韓国発 マッコリがオシャレに大変身! 後編

韓国の伝統酒・マッコリは、韓国では「中高年男性が屋台で飲む酒」というイメージが強かった。しかし最近、そのイメージが覆りつつある。後編では、マッコリカクテルなどを出す店を紹介する。

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Vol.140

韓国の伝統酒である「マッコリ」(日本の「どぶろく」に近いもの)は、長年、韓国の人にとって「中高年男性が屋台などで飲む酒」というイメージが強かった。しかし最近、韓国各地の地マッコリをそろえたり、高級感のある内装にして、これまでのイメージを一新する店が増えている。

後編では、フルーツと合わせたり、シャーベット状にした“マッコリベースのカクテル”を売りにした2つのバーを紹介。20~30代の女性を中心に人気となった理由を探る。

イチゴやブルーベリー、ライム、ハチミツなどバラエティに富んだ素材を用いたマッコリカクテル。それぞれの色や風味に合わせてグラスも変えている
フルーツと合わせてシャーベット状にしたマッコリのフローズンカクテル。マッコリとは縁のなかった若い女性を中心に、予想以上の人気になった
従来は屋台や食堂で飲むイメージだったマッコリ。「こんなおしゃれな店でマッコリ?」と驚かれるような空間も、イメージアップの重要な要素だ

マッコリカクテルと豪華な雰囲気で女性を呼ぶ

ソウル市内最大の繁華街・明洞(ミョンドン)に、2011年2月にオープンした「NU LOOK+(ヌルック・プラス)」。この店では、イチゴ、梅、フィリピンライム、柚子、ハチミツ、山イチゴ、チョウセンゴミシ(マツブサ科の生薬)、ブルーベリー、マンゴーといったフルーツなどを使った8種類の「マッコリカクテル」(各250ml入り7,000~8,000ウォン=約700~800円)を提供している。

ブルーベリーとマッコリを絶妙なバランスでブレンドした「ブルーベリー・マッコリカクテル」。クセが少ないマッコリを用いている

「マッコリ独特の匂いが苦手という女性のために、フルーツと合わせてみようと思ったのがきっかけです。果汁とマッコリの最適な割合を求めて試行錯誤し、完成させました」と、オーナーのチェ・グワンジュン氏は語る。マッコリを飲みなれない人に、入門編としてカクテルから入ってもらい、普通のマッコリにも興味を持ってもらいたいと考えている。

なかでも一番人気なのは、「タルギ(イチゴ)・マッコリカクテル」で、イチゴとマッコリ、それぞれの酸味と甘みが絶妙にマッチしている。そのほか、柑橘系のさわやかな酸味が効いている「ユズ(柚子)・マッコリカクテル」や、漢方としても使われるチョウセンゴミシを使った、甘くて飲みやすい「オミジャ(チョウセンゴミシ)・マッコリカクテル」も人気が高い。

8種類もマッコリカクテルがあれば、様々な種類を飲んでみたいと思うもの。そこで、これら「マッコリカクテル」と、ストレートのマッコリ8種類の計16種類が楽しめる「90分飲み放題コース」(2万ウォン=約2,000円)を用意して、好評を博している。

チェ氏は以前、映像関連の仕事をしていたこともあり、店内のインテリアには随所にセンスのよさが光っている。内装のテーマは“ニューヨーク”で、ジャズのBGMが流れるおしゃれで大人の雰囲気。「男性は“安くおいしく”を重視しますが、女性に来店していただくためには、プラスアルファで店の雰囲気が大切ですね」と、チェ氏。

フルーツジュースと合わせてマッコリ独特の匂いを消したり、内装やBGMなど、雰囲気づくりにもこだわったことで、20代女性を中心に集客。着実にマッコリに対するイメージも変わってきている。

一番人気の「タルギ(イチゴ)・マッコリカクテル」は、新鮮なイチゴをブレンダーで粉砕し、冷やしておいたマッコリを入れて、炭酸が逃げないようにゆっくりと撹拌。味が薄くなるので氷は入れない
オーナーのチェ氏。アメリカへの留学経験もあり、独創的なアイデアで成功をつかんだ
NU LOOK+(ヌルック・プラス)
100-021 21, Myeongdong 9-gil, Jung-gu, Seoul
http://blog.naver.com/govols

マッコリをフローズンカクテルにして大ヒット!

一方、マッコリ・バーの「MOWMOW(モウモウ)」があるのは、ソウル市内のヘバンチョン地区。おしゃれなレストランやバーが建ち並び、外国人居住者も多い。オーナーのアレックス・リー氏は当初、イタリア料理店とワインを出す店を同じ場所に開いていたが売上が伸びず、2010年12月、“韓国×欧米”のフュージョン料理やマッコリを売りにした店にリニューアルした。その2年後、果汁とマッコリを混ぜてシャーベット状にするフローズンカクテルを考案し、「スラッシュ・マッコリ」と命名。これが大ヒットする。

「チョンポド(マスカット)・スラッシュ・マッコリ」。2012年当時、ソウル市内のカフェでマスカットを使ったメニューが流行っていたことが、メニュー開発のきっかけになった

「この店ならではのドリンクメニューが欲しくて、試作を繰り返していました。そんななか、フルーツの果汁とマッコリを混ぜて、これをシャーベット状にしたところ、触感がユニークで女性にも人気が出そうだったのでメニューに加えることにしました。シャーベットの粒子を細かくする特殊なブレンダーを使っています」と、リー氏は語る。

特に人気なのが、マスカットを材料にした「チョンポド(マスカット)・スラッシュ・マッコリ」(500ml入りデカンタが9,000ウォン=約900円。1,000ml入りが1万6,000ウォン=約1,600円)。マッコリのほのかな酸味と、マスカットの甘酸っぱさが絶妙なハーモニーを奏でている。果汁とマッコリの割合はおよそ6対4で、アルコール度数は3%以下と、ライトな仕上がりだ。

また、アップルマンゴーの香りと甘さが特徴の「アップルマンゴー・スラッシュ・マッコリ」や、エスプレッソのほのかな苦みが効いて男性にも受けがいい「エスプレッソ・スラッシュ・マッコリ」(ともに、価格は「チョンポド・スラッシュ・マッコリ」同様)も人気。「スラッシュ・マッコリ」は、このほかに「マンゴー」「ストロベリー」「ワイン」があり、全6種類。ドリンクメニューには、15種のストレートのマッコリを含め、ワインやビールなど計100種類以上がラインナップされているが、ドリンクの売上の40%を「スラッシュ・マッコリ」が占めているという。

料理は「ロゼソース・セウ・トッポギ」(エビとトッポギのトマトクリーム煮。1万8,000ウォン=約1,800円)など、冷たくさっぱりとした「スラッシュ・マッコリ」とマッチする濃厚な味のアツアツメニューを用意している。

主な客層は、流行に敏感な20~30代の女性で、現在、ソウル市内に3店舗を展開。2017年内にはイギリス・ロンドンに初の海外支店を出す予定だという。フルーツと合わせたり、フローズンカクテルにアレンジされたマッコリが、いよいよ世界に進出する。

「アップルマンゴー・スラッシュ・マッコリ」。シャーベット状になっているため、先にスプーンの付いた長いマドラーでかき出すようにしてグラスに注いで飲む
オーナーのリー氏(右)と、メニュー考案を担当する妻のキム・ジョアン氏。キム氏はフランスの料理学校で勉強した経験を持つ
MOWMOW
2F 226-6 itaewon_dong yongsan_gu Seoul
https://www.facebook.com/mowmowitaewon/?ref=py_c

取材・文/梅本昌男(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1ウォン=約0.1円
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