2011/08/23 挑戦者たち

ユナイテッド&コレクティブ株式会社 坂井 英也氏

新しい外食チェーンの構築で、外食産業に輝きを取りもどす。「外食一新」を掲げ、居酒屋のほか、低価格のとんかつ業態を展開しているユナイテッド&コレクティブ株式会社。2000年の設立以来、同社を率いてきた代表取締役の坂井英也氏は、「外食産業がピカピカに輝いていた時代を取りもどす」と語り、新しい外食チェーンの構築に心血を注ぐ。

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新しい外食チェーンの構築で、外食産業に輝きを取りもどす

「外食一新」を掲げ、居酒屋のほか、低価格のとんかつ業態を展開しているユナイテッド&コレクティブ株式会社。2000年の設立以来、同社を率いてきた代表取締役の坂井英也氏は、「外食産業がピカピカに輝いていた時代を取りもどす」と語り、新しい外食チェーンの構築に心血を注ぐ。中食からの市場の奪還をも意識した、同社の戦略について伺った。

坂井 英也 氏「秘伝のにんにくダレ焼き鳥塩つくね博多水炊きてけてけ三軒茶屋店」にて

――外食一新を掲げ、人気店を展開しています。〝一新〝の意図するところを教えてください。

大学時代、様々な飲食店でのアルバイトを通して、たいへん多くのことを学び、人間として育ててもらったとさえ思っています。当時の外食産業は今よりずっと輝いていました。飲食店には活気があり、そこで働く人には「おいしいものを食べて喜んでもらいたい」という強い想いがありました。お客様もまた、外食をすることに大きな歓びを見出していたと思います。

しかし、今はどうでしょう。中食に客を奪われ、外食市場は縮小しています。「ハレの日」に外食をする習慣も、居酒屋を利用する若者も減っています。さらに、外食チェーンの多くは、〝普通のレベルの料理を極端に安く提供する〝ことにとらわれ、外食の価値を危うくしているようにも思えます。食べ物の乏しい時代ならともかく、今のような飽食の時代に、飲食店が普通のレベルの料理にとどまっていたら存在価値がなくなるのは当然です。

このままでは中食に奪われた市場を取りもどすこともできませんし、外食不況を打破することなど、到底できないと思います。

私たちは、中食に対抗できる外食の強みや、外食が持つ固有の価値をしっかり認識し、業態として構築して、さらに今までとは違う新しい外食チェーンを展開することで、外食産業にかつてのような輝きをもう一度、取りもどしたいのです。

――輝きを取りもどすカギは、どんなところにあるとお考えでしょうか。

最も大切なのは、「普通の味」ではなく、本当においしいものを提供することだと思います。外食が中食と違うのは、専門の教育を受けた料理人、あるいは経験を積んだ職人が、今この場で作り上げた料理をすぐに食べられること。ですから、普通ではなく特別においしくなければ、外食の意味はありません。同時に、これからますます重要になってくるのが、そのおいしい料理をアフォーダブルプライス(誰もが背伸びしないで気軽に買える価格)で提供できるようにすることです。

私たちは「毎日をごちそうに」というフレーズで表現しているのですが、本当においしいプロの料理を、清潔で心地よい空間やサービスとともに、アフォーダブルプライスで提供できて初めて、お客様に毎日「ごちそう」を用意することができるようになります。これができる店舗を継続的に作り上げられるか否かが、今後の外食一新のカギを握ると言っていいと思います。

――具体的にどのような業態として展開させ、今後を築いていくのでしょうか。

当社には大きく分けて4つの業態があります。このうち、外食一新のカギとなる業態は「てけてけ」と「坂井精肉店」です。「てけてけ」は2005年に東京・赤坂に1号店を出店し、「鶏・旬菜・お酒てけてけ」「秘伝のにんにくダレ焼き鶏 塩つくね博多水炊き てけてけ」を合わせて現在、都内に11店舗あります。「とんかつ 坂井精肉店」は2009年の1号店以来、「とんかつ ハンバーグ 坂井精肉店」と合わせ、すでに10店舗を出店しています。

どちらのブランドも、核となる商材を絞り込み、大量に仕入れることで原価を抑えることに成功しました。その上で、私たちは商材のクオリティについて、決して妥協しませんでした。

例えば、「てけてけ」のメイン商材は鶏もも肉ですが、岩手産のチルドにこだわり、安い中国産の冷凍鶏などは使いません。それは「胸を張って提供できる、本当のおいしさ」を譲ることができないからです。同様に「坂井精肉店」の豚肉はアメリカ産のチルドで、冷凍のカット肉は使いません。

しかも、焼き鳥1本99円、ロースかつ単品280円です。商品のクオリティを維持しながら、この価格で販売するためにはどうするか、どういう仕組みを構築するかという視点が大切です。多店舗展開のメリットを徹底して追求し、仲卸を極力廃した仕入れルートの確保などによって、仕入れ値は当初の半値まで抑えられるようになりました。

仕入れ以外にも、調理、オペレーションなどの仕組みを練り上げ、「坂井精肉店」ではとんかつを1度低温で揚げてホールデイングし、注文を受けたら高温で揚げて仕上げる「2度揚げ」を採用。その結果、熱々のおいしいとんかつを3分以内に提供することに成功しました。

大切なのは、利益の確保が最初にあり、その実現のために商材やオペレーションを決めていく旧来のやり方ではなく、まず高品質の商品と戦略的な価格を決め、企業側の努力で利益が出るシステムを発見していくことです。それでこそ、顧客の満足を引き出せる店が実現するのだと思います。

――中食から市場を奪還するということも、視野に入れているのですね。

中食と外食の決定的な違いは、店舗内調理です。コンビニエンスストアやスーパーマーケットの惣菜でも、店舗内調理に近づけているところはありますが、プロが最終調理をその場で行なう外食との差は歴然としています。

だから、外食が手掛けるテイクアウトは付加価値が大きいのです。私たちはイートインとともにテイクアウトにも力を入れており、外食のフィールドから中食市場に戦略的に参入し、外食と中食との相乗効果を狙っています。外食の価値を前面に押し出すなら、中食市場でも勝負ができるはずですし、勝てると考えています。

8月に「とんかつ 坂井精肉店」経堂店を、テイクアウトとイートインを2本柱とした店舗にリニューアルします。テイクアウトの主力をとんかつ、イートインの主力をハンバーグに設定し、双方のメリットを活かし、デメリットを補いながら、中食市場を強力に意識した店舗展開をするつもりです。現在、「てけてけ」での唐揚げなどのテイクアウトも非常に好調ですから、この展開は、今後の外食産業の新たな試みの先鞭となるのではないかと期待しているところです。

――外食への熱い想いと冷静な戦略を感じます。その原点と今後について伺います。

私の原点は、大学時代に友人の実家が経営する飲食店でホールのアルバイトをさせてもらったことです。そのとき、友人がまかないや新メニューをよく作ってくれたのですが、それが本当においしくて、お客様に胸を張って勧めることができました。「あなたに勧められた料理、本当においしかった。また来るね」なんて言われると、たまらなくうれしくて、このときの感動が私を外食産業に引き込んでくれました。

だから、今でも「胸を張って勧められる料理」かどうかが、業態やその展開を考えるときの要になっています。ここをはずした店舗運営はありえませんし、働く人も面白くありません。だからこそ常にブラッシュアップしています。

同時に、多店舗展開に必要なのは、人材、商材、オペレーションのどこかに困難が生じても、相互に支え合って乗り切れるような堅牢な仕組みをロジカルに築き上げることだと思います。起業から10年の間には、会社が危うくなることもありました。そんな経験から、情熱だけでなく、冷静な分析力や論理的な裏付けが必要だと痛感したのです。

パッションとロジカルシンキング――。今後もこの2つを持ち続けながら、アジア進出にも取り組んでいきたいと思っています。

秘伝のにんにくダレ焼き鳥 塩つくね 博多水炊き てけてけ 三軒茶屋店(東京・三軒茶屋)http://r.gnavi.co.jp/g735812/看板料理の「塩つくね」や「鶏の水炊き」などの鶏料理をリーズナブルな価格で楽しめる。1個30円の「鶏唐揚げ」のテイクアウトも人気
魚・旬菜とお酒 心 高田馬場
(東京・高田馬場)http://r.gnavi.co.jp/g735800/同社が最初に出店した「心」ブランドは、骨太感がキーワード。長崎・五島列島や北海道から届く鮮魚など、素材にこだわった料理と、それに合う本格焼酎、地酒を提供する。能登半島の伝統的な魚醤であるいしりを使った「いしりみぞれ鍋」や、「蔵王鶏のしゃぶしゃぶ」などの鍋料理、平日3時間の飲み放題も売り。
とんかつ 坂井精肉店 イオン八千代緑が丘 ショッピングセンター店
(千葉県・八千代市)http://r.gnavi.co.jp/5682620/「お客様、外食、そして日本を元気にするとんかつ屋」をコンセプトに2009年、ショッピングセンター内にオープン。低温・高温の2つの温度帯を使い分けて揚げる「2度揚げ」と、提供スピードにこだわり、「ロースかつ定食」490円、「ソースかつ丼」390円という、圧倒的なコストパフォーマンスを誇る。イートインだけでなく、近隣の主婦を中心にテイクアウトも好評。

Profile

さかい ひでや

1974年

福岡県生まれ

1998年

法政大学文学部哲学科卒業。
大手自動車メーカーに入社。その後、同社を退社し、さまざまなタイプの居酒屋で働きながら多店舗経営のノウハウを学ぶ

2000年

ユナイテッド&コレクティブ有限会社設立
東京・高田馬場に「魚・旬菜とお酒心」を開店

2002年

資本金を1,000万円に増資するとともに株式会社へ組織変更。現在までに24店舗の出店を果たす

Company Data

会 社 名

ユナイテッド&コレクティブ株式会社

所 在 地

東京都港区赤坂2-17-22
赤坂ツインタワー東館13F

店 舗 名

「魚・旬菜とお酒 心 高田馬場」「鶏・旬菜・お酒 てけてけ 赤坂」「オレのざっくり料理とガブ飲みワイン俊二」「秘伝のにんにくダレ焼き鶏 塩つくね 博多水炊き てけてけ 町田店」「とんかつ坂井精肉店 イオン八千代緑が丘店」ほか

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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