天狗になってしまっていたのでしょうね。3年目に10店舗を超えたあたりから、既存店の売上が急にガクッと落ちてしまったんです。

――順調に店舗数を増やすなかでどんな問題が起きていたのですか?

 “若いビジネス層が気軽にぜいたくを楽しめる店”が、「炭リッチ」のコンセプトなのですが、いつしか、ある店は繁華街の若者向け、ある店は郊外のファミリー向けと、同じブランドで中身が違う状況になっていました。その結果、メニューも接客もバラバラになり、マネジメントも難しい事態に。加えて、お客様から求められるレベルに料理のクオリティが追い付いていなかったことも、失速の要因でした。

 そのときに立ち返ったのが、自分たちはお客様を何によって喜ばせたいのか、という原点です。それは、良質な食材であり、それを活かした商品力。その部分をあらためて追求しようと決め、「仕入れに真面目」をコンセプトに掲げて再始動しました。社員たちと道内各地の産地を訪れ、食材を知り、生産者の技術や想いを理解したうえで、直送による仕入れルートを次々に開拓。知内町の指定管理者の話をいただいたのも、その過程でのことです。こうした様々な取り組みを経て、産地直送の食材を活かしたメニューを開発し、他店との差別化を図れるようになり、売上が回復していきました。

 もう1つ、「餅は餅屋」の考えから、アウトソーシングを活用するようになったのも、それ以前との違いです。出店エリア開発やFC戦略、広報、接客力向上など、それぞれの分野で外部のプロの力を積極的に借りています。

――年内に直営・FCを含め40店まで拡大予定だそうですが、成功の秘訣は?

 正直なところ、その時々で試練や課題に直面し、今も悩みは尽きません。ただ、強いて秘訣を挙げるなら、「仕入にまじめ」を軸として持ち続けていることでしょうか。そこが揺らいで安さにひかれて食材を選んだりすると、結果はたいてい失敗に終わります。迷ったときや悩んだとき、常に立ち返る基本として「仕入れに真面目」があり、この先も指針になると思います。

 2016年から関東でFC展開を積極的に進めていることも、北海道食材の魅力をより強力に発信するのに役立っています。というのも、関東のFCオーナーの方々は、我々が気付かない北海道の食材の価値や、効果的なアピール方法を理解しているケースが多いからです。そのため、「炭リッチ」のFCオーナーは、自身が経営する他店でも北海道産食材を仕入れ、活用できるようにしています。

 直営・FCを含め、北海道の食材を使った魅力あるメニューで外食の楽しさを伝え、食材の付加価値を少しでも上げることができれば、生産者、店、お客様のすべてにとってプラスになる。挑戦しがいがありますね。

――課題や今後の展開について教えてください。

 生産者の方々と真摯に向き合い、真面目に仕入れた食材の価値や魅力を、いかにお客様に伝えられるかが課題です。メニューブックで食材や生産者について紹介はしていますが、完全には伝えきれていません。今後、ITツールの活用やスタッフ教育の強化などで、その点を解消していくことが目標です。宗谷町村など産地との連携を活かし、お客様のニーズに応えるメニューや商品作りにもさらに力を入れていきます。PB商品第1弾「牡蠣の塩辛」は、すでに定食屋「北海堂」の各店でメニューとして提供しています。

 創業から6年目の現在、社員アルバイト含め500名近くに増えました。彼らの活躍の場を広げるためにも、今後は事業ごとに子会社化を進め、社員が各社のトップを目指せる組織にしていきます。また、地域活性化や食材生産に関わりたいなど、各自の興味や関心に沿った挑戦の機会を提供できることも、当社の強みです。さらに、FCの加盟募集も積極的に行っていきます。

 将来的には、さらに深く行政と手を組んで、地方のレジャー施設を「食」で再生することにも取り組みたいですね。レジャー施設での食事は、幼少期に体験する大事な外食。私自身が子どもの頃、外食に感じたワクワクを、次世代の子どもたちにも感じてもらえるよう、貢献したいと思っています。

平野 健太 氏
平野 健太 氏
炭焼きイタリアン酒場 炭リッチ 総本店(北海道・札幌)
炭焼きイタリアン酒場 炭リッチ 総本店(北海道・札幌)
https://r.gnavi.co.jp/jsjcbw9r0000/
主力業態「炭リッチ」の総本店。北海道産を中心に厳選食材の炭火焼をリーズナブルに楽しめる。「フォアグラステーキ串」が名物。
 
北海堂 新橋店(東京・新橋)
北海堂 新橋店(東京・新橋)
https://r.gnavi.co.jp/mfdpw82c0000/
今年6月にオープンした、北海道食材を97%使用する定食屋。産地直送の鮮魚や道産米のおいしさを、多種類の定食で堪能できる。
宗谷町村会と包括連携協定を結んだ平野氏。今後は食を通して、地域の課題解決と発展にも貢献していく
宗谷町村会と包括連携協定を結んだ平野氏。今後は食を通して、地域の課題解決と発展にも貢献していく
平野 健太 氏
Profile
Kenta Hirano
1985年北海道釧路市生まれ。ホテルなどで調理に携わった後、札幌の大手居酒屋チェーンに設立時から入社。8年間で多数の店舗を立ち上げ、役員に就任。退職後の2012年に27歳で起業し、翌年1号店をオープン。現在、北海道や東京などで直営・FC 合わせて30店を展開する。
Company Data
会 社 名
株式会社 K.A.M rich foods(カムリッチフーズ)
所 在 地
北海道札幌市西区琴似1条7丁目1-35 さんぱちビル2F
Company History
2012年
株式会社 K.A.M rich foods設立
2013年
1号店「炭焼きイタリアン酒場 炭リッチ本店」オープン。同年に2、3号店をオープン
2014年
東京初出店の「北海道炭焼きイタリアン酒場 炭リッチ 大門店」など計4店舗オープン
2015年
FC1号店「北海道炭焼きイタリアン酒場 炭リッチ馬込店」など計8店舗オープン
2016年
「かき小屋知内番屋」の指定管理者として知内町と協定を結び、運営を開始
2018年
宗谷町村会と包括連携協定を締結

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