2016/09/05 繁盛の法則

肉そのものの味とお値打ち感で支持を高める肉バルとは

夫妻で経営する「肉バル310」(東京・飯田橋) に学ぶ-ランチはオープンと同時に満席になる日もあり、特に約170gのビーフステーキにライス、みそ汁、サラダ、ドリンクが付く「ステーキランチ」が人気だ。

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肉バル310

Key Point

  1. 良質な肉料理を手頃な価格で提供
  2. お値打ちランチで周辺の需要に対応
  3. 夫婦経営ならではの温かい雰囲気を訴求

フル回転のランチタイムは売り切れ御免で営業

「ビジネスマンに、上質な肉を手頃な価格で食べてほしい」と、東京・飯田橋に2015年8月25日にオープンした「肉バル310(サンイチマル)」。ランチタイムはオープンと同時に満席になる日もあるほど、周辺での認知度を高めている。

中でも、約170gのビーフステーキに、ライス、みそ汁、サラダ、ドリンクがつく「ステーキランチ」(980円)は、お値打ち感が高く、来店客の約8割がオーダー。そのほか、ハーブなどでマリネした約250gの鶏もも肉を使った「チキングリルランチ」(900円)、約200gの豚肉にジンジャーソースを添える「ポークグリルランチ」(900円)を揃え、さらにステーキ、チキン、ポークの中から2種を選べる「スーパーボリュームランチ」(1500円)や、ビーフステーキの切れ端を使った「牛すじカレー」(850円)などを提供している。ほかのランチメニューをオーダーした人は、100円増しでこの牛すじカレーをライスに少量かけてもらうことも可能だ。昼の客単価は980円。45~50食限定のため、早ければ13時前後に売れ切れてしまうこともある。

経営者は、武内隼人氏、美乃里さん夫妻。調理は隼人氏、接客は美乃里さんが担当するが、混雑時の料理提供や下げ膳、会計、洗い物などは、夫婦のあうんの呼吸で手際よくこなしている。10坪20席という小ぢんまりした空間と、夫妻が生み出す人情味あふれる雰囲気も魅力で、チェーン店や大型店とはひと味違う繁盛店となっている。

手前から時計回りに、ボリュームたっぷりの「肉屋の前菜盛」(1,200円)と、グリル料理の「サーロイン」(200g 1,500円)、「US産プライムビーフ ハラミ」(200g 1,850円)。肉そのものの味を楽しんでもらうため、わさび醤油と粒マスタードを添え、有機野菜を使ったサラダなどもたっぷりと合わせている

自身の得意分野である肉料理を核にした業態で独立

武内氏は1971年生まれで、16歳から飲食店で働き始めた。最初は武内氏の父親がオーナーだった埼玉・北戸田の焼肉店で、その後は都内のフレンチやイタリアンなどで修業を積んだ。美乃里さんも、高校時代の初めてのアルバイト体験がファミリーレストランのホールスタッフで、以降も接客の仕事を続けていた。

夫妻での独立開業に当たり、武内氏の直近の勤務先がイタリアンバルであったことと、飲食店勤務のスタートが焼肉店であり、自身も肉が好きで一番の得意分野であることから、肉バルという業態を選択。市ヶ谷の自宅から近いビジネス街で物件を探し、元はとんかつ店だった現物件を選んだ。

肉は20年以上の付き合いのある精肉店から仕入れており、そのときどきのおすすめを提案してもらう。牛肉はアメリカ産やオーストラリア産が中心で、鶏肉、豚肉は国産を使うこともある。ときには、甘味の強い脂身を持つイタリア産のドルチェポークなどの珍しい肉も扱う。さらに、自宅に装備している熟成庫で、自ら熟成肉作りにも取り組んでおり、随時、商品としても提供する。

ビーフステーキは、塩コショウして専用グリルでていねいに焼き上げ、わさび醤油か粒マスタードをつけて食べてもらう。肉そのものの味をストレートに味わってもらうスタイルである。夜は、同じ部位を200g 、300g 、400gとポーションを選べるようにし、「ランプ」(200g990円~)、「サーロイン」(200g1500円~)と、リーズナブルな価格に設定。また、あらかじめ切り分けて提供するので、数人で来店したら、異なる部位を200~300gずつオーダーし、シェアしながら楽しむという利用が多い。肉とともに、良質な野菜もたくさん摂ってほしいという考えから、千葉産を中心とする有機野菜を使用した野菜料理も充実させている。それ以外にも、武内氏の修業経験を活かした前菜や、シメのパスタなどをそろえている。

ドリンクは、飲み切れなかったら持ち帰ることのできるボトルワイン(1980~5500円)のほか、ハイボールやサワー類がよく出ている。夜の客単価は3500円で、フードとドリンクの売上比は約半々となっている。

同店が夫妻で経営する肉バルとして、ビジネス街で健闘している要因は、以下のようになるだろう。

  1. 肉のおいしさをストレートに訴求するグリル料理を、リーズナブルな価格で提供している。
  2. お値打ち感の高いランチメニューで、オフィス街のニーズに応えている。
  3. 夫婦で稼働する小規模店ならではの温かい雰囲気を醸し出している。

創業後、ランチタイムは比較的すぐに軌道に乗り、夜の客数は今も徐々に伸びている段階にある。ランチで同店の存在を知り、夜も立ち寄るようになった人のほか、周辺の住人が帰宅後に来店したり、出張で近くのビジネスホテルに宿泊している人が、定期的に訪れたりするようになっている。

「将来的には、それぞれ違う業態で3店舗ほど出店したい」と、武内氏は抱負を語る。その際も、すべて10坪以下で、カウンター席があり、自分自身が1人で行きたくなるような店を作っていきたいという。

肉バル310
住所

東京都千代田区飯田橋2-5-1 SNビル102
TEL 03-6265-6929
営業時間
11:30~14:30(L.O. 14:00、売切れまで)、17:30~23:00(L.O. 22:00)
定休日
土・日・祝