2014/10/16 繁盛の法則

ピッツァを前面に出して勝負する地元密着型の専門店とは

ナポリの味を再現する「ピッツェリア GG 鎌倉」(神奈川・鎌倉) に学ぶ-「ナポリの修業先で教わってきたピッツァを提供したい」というピッツァ専門店。月商800~1000万円を上げる繁盛店となっている。

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ピッツェリア GG 鎌倉

鎌倉駅から由比ガ浜の海岸方面に徒歩7~8分の場所にある、前面がガラス張りになった開放的な店舗

Key Point

  1. 本場ナポリでの修業経験者が集結
  2. ピッツァに特化した商品構成
  3. 約30品目の豊富なピッツァを提供

「職人になりたい」という想いからピッツァに着目

「ナポリの修業先で教わってきたピッツァを、ブレずに提供していきたい」と「ピッツェリアGG 鎌倉」のオーナー、河野智之氏は語る。約2年間、イタリア・ナポリで修業し、2006年末に帰国した河野氏は、2007年、東京・東中野に「ピッツェリアGG」をオープンした。その後、2010年に東京・吉祥寺に移転し、2013年8月には神奈川・鎌倉に2号店を出店した。吉祥寺店は20坪弱32席だが、鎌倉店は50坪強56席の規模を持つ。

両店とも、イタリアからピッツァ窯専門の職人を招いて店内に設置してもらった薪窯で焼くピッツァ専門店であり、パスタも、肉・魚料理も提供していない。その代わり主力のピッツァは、トマトベース11品目(750~1500円)、モッツァレラベース11品目(1000~1600円)、スペシャルピッツァ4品目(1400~1650円)と豊富に揃えている。また鎌倉店では、地元で獲れるシラスやタコなどを使った季節限定品も随時登場する。ほか、サラダやコロッケなどの前菜、デザート、ドリンクというシンプルな商品構成で、ピッツァを目当てに来店する目的客を増やしている。

河野氏は1981年東京出身で、大学時代からサラリーマンより職人になりたいと思っていた。卒業旅行でイタリアを訪れた際、ナポリにも寄り、ナポリピッツァのおいしさとともに、ピッツァ職人が黙々と生地をのばし、次々と焼き上げる姿に惹かれた。

「当時は日本に本格的なナポリピッツァが入ってきたばかりだったと思いますが、1枚1500~2000円くらいで出すお店が多く、高級品というイメージでした。ところが現地に行ってみたら、1枚500~600円ですし、こんなにおいしいものをこんなに安く食べられるのかと驚いたのです」と河野氏。「ピッツァをやろう」と決意して帰国すると、早速、都内でナポリピッツァを謳う店に入った。しかし、ナポリで見てきたピッツェリアとは違うと感じて3カ月で辞め、「やはり本場で修業したい。まっさらな状態から行った方がいい」とナポリ行きを敢行した。語学学校に通いながら修業先を探したところ、5年ほど日本人を受け入れているピッツェリアで空きが出ると聞き、タイミングよく入店することができた。そこでピッツァの作り方を基本から学び、他のピッツェリアの食べ歩きもしながら研究を重ねた。

手前がオーダーの半数以上を占める「マルゲリータ」(950円)で、トマトソース、モッツァレラチーズ、バジリコをのせたナポリピッツァの代表的なアイテム。奥が「サンタアナスターシァ」(1,450円)で、モッツァレラチーズ、ミニトマト、サラミ、バジリコをのせた、河野氏がナポリの修業先でよく食べていたおすすめ商品

1人1枚食べ切れるサイズでナイフ・フォークとともに提供

日本ではピッツァを先に切り分けてから提供し、何人かでシェアしながら食べるお客が多い。けれども、「ナポリでは、ピッツァは1人1枚食べるのが基本で、ナイフとフォークを使って食べやすい大きさに切りながら食べていきます。先に切ってしまうと、トマトソースやオリーブオイルが生地にしみ込んで、ダレたような状態になってしまうからです」と河野氏は説明する。そこで、イタリア製のピッツァ専用ナイフとフォークを各テーブルに用意し、スタッフも提供時に食べ方を伝えるようにしている。また、ナポリでは生地は1枚240~300gが普通だが、同店では日本人にも食べ切れるように210gとした。小麦粉は、当初は修業先と同じイタリア・カプート社製を使用していたが、ポルセッリ社の製品も日本で入手できるようになったため、現在、同店では両社の製品を独自にブレンドし、品質を安定させている。また河野氏をはじめ、ナポリで修業してきたピッツァ職人が2店に計5人いるのも、同店の強みとなっている。

豊富に揃えたピッツァの中でも、オーダーの半分以上を占めるのは、ナポリピッツァの代名詞的存在である「マルゲリータ」(950円)である。ランチタイムは、各ピッツァの価格はそのままで、ドリンクとデザート付きとしており、客単価は1000円。夜も、ビールやワイン1~2杯とともにピッツァを楽しむという利用が多く、客単価は1500円。客層は、ベビーカーで小さい子供を連れて来店する家族連れから、年配者までと幅広い。昼は女性客が約7割を占めるが、夜はほぼ男女半々になる。夏場や週末は1日に300枚以上のピッツァを焼く日も多く、月商800~1000万円を上げ、好調に推移している。

同店が本場さながらのナポリピッツァ専門店として支持されている要因は、以下のようになるだろう。

1オーナーをはじめ、ナポリのピッツェリアでの修業経験者が集結している。
2パスタや肉・魚料理は置かず、ピッツァに特化している。
3ピッツァは30品目近くの品揃えで、専門性を訴求している。

「いい食材を使いながら、なるべく低価格で提供していきたいです。私の感覚としては、ナポリよりおいしいピッツァを出したいと思っています」と河野氏は抱負を語る。スタッフが育ち、資金が貯まれば、次の出店も考えていきたいという。

住所
神奈川県鎌倉市由比ガ浜2-9-62 フォーラムビル1F
TEL 0467-33-5286
営業時間
11:30~15:20(ラスト入店)、17:30~21:50(ラスト入店、土17:00~、日祝17:00~20:50ラスト入店)
定休日
不定休(2カ月に1回、薪窯の清掃日)