2017/06/30 繁盛の黄金律

主力商品は価格を底上げし、サブメニューは値下げし、注文率を高める

主力商品は価格を底上げし、サブメニューは値下げし、注文率を高める -メニューの磨き込みをしつつ、主力商品の中でも低価格メニューを切り捨て、より価格帯が上のメニューに注文を集中させます 

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Vol.70

強い「サブベーシック」で注文皿数を上げよう

前回は、客単価を上げて客数を伸ばそうという、なかなか実現するのが難しいテーマで話をしました。このときいちばん大事なことは、主力商品への集中化、つまり、主力商品の価値を高めることだ、という話もしました。メニューの「磨き込み」ですね。磨き込むをしつつ、主力商品の中でも低価格メニューを切り捨て、より価格帯が上のメニューに注文を集中させます。

これはなかなか危険をともないますが、磨き込みによって主力商品の価値が上がっていれば、必ず成功します。そして、主力商品の領域外のメニューも少しずつ切っていくのです。これで主力商品の注文率が高まって、さらに専門店化が進みます。専門店が強い理由は、特定のメニューに注文が集中するからです。集中化が進めば、特別に素材を変えなくても、素材の回転がよくなり、その鮮度が上がります。そして、調理の練度も上がって、品質が高まるのです。

さて、客単価を上げる方法ですが、値段を上げなくても、注文皿数が増えれば、自然に客単価は上がります。必ず注文してもらえるサイドメニューを持っていれば、そして、そのメニューの注文率が上がれば、客単価は上がります。

ハンバーグ専門店で、必ず注文してもらえるサラダやスープがあったら、どうなるでしょうか。ラーメン店で、餃子の注文数が高まったら、どうなるでしょうか。喫茶店で、多くのお客が注文するパンケーキやフレンチトーストがあったら、どうでしょうか。値上げをしなくても、無理なく客単価は上がりますね。しかも、お客は高い代金を払って、満足してくださるのですから、こんなにいいことはありません。

つまり、強い「サブベーシック」(サブの看板メニュー)を持つことが、いかに大事か、ということです。ここで、強いサブベーシックの条件を考えてみましょう。

従業員のサジェスチョンによって、サブベーシックの注文率は上がる

1杯500円のラーメン店で、餃子が500円だったらどうでしょう。ちょっと注文をためらってしまいます。300円でも躊躇(ちゅうちょ)してしまいますね。400円のコーヒーを出す喫茶店で、パンケーキやフレンチトーストが1,000円だったら、どうでしょう。これも二の足を踏んでしまいます(パンケーキやフレンチトーストが主力の店は、別です)。

サブベーシックの第一条件は、「ついつい注文してしまう価格」になっているかどうか、です。これを専門用語で、アフォーダブル・プライスといいます。抵抗なく注文できる価格という意味ですね。例えばあるラーメン店で、餃子の価格を250円から200円に下げたら、注文数が爆発的に伸びました。200円ならば、確かに抵抗なく注文できますね。粗利益率は下がりますが、単価が上がるのですから、粗利益高は上がります。それでいいのです。

ここまでの話をまとめます。まず、主力商品は価格の高いほうに注文を向かわせることが大事。一方、サブメニューは、抵抗なく注文できる価格を実現する、ということです。

チェーン店でみると、例えばサイゼリヤは199円の価格に強力なサブベーシックメニューを集中させています。しかも、その一品一品の質が高い。グラスワインは一杯100円ですし、抵抗なく注文できるサブメニューを持つ最右翼のチェーンと言っていいでしょう。家族で出かけて、お父さんがこう言える店がいちばん強いのです。「残しちゃいかんぞ。残してはいけないが、何でも好きなものを、好きなだけ食べろ」と。鳥貴族にファミリーが増えている理由も同じですね。280円均一という価格です。やはり同じ言葉を、お父さんは自信を持って発することができるのです。品質も高いですよ。

同じチェーン店でも、どの店も同じメニューで営業しているにもかかわらず、店ごとに客単価に結構ばらつきが出ます。これはどうしてかというと、サジェスチョン(提案)力に差があるからです。“強い店長”の店は、従業員が何度もテーブルに行って、バッシング(下げ)と追加注文取りを積極的に行います。一方、訓練の行き届いていない店は、テーブルに行く回数も少なく、サジェスチョンができないので、追加注文を取れません。これが、客単価の差となって表れます。いくら強いサブベーシックがあっても、サジェスチョン力がない店は注文が取れず、客単価が思うように上がりません。結局、“店長力”の差ということになるわけです。

つまり、強いサブベーシックは、店長力(=店長の訓練力)と結びついたときにはじめて、その本来の力を発揮することになります。せっかくのいいメニューを、埋もれた宝物にしている、残念な店があまりにも多すぎます。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。