素材のよさで多彩なトマトメニューを名物に

熊本県の有明海近くで育てられている「蘇鉄とまと」は糖度が7~8度あり“甘くておいしい”トマト。京都の「焼肉市場」では売りの定番サラダに使うトマトを「蘇鉄とまと」に変更した。

URLコピー
代表取締役
蘇鉄 国光 氏トマト農家歴33年。農業を営む父の背中を見て育ち、大学卒業後、農家の道へ。愛するトマトのために、よいと思うことは何でも試してみるチャレンジャー
トマト本来のおいしさがストレートに伝わる一品。味を気に入り、蘇鉄とまとを使った別メニューをオーダーする来店客も多いという

素材そのものの味のよさで多彩なトマトメニューを名物に

有明海まで直線距離で約2キロという温暖な土地で、「蘇鉄とまと」一本で勝負している蘇鉄国光氏。品種は今や作り手が少なくなった「桃太郎」だ。

「30年程前に登場して以来、桃太郎は全国的なブームになりましたが、実は作りにくい品種。病気に弱く、繊細な管理が必要で、収穫量は少ない。昔は周辺の農家の9割が作っていましたが、今ではうちだけですね」と蘇鉄氏。「でも、味が抜群。甘味と酸味のバランスがよく、トマト本来の味がするんですよ」と、栽培が難しいにもかかわらず作り続ける理由を語る。栽培の柱は、旨み成分に富む「桃太郎プレミアム」と、ミニトマトの「千果」と「ピンキー」で、注目すべきは蘇鉄園芸が栽培する桃太郎の糖度の高さ。一般的なスーパーで販売されているトマトは4~5度ほどだが、「蘇鉄とまと」は7~8度。“甘くておいしい”自慢のトマトだ。

味の決め手の第一は、「幼い頃から叩き込まれた」という土作り。試行錯誤の末、牛フン堆肥にEM菌(有用微生物群)を混ぜ、1年熟成させたものを使っている。そしてハウス内では、苗を直立させる吊り下げ法を採用しているため、葉や果実に太陽の光がまんべんなく降り注ぐ。水やりを極力抑えるのも糖度を上げる秘訣のひとつだ。

この長年の経験とぶれない努力により、珠玉のひと玉となった「蘇鉄とまと」と、京都の地で出合ったのが「焼肉市場」。ぐるなびの担当営業に紹介され、早速サンプルを取り寄せた田中克昇氏は、試食してすぐに採用を決めた。「味が濃かったことや、野菜ソムリエサミット大賞受賞歴(2014年購入評価部門)などを知り、間違いないと思った」と、田中氏は当時を振り返る。

サイドメニューにも売りをつくりたいと考え、創業時からの定番サラダ「市場トマト」に使うトマトを全4店舗で「蘇鉄とまと」に変更。コストは2倍となったが、値段は据え置いている。「『おいしかった。もう1回食べたい』と思ってくれたら、それでいいです」と言う田中氏の想いを裏切ることなく、「市場トマトの出足は好調で、その勢いにのって蘇鉄とまと+αのアレンジメニューが次々と誕生した。「メニュー開発は各店に任せました。現場のアイデアがヒットを生む可能性は十分ありますからね。だから店によっては、『蘇鉄とまと』をチーズ、アンチョビと一緒にアルミホイルで包んで炭火で焼いた、オリジナルメニューもあります」(田中氏)。

「自分が作ったトマトに対して、食のプロの反応を得られるのは大きなやりがい」と蘇鉄氏。生産者と飲食店は、単なる商品の売買だけではなく、「食材の向こう側にいる客に、いかにおいしく食べてもらうか」という想いでつながっている。

蘇鉄園芸
熊本県玉名市横島町横島10207
http://www.k-tomato.jp/
熊本県玉名市の有明海に臨む干拓地にある蘇鉄園芸。のどかな平野に30数棟のハウスが並ぶ。温暖な気候で、冬場でも長い日照時間や昼夜の温度差、干拓地特有のミネラル豊富な土壌など恵まれた環境の中、年間270トンのトマトを栽培
蘇鉄一家と11名の「まじめで頼もしい」というスタッフで、「蘇鉄とまと」の味を守っている。若手の人材育成も使命の一つだ
約3年前に登場した品種「桃太郎プレミアム」。グルタミン酸の含有量が高いため、噛むほどに旨みが広がり、甘い
朝に収穫したものを夕方までに出荷。選別も箱詰めもすべて手作業。スピーディーに行わなければならない
糖度の測定は光センサー糖度計を用い、ひとつずつ手作業で行う。この地道な作業が信頼につながっている
焼肉市場 高野店
京都府京都市左京区一乗寺梅ノ木町55 エクセレントビュー高野1F
http://r.gnavi.co.jp/c034501/
周辺に大学が多く、学生や地元のファミリー層が足繁く通う。来年20周年を迎える同店のほか、関西圏に4店舗を展開。“良質でリーズナブル”をモットーに近江牛にこだわり、最近は珍しい「希少糖つけダレ」も注目の的
シンプルにわさび醤油、またはオリーブオイルで食す、「蘇鉄とまととアボカドのSASHIMI」
女性に人気の「蘇鉄とまとと色どり野菜のピクルス」は、そのさっぱり感で焼肉と好相性
「蘇鉄とまととチーズのサラダガーリックチップと共に」。チーズにはピリ辛の隠し味が
蘇鉄とまとだけのメニューも用意し、積極的に薦めている。定番の「市場とまと」は、グランドメニューに掲載
代表取締役
田中克昇 氏1995年、「焼肉市場」をオープン。“新し物好き”の旺盛な好奇心は、様々な形でメニューに反映されている。すでにリングイッサを使った次なるメニューを考案中

ぐるなびPRO厳選食材マーケット

http://pro.gnavi.co.jp/market/

2013年秋に開設。食材や生産者情報を探す飲食店と、こだわりを持つ生産者を直接つなげるサイト。カテゴリーから食材を探すことができ、購入や問い合わせのほか、サンプルの取り寄せ(一部商品)もできる。
※利用にはぐるなびPRO for 飲食店へのログインが必要です

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

ぐるなび通信をフォローする