2016/11/28 繁盛の法則

ベテランシェフの手作り料理で昼は4回転する四川料理店とは

本場の味にこだわる「芊品香」(東京・九段下) に学ぶ-「純中国伝統四川料理」をコンセプトに十数種の香辛料を使い、石鍋でグツグツと煮えた状態で提供する「元祖火焔山香草麻婆豆腐」などが人気だ。(

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芊品香

Key Point

  1. ベテラン料理人による本場の味を提供
  2. 麻婆豆腐、刀削麺などの看板商品を訴求
  3. オフィス街の外れの物件でコストを低減

有名中華料理チェーンの総料理長と統括店長が独立

石鍋で熱々の状態で提供される麻婆豆腐や、見事な手さばきで削る刀削麺などが看板メニューの、東京・九段下にある「芊品香(せんぴんしゃん)」は、周辺のビジネス街で認知度を高めている。

オープンは2015年11月25日。店舗規模は22.5坪で50席。九段下駅と飯田橋駅の中間辺り、細い路地に面した立地で、もとは屋内駐車場だった物件に出店した。経営者は、ベテランシェフの陳 崇雲(ちん そううん)氏(52歳)と、ホールを担当する範 徳龍(はん とくりゅう)氏(29歳)。2人は都内で7店舗を展開する有名中華料理チェーンの元総料理長と元統括店長で、自分たちで納得できる料理を手頃な価格で提供する店をやりたいと、独立開業に踏み切った。

陳氏は中国・大連の出身で、祖父母が人気屋台の「芊品香」を経営し、父親も跡を継いでいた。1966年~1977年の文化大革命の影響で経営できない時期があったが、それでも陳氏は16歳で料理の世界に進もうと決意し、上海、山東省、江蘇省、広東省、湖南省、四川省で修業を積んだ。2004年に日本の中華料理チェーンから招へいされて来日すると、すべての商品のレシピを作り、同チェーンの発展に貢献してきた。範氏は山東省出身で、中国で日本語を勉強し、2010年に来日。1年ほど語学研修を受け、日本企業での勤務を経験した後、飲食業に転身した。

2人は、人気チェーンの裏側を見るにつけ、このままではいずれ顧客が離れていくと危機感を抱くようになった。そこで、陳氏がもっとも得意とする四川料理をメインに、いい素材を使った本場の味の料理を提供しようと、「純中国伝統四川料理」をキャッチフレーズとする同店を出店した。独立に当たり、同じ中華料理チェーンで働いていたが、先に辞めていた仲間たちに声をかけると、「ぜひ一緒に働きたい」と、集まって来てくれた。現在、調理人は全部で4人、ホールは昼4人、夜は2人で稼働し、全員が中国人。家族のようなチームワークのよさも強みである。

手前から、石鍋でグツグツしている状態で提供する「元祖火焔山香草麻婆豆腐」(夜の単品880円)、まろやかな自家製ラー油をたっぷり使った「絶品本場四川よだれ鶏」(同780円)、クセになる辛さの「痺れる麻辣刀削麺」(同850円)

元屋内駐車場の物件を使い、開業投資額を低減

出店に当たっては、オフィス街で昼間の人口が多く、それでいて2人が目指すようなクオリティの中華料理店は少ないと感じた、神保町.飯田橋エリアに注目し、屋内駐車場だった現物件を選んだ。飲食店用の基本設備がなく、特に中華料理に必須のダクトの設置やガスの増量での苦労もあったが、施工業者の工夫でクリア。内装はシンプルで、最大限の客席数を確保しながら、掃除がしやすいレイアウトの店舗に仕上げた。開業投資額は2000万円で、陳氏と範氏が半々で出資した。

オープンに際して大々的な宣伝はしなかったが、ランチタイムは周辺のビジネスマンやOLに早々に注目され、口コミでリピーターを増やしてきた。当初、平日のランチタイムの客数は80~90人。最近は170人ほどを誘引し、満席状態が続く。ランチは850円の定食類、刀削麺セットなどをそろえる。中でも人気が高い料理は、「元祖火焔山香草麻婆豆腐」(昼の定食850円、夜の単品880円)で、中国・四川から仕入れる「漢源麻山椒」など十数種の香辛料を使い、石鍋でグツグツと煮えている状態で提供している。辛さは、小辛、中辛、極辛、地獄辛の4段階から選べ、それぞれのオーダー比率は20%、60%、15%、5%となっている。ほか、「絶品本場四川よだれ鶏」(昼の定食850円、夜の単品780円)は、まろやかでコクのある自家製ラー油が味の決め手となっている。刀削麺は、強力粉と薄力粉をブレンドし、1時間手もみして生地を作る。スープは、丸ごとの赤鶏、金華ハム、野菜類などを8時間煮込んで取る。1人前には茹で上がりで300gの麺、250gのスープを加え、希望であれば小ライスをサービスする。

客単価は昼880円、夜4000円。土・日曜日や夜の客数も着実に伸びており、日商20~22万円を上げ、夜の予約が多い月は月商700万円を超える。

同店がオフィス立地で健闘している要因は、以下のようになるだろう。

  1. ベテランの料理人たちによる本場の味の料理を提供している。
  2. 麻婆豆腐、麻辣刀削麺といった、他店とはひと味違う強力な看板商品を持っている。
  3. オフィス街の外れの立地を選んで固定費を抑え、清潔感のある店舗で営業している。

今後の陳氏、範氏の目標は、現店舗と行き来しやすい場所での2号店の出店である。「もっともっと提供したい料理があるのですが、現在の店舗では厨房スペースや冷蔵庫の容量などで難しい。2号店は、店舗規模は同じくらいで、厨房を広めにし、本場のいろいろな料理を日本の皆さんに楽しんでいただきたいです。私たちが経営する店舗は、最多で2店舗まで。それ以上増やしたら、管理し切れなくなり、必ず店のレベルが落ちますから。2店舗だけでいいので、陳シェフと2人で、クオリティを保って経営していきたいです」と、範氏は真摯に抱負を述べている。

芊品香
住所

東京都千代田区飯田橋2-16-4 九段下コート1F
TEL 03-6272-8860
営業時間
11:30~15:00(L.O. 14:30)17:30~23:00(L.O. 22:45)
定休日
無休