株式会社 アイランズ 代表取締役 塚原 和樹 氏 - 挑戦者たち -

2018/10/30

“飲食の常識”がないからこそ、
働きやすさを追求できる

株式会社 アイランズ 代表取締役 塚原 和樹

直火焼きステーキの「T8 Steak House」をはじめ、神奈川と東京で現在、3業態7店舗を展開する株式会社アイランズ・代表の塚原和樹氏。5年前にほぼ未経験で飲食店経営に乗り出し、業界の常識や慣例にとらわれない発想で合理的な店舗運営や労働環境の整備を実践する。異色の経歴を紐解きながら、勢いの秘密を探った。

――1号店をオープンするまで、飲食の経験はほぼゼロだったとか。

 祖父や両親が商売をしていたことから、いずれは自分も起業したいと10代の頃から漠然と思っていましたが、飲食の世界に入るとは想像もしていませんでした。格闘技に熱中した高校時代を経て、大学では何か自分の強みを手に入れようと1年休学してカナダへ。現地で語学や柔術を学んだり、スキー場でアルバイトをしたりと、充実した時間を過ごしました。

 帰国後の就職活動では起業の夢はいったん置いて、第2の夢だったグローバルな仕事を志望し、海外事業にも力を入れていた大手インテリアメーカーに就職。横浜の大型店舗に配属され、2年目には家具担当として個人売上全国1位を達成しました。それでもやはり組織の中に身を置くより、自分で人生を切り開きたいという想いが強くなり、2年目の途中で退職。貿易会社を立ち上げました。それまで海外を旅するなかで見つけた魅力的な品々を、日本に持ち込んで販売しようと考えたのです。スリランカで水揚げされたマグロを買い付ける事業や、高級紅茶の輸入販売などを手がけました。

 そんななか、貿易の仕事は昼なので、夜は別の事業をやろうと思い立ち、祖父が所有する倉庫を改装して飲食店を始めることに。家賃が安く、保証金が不要、初期投資は工事費だけなのでリスクは低い。こうして2013年、川崎・矢向にステーキ業態「カリフォルニアラウンジ Grill&Bar 矢向店」を出店。妻とカナダで出会った仲間、3人でのスタートでした。

――飲食業未経験で開業するに当たり、ステーキ業態を選んだ理由は?

 海外を旅して感動したのが、アメリカで食べた本場のステーキでした。分厚く巨大な肉が皿で提供され、肉そのものの旨みを楽しめる。日本でよくある鉄板の“ジュージュー”ステーキとは別物で、この味を再現したいと思いました。知人から肉の火入れを教わり、自分でも焼き方を徹底的に研究しました。もう1つ打ち出したのは、店名にもある「ラウンジ」です。まるで空港やホテルのラウンジのようにくつろげる場所が家の近くにあれば、地元の人に重宝されると考えました。

 この読みが当たり、オープン直後から集客は順調でした。しかし、なかなか利益が出ない状況が続きました。なにしろ飲食の経験がなく、当時は適切な席数や効率的なオペレーションもわからない状態。店を運営しながら、軌道修正するしかなく、貿易業からは手を引いて飲食業に専念し、試行錯誤を続けました。突破口になったのは、コースと飲み放題を始めたことで、これで調理を効率化でき、客単価もアップ。ビジネスモデルを確立できた手応えを得て、2015年、「カリフォルニアラウンジ」2号店を川崎駅近くに出店。翌年以降、「T8 Steak House」、ステーキ丼専門店「Beef Bank」と、業態も増やしてきました。

――同じステーキのジャンルの中で業態を変えていったのはなぜですか?

 「T8 Steak House」は、「カリフォルニアラウンジ」を2店舗運営するなかで、「改良したい」と感じた要素を反映させた業態です。何料理の店かが明確に伝わり、カリフォルニアのイメージに縛られない店名もその1つ。また、グランドメニューのドリンク約70種をすべて飲み放題の対象にしました。さらに、アメリカのステーキハウスにならって、新鮮なシーフードも名物として打ち出しています。

 一方、「Beef Bank」は、川崎駅前の一等地に4.5坪の物件が出たことから、物件ありきで開発。器1つで提供できる丼なら全6席の空間にも適していると考え、ステーキ丼に決めました。低価格を実現するため、クオリティを維持しつつ、効率的に大量調理できる低温調理法を導入。原価率45% の圧倒的なコストパフォーマンスと、ご飯を覆い隠すインパクトが受け、3カ月目には坪月商が100万円を超えるまでに。そして、今年7月には渋谷の明治通りにも「Beef Bank」をオープンしました。

 現在は3業態で7店舗。今後も出店を続け、3年後の2021年に年商10億円を目標に据えています。ただ、店舗数にこだわるのではなく、任せられる人材が育ったタイミングで、物件や業態の相性も見極めて出店していく方針です。エリアについても、拠点のある川崎を中心として、社員が通勤しやすい場所を基本に考えています。

――順調に店舗数を増やしている今、力を入れていきたいことは?

 すでに取り組んでいる労働環境の整備を、さらに進めていきます。これまでの月8休・1日8時間労働を、来期(11月)からは、給与水準を維持したまま、1日7.5時間にする予定です。自由な働き方も推進していて、休みを貯め、長期休暇を取ることも可能。ただし、自分が抜ける間、周囲にどう補ってもらうかは、各自で考えてもらいます。そうした時に協力を得られるかどうかは、日頃の仕事ぶりや人望によるわけで、それも含めて実力だと思うからです。

 海外研修にも力を入れていて、直近2年でもニューヨークやロサンゼルス、ドバイなどを訪れました。参加者は社員からの推薦で選ばれた数名。彼らが見たいもの、学びたいものがあれば世界中どこへでも連れて行きます。現在、社員数は19名で、ここ5年の離職率は0%。アルバイトから正社員を志望するスタッフも多く、働きやすさを実感してくれている手応えがあります。

――異色の経歴ですが、自身の強みは何だと思いますか。

 飲食業界の常識を知らないままこの世界に入ったことが、むしろ強みだと思っています。だからこそ、労働環境の整備や自由な働き方の実現に自然に取り組めます。飲食業界に多い低賃金・長時間労働を、仕方のないことだとか、ある種の美学ととらえる考えは、飲食未経験の私にはありません。会社に関わるすべての人をハッピーにしたいし、従業員にはアイランズで働いていることを心から誇りに思ってほしい。飲食業を志す人が増えるように、給与を上げ、休みを増やし、至難の業ですが、労働時間を短くするなど、労働環境を整えていくことが、私にとって最大の挑戦だと考えています。

 もう1つの強みは行動力が人一倍あること。何ごとも自ら動くことで、これまでも道を切り開いてきました。難しい選択を迫られたときの判断基準は、「どっちがカッコいい人生か」。出店する・しないで迷ったときも、した方がカッコいいなら出店します。単純なようですが、挑戦を続ける原動力にもなる大切な心構えだと思っています。

 飲食業は、料理を作って売るだけでなく、マーケティングや企画、集客なども含めた総合力が試される仕事。しかも、出店のたびに条件は異なり、そこに難しさとおもしろさを感じます。何より、お客様の反応が目の前でダイレクトに返ってくる。かつて貿易の仕事では味わえなかったビジネスのリアルな実感を日々得られることに、飲食業の大きな醍醐味を見出しています。

塚原 和樹 氏
塚原 和樹 氏
T8 Steak House 恵比寿(東京・恵比寿)
T8 Steak House 恵比寿(東京・恵比寿)
https://r.gnavi.co.jp/r2ywsepe0000/
NYのステーキハウスを思わせるモダンな空間で、ステーキとシーフードを楽しめる。直火で焼き上げるステーキの盛り合わせが名物。
 
T8 Steak House 武蔵小杉(東京・武蔵小杉)
T8 Steak House 武蔵小杉(東京・武蔵小杉)
https://r.gnavi.co.jp/18srbm9n0000/
駅からすぐの商店街に2017年11月オープン。ステーキとシーフードに加えて、クラフトビールなど約70 種の飲み放題も好評。
アルバイトを含め従業員は約100名。ワークライフバランスを実現できる環境が離職率の低さにつながっている
アルバイトを含め従業員は約100名。ワークライフバランスを実現できる環境が離職率の低さにつながっている
塚原 和樹 氏
Profile
Kazuki Tsukahara
1987年、神奈川県出身。大学時代、ワーキングホリデーを利用して1年間カナダで生活するほか、卒業までに世界200都市を回る。大手インテリアメーカー勤務を経て、貿易会社を設立。その後、飲食事業に参入し、2013年8月、「カリフォルニアラウンジ Grill & Bar 矢向店」をオープン。
Company Data
会 社 名
株式会社 アイランズ
所 在 地
神奈川県川崎市幸区塚越4-333
Company History
2012年
株式会社アイランズ設立
2013年
飲食事業に参入し、「カリフォルニアラウンジ Grill&Bar 矢向店」オープン
2015年
「カリフォルニアラウンジ 川崎店」オープン
2016年
「T8 Steak House 恵比寿」オープン
2017年
「Beef Bank 川崎」オープン。11月に「T8 Steak House 川崎」「T8 Steak House 武蔵小杉」を同日オープン
2018年
「Beef Bank 渋谷」オープン

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