米国・LA発スパイス&ハーブ系コーヒー前編

Vol.153

 かつて、アメリカ人にとってコーヒーといえば、ファストフードチェーンやコンビニエンスストアが販売している低価格品やインスタントが中心だった。それが、この20年ほどの間に、エスプレッソにミルクや砂糖、チョコレートやキャラメルなどを加えておしゃれに味わう「シアトル系コーヒー」として人気を集めるようになった。さらに最近は、シングルオリジンなど品質にこだわった「サードウェーブコーヒー」がトレンドとなっている。

 そんななか、ロサンゼルスでは、砂糖をたくさん使うコーヒーに違和感を持つ健康志向の人のニーズから新たなトレンドが生まれている。それが、様々なハーブやスパイス、さらにはフラワーエキスなどを加えた「スパイス&ハーブ系コーヒー」だ。

 前編では、シナモンなどのスパイスやココナッツウォーターなどの果汁、さらにはナッツを用いたコーヒーを提供する店を紹介する。

近年、シナモンやカルダモンなどのスパイスをふんだんに使用した新感覚のコーヒーが、ロサンゼルスのカフェで続々と登場している

近年、シナモンやカルダモンなどのスパイスをふんだんに使用した新感覚のコーヒーが、ロサンゼルスのカフェで続々と登場している

ビンテージのカクテルグラスやシャンパングラス、ウイスキー用のグラスに入れてカクテル風にするなど、提供方法にも工夫が加えられている

ビンテージのカクテルグラスやシャンパングラス、ウイスキー用のグラスに入れてカクテル風にするなど、提供方法にも工夫が加えられている

ラベンダーシロップとハチミツを用いた「ラベンダーハニーラテ」。ただ、一見すると普通のカフェラテと変わらないため、見た目でどう特別感を出すかが今後の課題かもしれない

ラベンダーシロップとハチミツを用いた「ラベンダーハニーラテ」。ただ、一見すると普通のカフェラテと変わらないため、見た目でどう特別感を出すかが今後の課題かもしれない

コーヒー本来の味を大切に、スパイスや果汁でアクセントをプラス

 ロサンゼルスのダウンタウンから北に約8kmの場所にあるシルバーレイクは、若者に人気の繁華街。周辺には、中国、韓国、日本などの出身者がそれぞれコミュニティーを形成するエスニックタウンがいくつかある。このシルバーレイクのおしゃれなカフェやショップが集まる大通り・サンセットブルバード沿いに、2014年12月にオープンしたのが「ダイナソーコーヒー(Dinosaur Coffee)」だ。

カルダモンとシナモンをブレンドした「カルダモン&シナモンカプチーノ」。ショウガ科の多年草であるカルダモンの効果で体が温まる一品だ

カルダモンとシナモンをブレンドした「カルダモン&シナモンカプチーノ」。ショウガ科の多年草であるカルダモンの効果で体が温まる一品だ

 看板商品は、カルダモン(ショウガ科の多年草から作ったスパイス)を使用したシロップと、シナモンのパウダーをブレンドした「カルダモン&シナモンカプチーノ」(4.50ドル=約504円)。カルダモンのすーっとさわやかな香りと、ピリッとくる辛みとほろ苦さ。シナモンのほのかな甘い香り。エスプレッソの豊かなコクと苦み。ミルクのまろやかさ。それらが絶妙に交じり合い、豊潤な味わいが楽しめる。特に、清涼感のあるカルダモンがカプチーノとこれほど合うとは、新たな発見だ。

 一方、スパイスではなく果汁を加えたのが、「ココナッツ・カカオ コールドブリュー」(6ドル=約672円)。16時間かけてゆっくりと水出ししたコーヒーに、さらにじっくり24時間かけてカカオニブ(カカオ豆を砕いたもの)を浸す。こうしてできた、雑味やエグみが抑えられたコールドブリューコーヒーを、みずみずしいココナッツウォーターで割った一品。カカオ独特の苦みを感じる一方で、まろやかでありながらヨーグルトのような酸味もあるスッキリとした飲み口だ。甘いチョコレートではなくカカオそのものを用いることで、コーヒーの味わいを損なわずに、風味を加えることに成功。「コーヒー本来の味を楽しみたい」という愛好家からも絶賛されている。

 店内は、シンプルモダンかつスタイリッシュな雰囲気で、若者で賑わうエリアということもあり、来店客は20~30代の男性が中心。生クリームやチョコレート、キャラメルを加えた今までのシアトル系とはひと味違う、“本格的だが意外性のある”新しい味わいが好評だ。

バリスタのタイラー・ブロッド氏。自分が大好きな季節である秋にぴったりの、心も体も温まるものを、という発想から「カルダモン&シナモンカプチーノ」を完成させた

バリスタのタイラー・ブロッド氏。自分が大好きな季節である秋にぴったりの、心も体も温まるものを、という発想から「カルダモン&シナモンカプチーノ」を完成させた

コーヒー愛好家をも唸らせる「ココナッツ・カカオ コールドブリュー」。テイクアウトで購入する人も多いという

コーヒー愛好家をも唸らせる「ココナッツ・カカオ コールドブリュー」。テイクアウトで購入する人も多いという

SHOP DATA

ダイナソーコーヒー(Dinosaur Coffee)
4334 W Sunset Boulevard, Los Angeles, CA 90029
ダイナソーコーヒー(Dinosaur Coffee)

ハーブやナッツを使い、カクテルのように楽しむコーヒー

 ロサンゼルスのハリウッド中心部から車で5分のところに位置する「ブラックウッドコーヒーバー(Blackwood Coffee Bar)」。メキシコ料理やラーメン、タイ料理などの飲食店が集まり、昼夜を問わず観光客で賑わうショッピング街に、2016年5月オープンしたコーヒーショップだ。カクテルシェイカーやリキュールなどを使い、ひと手間かけたカクテル風のクラフトコーヒーを専門に提供している。

ぺカンナッツの香ばしさが隠し味の人気ナンバーワンメニュー「モーニングウッド」。ブランデーグラスに入れて出される

ぺカンナッツの香ばしさが隠し味の人気ナンバーワンメニュー「モーニングウッド」。ブランデーグラスに入れて出される

 一番人気は、カクテル用のブランデーグラスに入れて出される「モーニングウッド」(6ドル=約672円)。フォームミルクの上にシナモンとブラウンシュガーが浮かぶ特徴的な見た目のアイスコーヒーだ。コールドブリューコーヒーにエスプレッソを数ショット合わせており、カフェインは強めだが苦味や酸味はほとんどなく、クリーミーでスッキリとした味わい。ぺカンナッツの香ばしさとシナモンの甘い香りが味わいに深みをもたらしている。

 ほかに、メキシコ系の住民が多いロサンゼルスならではの変わり種コーヒーもある。コールドブリューコーヒーに、米とカシューナッツを砕いて挽いたオルチャータ(もともとは地下茎の絞り汁などから作るメキシコなどで人気のドリンク)と、香り付けにカクテル用のチョコレートリキュールをミックスした「ラテンコールドブリュー」(5ドル=約560円)だ。メキシカンココアの風味と、カシューナッツオルチャータの少しザラっとした舌ざわりが特徴で、リピーターも多い。

 素材にこだわったオリジナリティあふれるメニューには、コーヒーを贅沢品として味わってほしいというオーナーの想いが詰まっている。手が込んでいる分だけ通常のコーヒーより少し値段は高いが、毎日通う常連客もいるほどだ。カラフルなアートなどが飾られたポップな店内には、20~40代の観光客の姿も目立つ。

 マグカップでがぶがぶ飲むコーヒーや、ミルクや生クリーム、チョコレート、キャラメルなどの味が強いコーヒーも悪くない。しかし、まるでカクテルのように、様々な味わいが凝縮された一杯をしっかり味わうコーヒーもまたおもしろい。世界的なトレンド発信地であるハリウッドから、また新たな潮流が生まれそうだ。

砕いて挽いたカシューナッツを主原料にしたオルチャータと、コールドブリューコーヒーを合わせた「ラテンコールドブリュー」。こちらはウイスキー用のグラスで提供

砕いて挽いたカシューナッツを主原料にしたオルチャータと、コールドブリューコーヒーを合わせた「ラテンコールドブリュー」。こちらはウイスキー用のグラスで提供

「ラテンコールドブリュー」を考案した経営者のキース・ウィクソン氏(左)と、「モーニングウッド」を生み出したバリスタのハウイー・リバース氏(右)。コーヒーをカクテル風にとらえることで、まだまだ新メニューは生まれそうだ

「ラテンコールドブリュー」を考案した経営者のキース・ウィクソン氏(左)と、「モーニングウッド」を生み出したバリスタのハウイー・リバース氏(右)。コーヒーをカクテル風にとらえることで、まだまだ新メニューは生まれそうだ

SHOP DATA

ブラックウッドコーヒーバー(Blackwood Coffee Bar)
7509 Sunset Boulevard, Los Angeles, CA 90046
ブラックウッドコーヒーバー(Blackwood Coffee Bar)

取材・文/今井悠乃(海外書き人クラブ)

※通貨レート 1ドル=約112円

※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。

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