地域限定肥料が味に影響。全国で求められるブランド力
京都府北端の丹後地方は、山と海に囲まれた雄大な自然ときれいな水、昼夜の気温差が農作物の栽培に適し、与謝野町では古くから農業が基幹産業として栄えている。香山喜典氏は7年前に家業を継ぐと同時に会社を設立。以降は、自社の野菜すべてを「丹後の京野菜」として販売するようになった。
「京都祐喜」の野菜は、早くから和・洋・中のトップシェフや京都の老舗漬物店などで評判を呼んだ。その味の秘密は、与謝野町の農家だけが使える肥料にある。「与謝野町の農家の大半は、行政が開発に取り組んだ『京の豆っこ』を使っています。ここ2、3年で野菜の味と発色が格段に変わりました。この肥料が大きく影響していることは、間違いありません」と香山氏は語る。
「京の豆っこ」の原料は、町内の豆腐工場から届くおからと、農家の米ぬか、漁港からの魚あらの3品のみ。100%有機質の循環型菌体肥料は、疲れた土地に活力を与えるのだという。香山氏は家業を継いだときからこの肥料を使用しており、農業従事者になってこれまで「農業に誇りを持って、充実した時間を送ることができています」と話す。そう感じる背景には、会社を設立してすぐに著名なシェフらと出会う機会があり、時を同じくして有名料理店や高級食材を扱う百貨店などを主な販売ルートとしてつかんだこともある。生産者として従来どおりの手間暇をかけ、ブランドとしての差別化を図り、さらには販売ルートも厳選。香山氏は新しい農業の在り方に挑戦し、現在は後進の育成にも力を注いでいる。
そんな「京都祐喜」の野菜を、東京・銀座の「GINTO銀座店」が扱うようになったのは、ぐるなび主催の商品展示会に足を運んだ松崎拓也氏の目に留まったことがきっかけだった。会場には100社近い生産者がブースを出展していたが、「京都祐喜」の野菜を一番に採用することに決めたという。「食べた瞬間に『これは使おう』と思いました。味はもちろんですが、京野菜というブランド力にも大きな魅力を感じました」(松崎氏)。
同店は30代後半~50代の女性客が7割を占める。この層は食体験が豊富で情報収集力が高いため、京野菜の知名度や高級感は大きな武器になる。そこでシェフの平岡英太郎氏と何度も改良を重ねて、果肉に独特の歯ごたえがある賀茂なすを使った「茄子とモッツアレラのオーブン焼き」を開発。配色の美しさとおいしさが人気を呼び、当初は季節限定だったが、現在はレギュラーメニューとして定着した。「生産者に会うと元気が出ます。やはり素材がいいと料理をアピールしやすいですし、“正直な商売”ができますね」と松崎氏。今後も「京都祐喜」の野菜を使い、新たなメニュー開発に力を入れていく予定だ。
京都祐喜(ゆうき)
京都府与謝郡与謝野町三河内914-3
http://kyoto-yuki.net/
5代続く農家。丹後全域に広大な農地が3カ所あり、丹後こしひかり「歌人」などの米のほかに、ブランド京野菜に指定されている九条ねぎ、万願寺とうがらしなど約50種の野菜を仲間たちと栽培。2007年に京都祐喜株式会社を設立。
GINTO 銀座店
東京都中央区銀座3-3-1 ZOE銀座5F
http://r.gnavi.co.jp/g853130/
銀座の夜を楽しめるダイニングとして大人の女性に人気を呼んでいる。野菜には特にこだわり、メニューの大半に産地名を表記。2014年11月は「京野菜フェア」「ジビエフェア」を開催するなど、野菜をテーマにしたフェアも定期的に行う。
ぐるなびPRO厳選食材マーケット
http://pro.gnavi.co.jp/market/
食材にこだわるシェフ・飲食店へ、生産者とその厳選食材を紹介するサイト。食材を直接購入できるほか、問合せすることも可能。掲載食材に関する質問は、上記サイトまたは、ぐるなび担当営業まで
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