2016/12/19 繁盛の法則

商品力と見た目のインパクトが特徴の洋食・カレー店とは

カレー膳で支持される「TAKEUCHI 神保町本店」(東京・神保町) に学ぶ-色とりどりの野菜がトッピングされたオリジナルのカレー膳が売り。なかでも、「煮込みハンバーグ膳」が圧倒的な人気を誇る。

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TAKEUCHI 神保町本店

Key Point

  1. インド風と欧風の中間的な、独自のカレーを開発
  2. 煮込みハンバーグという人気商品を創出
  3. 野菜を多用し、美しさやインパクトを追求

ビジネス街への進出を決意し、昼の需要に合うカレーに着目

色とりどりの野菜が美しくトッピングされたオリジナルのカレー膳を目当てに、「TAKEUCHI」の店頭には、ほぼ常時ウエイティングができている。竹内智(さとし)氏、恭子さん夫妻のみで運営する7.5坪、カウンター12席という小規模店だが、1日当たり約70人が来店しており、16時頃にはカレーやハンバーグの売り切れにより、営業終了となる日がほとんどという盛況ぶりである。

オープンは2013年9月12日。駿河台下および神保町の交差点から徒歩3分ほどの細い路地沿いにあり、隠れ家的な雰囲気をもつ。竹内氏はホテル、イタリアン、フレンチなどで修業した後に独立し、東京・三鷹で15年ほどビストロを経営していたが、ビジネス街でバリバリと働くサラリーマンをメインターゲットに、おいしく、ボリューム感のあるランチを、手ごろな価格で提供したいと考えるようになり、現在地で新たなスタートを切った。

東京・府中の自宅からJR中央線1本で通勤できる市ヶ谷、飯田橋などでも物件を探したが、神保町には鉄道好きの竹内氏がときどき訪ねていた古書店街があることもあって、中央線の駅でもある御茶ノ水駅から徒歩圏内にある現物件を選んだ。同店の店内には、竹内氏が集めた鉄道関連グッズがディスプレイされ、独特の雰囲気を醸し出している。竹内氏が料理の道に進んだのも、もとは「列車の食堂車で働きたい」と夢見たからだった。

ビジネス街では限られたランチタイムが勝負になるため、なるべく素早く提供できるカレーを主力メニューとし、アイテム数も絞り込むことにした。健康面も考えて野菜をたっぷりと食べられるように工夫。カレーのトッピングのほか、根菜類の煮物と呼べそうなほどの具だくさんのみそ汁、ピクルスなどの小鉢を添え、膳ものに仕立てている点も特徴である。しかも、みそ汁とご飯はお替り無料で提供している。

圧倒的な人気商品の「煮込みハンバーグカレー膳」(850円)。170gのふっくらした手作りハンバーグに加え、野菜による彩りの美しさ、見た目のインパクトも徹底的に追求。具だくさんのみそ汁とご飯はお替り自由

毎日手作りするカレーや煮込みハンバーグは連日完売

メニュー表には8アイテムほどの膳メニューを載せているが、その中から圧倒的な人気を誇る「煮込みハンバーグ膳」(850円)のほか、毎日3~4種類を用意している。

オリジナルのカレーのベースは、「インド風と欧風の中間くらいですね。スパイスはインド系ですが、煮詰めていくとトマトなどの野菜のとろみが出てくるので、仕上がりは欧風といった感じになります。小麦粉を使ったルーは入れていませんが、100%インド風でもなく、独自に作っています」と竹内氏は説明する。まず、ホールタイプのクミン、カルダモン、カレーリーフを油で炒めて香りを出し、タマネギ、セロリ、ニンジンなどを加え、アメ色になるまでしっかりと炒める。続いてトマト、ブイヨンを入れ、パウダータイプのクミン、カルダモン、パプリカ、ターメリック、クローブ、ブラックペッパーなどを独自に調合しながら加える。カレーは毎日仕込み、継ぎ足しながら味をのせていくので、1日に提供できる量には限りがある。また、サラサラしたスープカレー、シーフードと野菜を使う独特のキーマ風カレーは、別に仕込んでいる。

「煮込みハンバーグ膳」用のハンバーグは、細かめに挽いた豚肉と牛肉の合挽き肉に、フワッと仕上がるようにパン粉などのつなぎを入れ、1人前170gのボール型に整形。毎朝50~60個作り、いったん焼いた後、デミグラスソースで煮込んでおく。トッピング用の野菜は、定番のほか、夏はズッキーニ、秋はキノコ類など、旬の野菜も随時取り入れ、前日にカット。ピーマンやナスなどは生から、根菜類は蒸したり下茹でしたりした後、素揚げして彩りよく盛り付ける。「煮込みハンバーグ膳」は、カレーソース味かデミソース味を選べるが、カレー味のオーダーが約8割を占めている。1品1品ていねいに仕上げるため、提供時間は10~15分ほどかかることが多いものの、リピーターは期待感を高めながら待っているという。

オープン当初の2カ月ほどは客数が少なかったが、徐々に口コミで来店する人が増加。現在は、学生から50代後半のサラリーマンまで幅広い層に支持されており、男女比は約半々。客単価は850円で、原価率は35~40%で推移している。

同店がオリジナリティの高いカレー膳でリピーターを掴んできた要因は、以下のようになるだろう。

  1. インド風と欧風の中間的なオリジナルなカレーを作り出している。
  2. 手作りの煮込みハンバーグという強力な人気商品をもっている。
  3. 野菜をたっぷり食べられる膳ものに仕立て、見た目の美しさやインパクトにもこだわっている。

竹内夫妻は、多店舗化や規模の拡大を目指すわけではないが、工夫を重ねて開発した自信作のキーマ風カレーは、レトルト商品として販売してみたいという希望を持っている。

TAKEUCHI 神保町本店
住所

東京都千代田区神田神保町1-20-3 1F
TEL 03-3292-0523
営業時間
11:30~16:00頃(ハンバーグとカレーが終了次第閉店。要電話確認)
定休日
日祝