2016/10/14 繁盛の法則

9坪9席で連日120食を完売するやきそば専門店とは

自家製麺で差別化する「やきそば みかさ」(東京・神保町) に学ぶ-やきそばは、北海道産小麦粉「ゆめちから」を100%使った手ごねちぢれ麺。並盛と大盛の2種があり、来店客の半数以上が大盛を選ぶ。

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やきそば みかさ

Key Point

  1. 自家製麺の手ごねちぢれ麺で特徴を出す
  2. オリジナルの「ソース味」「塩味」を開発
  3. 並盛りと大盛りを同価格で提供

都内進出後、関東の嗜好に合わせて商品を改良

そば、うどん、ラーメンなど、麺類の専門店は人気の高い業態だが、鉄板で焼くやきそば専門店は、都内でもまだまだ珍しい。東京・神保町で2013年12月にオープンした「やきそばみかさ」は、製麺まで手がけるこだわりで、マスコミや口コミ、SNSなどで徐々に知名度を上げてきた。現在では11時からの営業時間中は行列が絶えない人気店となり、16時ごろには麺切れで閉店する日が多い。

のれんには「昭和59年創業」と書かれているが、これは先代店主の母親が熊本で鉄板焼店を始めた年である。その後、先代がやきそばに特化した専門店を熊本に出店し、その店を弟子に任せて、2013年に東京に進出したという経緯をたどっている。しかし、事情により先代が熊本に戻ることになり、2015年9月に現代表の中田正人氏が同店を買い取った。中田氏は東京出身で、和食店、焼肉店、居酒屋など、様々な飲食店で修業を積み、いずれは居酒屋で独立したいという夢を持っていた。自家製麺のやきそば専門店という同店の業態に興味を持ち、将来居酒屋を開業する際に、自家製のやきそばを提供できたらおもしろいのではないかと考え、2014年3月に同店に入店。以来、飲食業での経験を活かしながら、先代とともに商品のブラッシュアップに努めてきた。

中田氏が入店した頃はストレート麺を使っていたが、よりソースと絡みやすくするために、麺状に切ってから手でこねてちぢれを出す手ごねちぢれ麺に変えた。現在の製麺方法は、北海道産小麦粉「ゆめちから」を100%使い、閉店後に塩とかん水を加えてミキシングし、延ばしてロール状に巻いてひと晩寝かせる。翌日、中太の太さに切ってから手でこね、オーダーを受けてから茹で上げ、鉄板で焼く。「関東のやきそばは蒸し麺が主流ですが、当店では生麺を茹でてから焼きます。また、そばやうどんは茹でてからいったん冷水で締め、表面のぬめりを落としてツルツルした食感にしますが、当店ではあえて水洗いせず、茹で上げたままの状態から、油を引かずに鉄板で焼きます。これにより麺のモチモチ感が強調されますし、表面が若干ネバネバしていたほうが濃厚なソースとよく絡みます。この粘りが当店のやきそばの特徴です」と、中田氏は説明する。

「やきそば」の大盛、ソース味、イカエビ入り(850円)。卓上にはイカ天かす、紅しょうが、からしマヨネーズ、辛口ソースが備えられ、好みで加えてもいい。やきそばは油を引かずに鉄板で焼くため、熱いうちにいか天かすを加えると、脂分が溶けてコクが出ると好評

絞り込んだ商品構成と製麺量でクオリティを保持

「やきそば みかさ」のやきそばの基本の具は、豚バラ肉、モヤシ、キャベツ、白髪ネギと、目玉焼きのように玉子を鉄板の上で割り、ヘラで崩して全体がトロッとした半熟の状態に焼いた崩し玉子である。白髪ネギは、水にさっとさらす程度にしてネギ独特の辛味を残し、清涼感のある口直し的な存在と位置づけている。食券機の近くに、ネギなし、ネギ増しの調整ができると明示しており、ネギ増しを注文するが多数を占めている。

並盛と大盛の2種があり、価格はともに700円。麺の量は、並盛が生麺で170g、大盛が220gで、来店客の半数以上が大盛を選んでいる。オープン当初はほとんどが男性だったが、最近は女性が約3割を占めるようになり、年齢層も広がってきた。女性や年配者でも大盛を注文し、きれいに食べ切っていく人も増えている。また、イカとエビのトッピングを150円増しで追加でき、客単価は780円になる。

基本のソースは、京都のソースメーカーから仕入れ、店内でスパイスなどを加えて関東向きのやや辛口に仕上げたオリジナル。さらに、麺の味付け用、豚バラ肉・イカ・エビの味付け用、仕上げ用の3種のソースを使い、深みのある味わいに仕上げている。また、女性をもっと増やしたいという狙いから、2014年夏に鶏ガラベースの塩ダレを使う塩味を追加した。麺そのものの味を楽しむには塩味のほうがいいという声も増え、現在は約2割が塩味をオーダーしている。

店舗規模は9坪9席。毎日120食限定で製麺し、売り切って閉店という日々が続いている。現在は年商2400万円を上げるまでになり、今後は2号店の出店も考えていきたいという。

同店がやきそば専門店として注目されている要因は、以下のようになるだろう。

  1. 北海道産小麦粉を自家製麺した手ごねちぢれ麺で特徴を出している。
  2. オリジナルのブレンドソースと鶏ガラベースの塩ダレで、独自の味わいに仕上げている。
  3. 並盛と大盛を同価格で販売し、総合的な割安感を出している。

現在の店舗では、絞り込んだメニュー構成と製麺量でクオリティを保ちつつ、2店めの出店が実現した際には、メニューのバリエーションを増やすことにもチャレンジしたいという意向をもっている。「最近では都内に新たなやきそば専門店が出てきていますが、『やきそばといったら、みかさだよね』と言われるような存在にしていきたいです」と、中田氏は抱負を語る。

やきそば みかさ
住所

東京都千代田区神田神保町2-24-3
TEL 03-3239-5110
営業時間
11:00~麺売り切れまで(16:00ごろ、要電話確認)
定休日
日・祝