餌と環境にこだわった飼育。合鴨の概念を覆す味

京都・宇治で合鴨を飼育し、「京鴨」ブランドで販売する山城農産。臭みがほとんどなく、そのおいしさに目をつけたのが京都・上賀茂にあるレストラン「キャン ド サン」だ。

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代表取締役社長
小山 展弘 氏父親の起こした事業を継ぐためにイギリスのチェリーバレー社で研修。得意の英語を活かし、今では同社と仕入れや頻繁に更新される品種の情報交換を直接行っている。
鴨肉といえば赤身と脂身が分かれたロース(胸肉)。タレに約2日間漬けこんで作る「鴨ロース」は風味と食感に優れる。自家製の特製わさびが味を引き立てている

餌と環境にこだわった飼育。合鴨肉の概念を覆す味

京都府南部の宇治市で合鴨を飼育し、「京鴨」ブランドで販売する山城農産株式会社。食肉用合鴨の最大手・イギリスのチェリーバレー社から種鴨用の雛を年に1度輸入し、親鳥になるまでの飼育と、親鳥が生んだ受精卵の孵ふ化、その食肉用の雛の飼育・精肉処理まで、すべて自社で行っている。今から約30年前、日本ではまだ少なかった国産合鴨の飼育に取り組んだのは、需要が高まる冬の繁忙期に、輸入元の出荷量だけでは間に合わず、さらには顧客の細かなニーズにも応えたかったからだという。二代目の小山展弘氏は語る。「例えば赤身の色。料理のビジュアルにこだわる料理人からは、赤身の美しさを求められました。それを実現するには餌から変えなければならず、専用飼料の開発にも取り組みました」。

鴨肉といえば一般的に、加熱後の脂は黄色味がかるが、「京鴨」は白に近い。これはこだわりの餌と、飼育環境が大きく影響していると小山氏は言う。「合鴨は非常に繊細で汚い場所を嫌います。鳥舎の床には常にきれいな木くずを撒き、快適で清潔な環境を整えています。また、親鳥を飼育している宇治では、井戸水をろ過して与えるなど、水にも餌と同様にこだわっています」。そうして飼育された「京鴨」は、まったくといっていいほど臭みがなく、あらゆる合鴨肉を知るチェリーバレー社をして「自社では到底飼育できない優れた肉質」との高い評価を得ている。

そんな「京鴨」を、「キャン ド サン」のオーナーシェフ・明石寛一氏が使うきっかけとなったのは、ぐるなびの商品展示会に参加した知人シェフからの紹介。「キャン ド サン」ではすでに鴨ロースが人気メニューとして定着していたことに加え、知人シェフの評価が高かったのも決め手となった。「率直な感想は『これまで食べたことがない肉』。やさしく素直な味に驚きましたね。鴨特有の臭みもまったくないので、調理で消す必要もなく、思いどおりの味に仕上げられます。グリル時も、味付けは塩・コショウだけで十分」(明石氏)。

また、「京鴨」を仕入れるようになってからメニューに加えたのが、鴨のモモ肉を使った料理だ。1枚の肉の中に赤身と脂身が入り混ざっているモモ肉は、加熱することでやわらかさが増し、鴨肉本来の旨みを引き出せる。鴨肉を使ったクリームソースのパスタは、鴨肉を焼いた後の脂も使い、鶏肉よりもコクのある絶妙なバランスの一品。アラカルトとしてメニューに加え、モモ肉のグリル料理などとともに来店客の心をつかんでいる。「鶏肉の臭さが気になるお客様からは特に、『こんなにおいしい肉があるんですね』という言葉をいただくことが多いです」と言う明石氏。「京鴨」は今や、同店の代名詞になりつつある。

生産者
山城農産
京都府宇治市木幡南山畑29-6
http://www.kyogamo.com/
養鶏に始まり、1983年から合鴨肉を専門に扱う。本社から程近い場所に親鳥専用農場、府内京丹波に食肉専用農場を所有。現在岡山県に新しく食肉専用農場と食肉工場を建設中。合鴨肉は年間330トン生産。料理店などへの直接小売も行っている。
宇治の白川種鴨農場で育つ親鳥(食肉用として育てる雛となる卵を産む)。合鴨は繊細な気質を持つため、健康に育てるために静かで落ち着いた場所を選び、高い衛生環境を整えている
チェリーバレー社の餌に独自のアレンジを加えた「京鴨」専用飼料。これを使うことで肉質の調整も可能に
孵化したばかりの雛。雛は卵を孵化機に入れてから28日後に産まれる。その後、専用農場で60日間肥育されて「京鴨」になる
鳥舎に敷き詰められた木くず。きれい好きの合鴨は床の汚れを嫌うため、新しい木くずを常に補充。新しい親鳥を迎える時は徹底した清掃を行う
飲食店
キャン ド サン
京都府京都市北区上賀茂豊田町50
http://r.gnavi.co.jp/gj7ytazp0000/
閑静な住宅街にあるビストロ風料理店。素材の味を活かし、京都・上賀茂の野菜を使うなど地元らしさを感じさせる料理が好評。客層の中心は外食経験の豊富な40~50代。ワインはフランス産を中心にそろえ、時折ワイン会なども開催。
「京鴨」との出合いから生まれた「鴨のモモを使ったクリームソースパスタ(1,500円)。鴨肉はソテーし、パスタには鴨を焼いた後の脂とクリームを絡め、季節野菜(写真は金時人参)を添える
日々、様々な産地が書き込まれる店頭の黒板。明石氏の食材へのこだわりがうかがえる
「京鴨」を仕入れてから、「鴨ロース」用に漬け込むタレは薄味に
オーナーシェフ
明石 寛一 氏様々な店やホテルで研鑽を積み、約20年前に独立。ギフト販売も行うチーズケーキなど、デザートも得意としている。「メニューありきで食材を仕入れるのではなく、食材に合わせて料理を作ると、おいしいものができます」

ぐるなびPRO厳選食材マーケット

http://pro.gnavi.co.jp/market/

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