住宅街で愛されるリーズナブルな和食店とは - 繁盛の法則 -

2017/08/03

カキをメインとする「ミトラタカセ」(東京・参宮橋) に学ぶ

住宅街で愛されるリーズナブルな和食店とは

東日本大震災直後に
2店舗目の出店を決意

 「2011年3月の東日本大震災の直後、この商店街は本当に真っ暗でした。その様子を見て、自分も何かやらなくてはと強く思ったのです」と、東京・参宮橋の和食店「ミトラタカセ」店主の高瀬亘氏は語る。周囲の反対を押し切って2011年4月に14坪20席の現物件を契約し、6月18日に同店を出店した。小田急線参宮橋駅の改札からすぐの場所に、同店の灯りがともり始めると、周辺の住人も高瀬氏自身も、心からほっとしたという。

 高瀬氏は1965年神奈川・川崎生まれで、父親が料理人だったことから、自然と料理の道に進んだ。銀座、麻布などの高級料亭で修業し、2001年、東京・代々木に和食店「高瀬」(15坪20席)をオープンした。当初は客単価5000円ほどだったが、次第にアッパー層が増えていき、現在では夏はハモ、冬はフグのコースをメインとする、客単価2万1000円の高級店となっている。築地市場の仲卸業者と確固とした信頼関係を築いてきたことから、「ミトラタカセ」ではその業者が得意とするカキを主力商品に選んだ。また、「高瀬」の創業時のように、きちんとした和食をリーズナブルな価格で食べられる店として、再び夜の客単価5000円前後の業態を目指すことにした。

 カキというと冬の味覚というイメージがあるが、高瀬氏は、「当店のカキはすべて国産ですが、最近は通年で生ガキが入手できるようになってきました。カキは大別して、10~4月が旬の真ガキ、6~8月が旬の岩ガキがありますが、近年は養殖業者さんが少しずつ時期をずらして育てているので、種類や産地の違いで常時6種類以上のカキが入手できます。同じカキでも、育つ環境や食べているプランクトンの違い、あるいは季節などによって、あるものはクリーミー、またあるものはミネラル感が強いなど、かなり味が異なります。その違いを当店で食べ比べていただけるとうれしいです」と語る。実際に同店を訪れるお客のほとんどが、生ガキの食べ比べセットや、磯焼き、天ぷら、オイル漬けなどのカキ料理をオーダーしている。

人との縁に恵まれ
徒歩圏内に3店舗体制を築く

 ランチタイムは、15食限定の「日替り定食」(1000円)のほか、「カキフライ定食」(1200円)、「刺身定食」(1600円)などを提供している。和の副菜や手作りデザートが付く充実感、お値打ち感から好評を得て、客単価1200円で1日平均30人ほどが来店し、女性が約6割を占めている。

 また同店は、群馬県産農畜産物販売協力店に指定され、農畜産物の品質向上に協力している。そのなかで群馬・太田市の加藤畜産株式会社が生産する良質な「くちどけ加藤ポーク」と出合い、同製品を使ったランチの「ロースカツ定食」(1200円)や、新鮮で臭みのない豚モツを使った酒肴「もつ煮」(950円)も人気商品となっている。

 ドリンクは、カキに合うことを前提に、ソムリエとともに試飲して選ぶワインのほか、和食がベースなので、日本酒にも力を入れ、カキと日本酒という組み合せも積極的にアピールしている。また、「お通し」(600円)としてフグの唐揚げを出しているのも同店ならではといえよう。夜の客単価は狙い通り5000円で、1日平均15~20人を誘引し、特に週末は近所のファミリーが多くなる。

 同店がカキをメインとする和食店として、住宅街を控えた駅前商店街で健闘している要因は以下のようになるだろう。

1信頼できる仲卸業者を通じて全国の産地から良質なカキを仕入れている。
2本店の和食の技術をベースにしたランチメニューや夜の一品料理を提供している。
3リーズナブルな価格設定で若年層やファミリーの気軽な利用を誘引している。

 実は「ミトラタカセ」のオープン時は、洋食のシェフに入ってもらい、フレンチとイタリアンが融合したような業態とし、当初は好調だった。しかし、オープン3カ月ほどで急激に売上が落ちてきたため、シェフともよく話し合った結果、カキをメインとする和の業態に転換したことで、再び上向いたという経緯がある。

 「本店の『高瀬』をオープンして10年間は、店は1店舗でいいと思っていたのですが、東日本大震災をきっかけに、この店を出店することができました。また、常連のおひとりが本店の近くにビルを建てたときにお声がけいただき、2015年11月に『寿司高瀬』をオープンしました。すべて人と人との縁のおかげですし、これからもそういう縁を大切にしていきたいです」と高瀬氏は語る。3店とも徒歩10分ほどで行き来できる距離にありながら、業態を変え、異なる利用動機に応えていることから、3店舗を周遊するファンも増えている。

Key Point
1. 全国の産地から良質なカキを入手
2. 和食の技術を活かした料理を提供
3. 手ごろな価格で気軽な利用を誘引
SHOP DATA
住所 | 東京都渋谷区代々木4-6-5 七福ビル1F
TEL 03-5302-2150
営業時間
11:30~14:00L.O.(土日祝~14:30L.O.)、17:00~23:30(22:30L.O.)
定休日 | 火曜日(祝日のある週は変更になる場合あり)
小田急線参宮橋駅から徒歩30秒、焼鳥店の居抜き物件を使って2011年6月にオープン
小田急線参宮橋駅から徒歩30秒、焼鳥店の居抜き物件を使って2011年6月にオープン
「生牡蠣 12個セット(6種以上)」(4,800円。産地、金額は仕入れによって変動)。写真は前列左から2個ずつが京都・舞鶴産の岩ガキ、岩手・気仙町産の真ガキ、北海道・昆布森産の真ガキ。後列左から2個ずつが宮城・志津川産の真ガキ、岩手・米崎産の岩ガキ、兵庫・室津産の岩ガキ
「生牡蠣 12個セット(6種以上)」(4,800円。産地、金額は仕入れによって変動)。写真は前列左から2個ずつが京都・舞鶴産の岩ガキ、岩手・気仙町産の真ガキ、北海道・昆布森産の真ガキ。後列左から2個ずつが宮城・志津川産の真ガキ、岩手・米崎産の岩ガキ、兵庫・室津産の岩ガキ

Text and Photo by Food Biz

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