2016/09/29 繁盛の法則

自家製のそばとつけ麺スープを合わせたつけそば専門店とは

独特のつけそばで勝負する「つけ蕎麦 安土」(東京・高田馬場)に学ぶ-つけそばは冷たい麺に温かいスープを合わせたもので、11品目を揃える。現在は平均で昼100人、夜50人が来店し、年齢層も幅広い。

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つけ蕎麦 安土

Key Point

  1. 独自の発想のつけそばを開発
  2. 自家製粉・自家製麺のそばを提供
  3. バリエーションや季節商品を工夫

開業1年後から約半年かけて全商品をブラッシュアップ

ラーメンのつけ麺をヒントに、麺を中華麺から日本そばに変えた「つけ蕎麦 安土(あづち)高田馬場本店」は、その独特の商品で来店客を増やしている。そばは、店頭の電動石臼で挽いたそば粉に、中力粉を3割加え、押し出し式製麺機を使って「挽きたて」「打ちたて」「茹でたて」で提供している。スープは、鶏ガラ、モミジ、鶏油(チーユ)に、タマネギ、ニンジン、長ネギの青い部分、ニンニク、ショウガといった野菜類、ソウダ節、煮干し、昆布などの和風出汁を加え、6時間炊いて取っている。

オープンは2007年6月5日。ラーメンではつけ麺が注目され始め、そば店ではラー油を入れたそばつゆで太打ちのそばを食べさせる人気店が増えてきた頃だった。その流れの中でも、そばと、ラーメン用のつけ麺スープを合わせるという発想は珍しく、同店もオープン当初からテレビや雑誌で取り上げられた。しかしながら、一時的にお客が増えても長続きしないという状況が1年ほど続いた。

経営元は、鉄板フレンチ「ahill(アヒル)」を銀座と西麻布に出店している株式会社エス・ジー・シー・コーポレーションで、同社にとって麺類専門店は初の試みである。しかしながら、当初はアイデアだけが先行し、商品としてのおいしさ、完成度はいまひとつだった。そんななか、2008年11月に人の紹介で入店したのが、現在、同店の店長を務める千葉 治氏である。当時21歳だった千葉氏だが、イタリアンの料理人としてホテルなどでの勤務経験があった。そばやラーメンは初めてだったものの、「もう少し改良したらおもしろいのではないか」と、商品の見直しに取り組んだ。当初のそばは、そば粉十割で、6ミリ角のうどんのような太さに製麺し、ボソボソとしていた。つけ麺にするのであれば、ツルツルした食感やのど越しも重要と考えた千葉氏は、小麦粉を加え、そばとしてはやや太めの1.5ミリ角の太さに変えた。スープも、ahillのシェフとも相談しながら、素材や取り方を変えていった。約半年かけて商品全体をブラッシュアップしてからは、リピーターも増え始め、以来、右肩上がりで売上は伸びている。

一番人気の「鶏つけ蕎麦」(830円)は、鶏の香味揚げや極太メンマなどの具材を入れ、ラー油や四川山椒などによる辛さでインパクトを強めている。春夏限定商品の「トマトつけ蕎麦」(900円)は、自家製トマトソースを使ったスープと、ゴマを入れたもりつゆを添え、2種の味で楽しんでもらう

14.6坪20席の店舗で昼100人、夜50人を誘引

早稲田通り沿いにある落ち着いた和風の造りの店舗は、14.6坪20席の規模で、現在は平均で昼100人、夜50人が来店している。年齢層は幅広く、男女比はほぼ半々。1人で来店する年配の女性も多い。学生の街として知られる高田馬場だが、学生は1日10人以下の少数派となっている。

同店の主力のつけそばは、冷たい麺に温かいスープを合わせたもので、11品目を揃え、価格は750~1150円。中でも一番人気は「鶏つけ蕎麦」(830円)。総州古白鶏(そうしゅうこはくどり)の胸肉を、みりん、塩、魚粉、青のり、ゴマなどで下味をつけて1日おき、片栗粉をまぶしてさらに1日置いてから揚げる鶏の香味揚げや、極太メンマなどの具材が入っている。鶏ガラスーブは、そば店風の自家製半生かえしで調味し、さらに自家製ラー油、コショウ、黒酢、四川山椒を加え、インパクトを強めている。ほか、ベースの鶏ガラスープに、カレーを入れた「カレーつけ蕎麦」(860円)、豆乳を入れた「豆乳つけ蕎麦」(860円)などの派生商品があり、それぞれにファンをつかんでいる。冷たい麺と冷たいつゆを合わせた商品は、定番で3品目あり、昆布とソウダ節で取った和風だしに、しょうゆ、みりん、ザラメを加えためんつゆを合わせる。さらに、千葉氏の経験を活かし、トマトソースから手作りする春夏限定の「トマトつけ蕎麦」(900円)など季節商品が加わる。

そば粉と中力粉はあらかじめ7対3で合わせておき、客数を見ながらこまめに加水、ミキシングする。練り上がった状態で長時間おくと生地が乾燥してしまうため、30分以内に使い切っている。そばは普通盛りでも茹で上がりで300gとボリュームがあり、500gの大盛りは50円増し、600gの特盛りは100円増しで提供している。男性の常連は大盛りをオーダーする人が多く、客単価は910円。

同店が独特のつけそば専門店として常連を増やしている要因は、以下のようになるだろう。

  1. そばとつけ麺のスープを合わせるという、独自の発想による商品開発。
  2. 自家製粉、自家製麺により、挽きたて、打ちたて、茹でたてのそばを提供している。
  3. 手作りにこだわったバリエーション商品や季節商品で、常連を飽きさせない工夫をしている。

当初は「一週間だけでも」と頼まれて入店した千葉氏だが、商品の見直しから店舗運営までのほとんどを任せられるようになり、そのやりがいやおもしろさから、勤務を続けている。また、新宿には別のオーナーが経営する歌舞伎町店があるが、「今後は直営店も、万全の体制を整えてから増やしていきたいです」と千葉氏は意欲を見せている。

つけ蕎麦 安土
住所

東京都新宿区高田馬場4-18-9
TEL 03-3227-9886
営業時間
11:30~16:00、18:00~22:00
定休日
無休(夏季、年始など休業日あり)