夜は居酒屋、昼は親子丼で需要を掴む比内地鶏専門店とは - 繁盛の法則 -

2017/02/06

ランチは単一メニューで勝負する「きすけ」(東京・溜池山王) に学ぶ

夜は居酒屋、昼は親子丼で需要を掴む比内地鶏専門店とは

素材そのものの味を活かした
シンプルな親子丼を開発

 秋田出身の店主・加藤建次氏が経営する比内地鶏専門店「きすけ」は、東京・溜池山王のビジネス立地で、夜は焼鳥をメインとする居酒屋、昼は親子丼専門店として営業している。地下鉄溜池山王駅から徒歩2分ほどのビル1階にあるが、入口は細い路地に面しており、7坪13席という小規模店である。「このくらいの規模なら、家内と2人で営業するにはちょうどいいかな、と思って始めたのです。厨房も狭いですから、昼は親子丼だけにしました」と、加藤氏は穏やかに語る。この親子丼が周辺のサラリーマンやOLに定評を得ており、ランチタイムだけで連日70~80人が来店する人気を誇っている。

 「きすけ」の親子丼は、歯応えのある比内地鶏の正肉を、同じく比内地鶏のガラスープを使った割下で煮て、奥久慈卵2個を流し入れ、トロリとした半熟に仕上げる。割下用の調味料は、煮詰めたみりんと醤油のみで、砂糖を加えていないため、スキッとしたキレのある味わいに仕上がっている。使用する米はあきたこまち。鶏肉と卵とご飯のみという、シンプルな組み合わせであるからこそ、素材そのもののおいしさがダイレクトに訴求されている。その代わり、親子丼にはレタスのミニサラダ、味噌汁、漬物を添えている。価格は、ご飯180gの「並盛」が980円、ご飯200gの「大盛」が1000円。消費税が8%に上がった2014年4月に、並盛は30円値上げし、大盛は据え置いた。一般的なサラリーマンにとって、昼食代は1000円以内に抑えたいという思いを理解しての価格設定である。親子丼の原価率は約40%と高く、そのお値打ち感も顧客に伝わっている。

多忙な中華食堂の経営を経て
比内地鶏の専門店を出店

 オープンは2004年5月。加藤氏は1943年10月、秋田南部の湯沢市生まれで、18歳で上京。まず車の修理・整備の仕事に3年携わった。その後、「東京で家を持ちたい。そのためには勤め人ではなく、自分で事業をやりたい」と考えた加藤氏は、飲食業での独立を志した。東京・狛江の5坪ほどの中華食堂に飛び込み、掃除から仕込み、調理、接客までひと通りを3年間で学び、1967年、のれん分けとして修業先の屋号「博雅」を冠した10坪20席の店舗を、東京・下北沢にオープンした。

 「高度成長期で、商店街の店主も地元の方たちが多く、活気があった時代でした。家賃は5万円、客単価500円で、1日200人が来店し、平均日商10万円を上げていましたから、とにかく忙しかったです」と加藤氏は振り返る。修業経験の短い加藤氏は、料理では諸先輩に太刀打ちできないと考え、ラーメンを工夫することにした。当時、都内では生醤油を使った黒っぽい色のスープのラーメンがほとんどだったが、加藤氏は塩と醤油を半々で使い、色が薄く、きれいに澄んだスープのラーメンにしたところ、予想以上に好評で看板商品となった。そして望み通り、下北沢に家を建てた加藤氏だったが、重労働で体力勝負の中華食堂の営業は歳を重ねてからは難しいため、ゆくゆくは故郷・秋田の比内地鶏をメインとする小さな店を、京子夫人とともに、ゆったりと営業したいと考えるようになった。

 価格の高い比内地鶏の専門店では、若者が多く、安さやボリューム感が求められる下北沢では難しいと判断した加藤氏は、2001年に中華食堂を閉店。他店の手伝いなどをしながら新店オープンの準備を進め、縁あって居抜きの現物件を紹介されて出店を決めた。昼は親子丼を効率よく作れるように、6個口のガスコンロを設置し、空調設備があった場所にテーブル席を設けたほかは、ほぼ居抜きで使用している。手狭な店内で無理をするのではなく、焼鳥の串打ちや、鶏ガラスープづくりは、秋田の業者に依頼して仕込んでもらうことにした。開店後、客数が少なかったのはわずか1週間程度。親子丼のおいしさはすぐに口コミで広がり、ランチだけで97食を販売した記録をもっている。

 「きすけ」がランチの親子丼を核に、ビジネス街で支持されている要因は、以下のようになるだろう。

1店主の故郷・秋田の良質な比内地鶏の味わいを、ストレートに訴求する親子丼を提供している。
2物件の規模から昼は親子丼専門店とし、高回転を実現している。
3ビジネス立地での値頃感を考慮した価格設定にしている。

 夜は、比内地鶏の焼鳥と秋田の地酒を楽しみ、シメに親子丼という利用が多く、客単価は5000円になる。

 「この店はこのまま維持しながら、もう少し広い物件で、比内地鶏の卵を使ったひと味違う親子丼や、手間暇かけた家庭料理など、秋田の食を提案するような店をやってみたいですね」と、加藤氏は70歳を過ぎてなお、前向きに夢を語っている。

Key Point
1. 比内地鶏を活かした親子丼を開発
2. 昼は親子丼のみで高回転を実現
3. ビジネス立地での値頃感を考慮
SHOP DATA
住所 | 東京都港区赤坂2-10-16 赤坂スクエアビル 1F
TEL 03-5570-2810
営業時間
11:30~14:00(L.O.)、17:30~21:00(L.O.)
定休日 | 土・日・祝
昼は親子丼のみで勝負する7坪13席の店舗
昼は親子丼のみで勝負する7坪13席の店舗
「親子丼並盛」(980円)。比内地鶏の正肉70gを、自家製の割下で煮て、奥久慈卵2個を流し入れ、とろりとした半熟状態に仕上げる。鶏肉の凝縮した旨味と歯応え、濃厚な卵の味わいが、シンプルながら絶妙なハーモニーを生み出している。ミニサラダ、味噌汁、漬物つき
「親子丼並盛」(980円)。比内地鶏の正肉70gを、自家製の割下で煮て、奥久慈卵2個を流し入れ、とろりとした半熟状態に仕上げる。鶏肉の凝縮した旨味と歯応え、濃厚な卵の味わいが、シンプルながら絶妙なハーモニーを生み出している。ミニサラダ、味噌汁、漬物つき

Text and Photo by Food Biz

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