2018/02/13 特集

スタッフが変わる「叱り方」~行動の改善が本来の目的!~

経営者や店長がスタッフに注意したくてもできないというケースが増えている。そこで、本特集では「叱り方」にフォーカス。人材育成のプロに、スタッフの行動が変わり、成長につながる叱り方について聞いた。

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最近の飲食業界では深刻な人手不足から、「スタッフに辞められるのが怖いので叱れない」「若いスタッフへの指導の仕方がわからない」など、経営者や店長がスタッフに注意したくてもできないというケースが増えている。そこで、本特集では「叱り方」にフォーカス。企業の人材育成を支援する齋藤直美氏に、スタッフの行動が変わり、成長につながる叱り方について聞いた。

【お話を聞いたのは】株式会社ミュゼ 齊藤直美氏
外食チェーン本部人材育成部署にて、約8,000人の教育・研修を担当し、新人、管理職、社内講師の育成を行う。その後、2006年に株式会社ミュゼの設立に参画。“月曜日が待ち遠しくなる組織づくり”をコンセプトに企業のリーダー教育、組織活性化に携わり、全国各地で研修・講演を行っている。著書に「なぜ、あの上司は若手の心を開くのか」(青春出版社)、「部下がついてくる人、離れていく人の叱り方」(あさ出版)などがある。

「叱る」とは、成長につながる対話の1つ

「叱る」という言葉には、ネガティブなイメージがある。叱った相手であるスタッフと気まずくなったり、店全体の雰囲気が悪くなったり、叱ったことをきっかけに辞めてしまったり…。折からの人手不足のなか、スタッフに問題の行動があったとしても、「できれば叱らずに済ませたい」と思い、叱ることや指導することに消極的になっている経営者や店長も少なくないだろう。

しかし、「まず、叱ることのネガティブなイメージをあらためましょう」と株式会社ミュゼの齋藤直美氏は呼びかける。「叱ることの目的は、落ち度をとがめることではなく、問題のある行動に対し、改善の提案を行うことなのです」と語る。

例えば、何度も遅刻をするスタッフには、決まった時間に来ないことに対して怒るのではなく、「時間どおりに出社できるように導くこと」が本来の目的。ましてや問題行動を責めて、落ち込ませることが、目的なのではない。「もちろん、謝罪や反省は、過程として必要なことが多いのですが、ゴールではありません。目指すのはあくまで“行動の改善”です。これは、相手の成長にもつながる機会ですから、決して悪いことではありません」と、齋藤氏は力説する。「叱るとは、よりよい行動を導く対話であり、未来につながるコミュニケーションの1つなのです」(齋藤氏)。

そう考えると、「叱る」ことへのハードルは、ぐんと低くなるのではないだろうか。「行動の改善」を目的にした対話なのだから、改善策を冷静に話し合えば、感情的になったり、声を荒げたりする必要はない。「そもそも、声を荒げたり、相手を責めたりするのは、『自分が絶対に正しく、相手が100%悪い』という立場に立っているから。コミュニケーションにおいて『相手が100%悪い』ということはありません。そういう行動になってしまう理由が必ずあるはず。大切なのは、問題行動の背景を探ることなのです」(齋藤氏)。

そのためにも、「叱る側からの一方的なメッセージではなく、叱られる側がなぜその行動になってしまうのかを話せるように促すことが大事」と齋藤氏は言う。遅刻するのは、何か事情がある可能性も考えられるからだ。事情がわかれば、対策を一緒に考えることができる。寝坊したという場合も同様で、悪い癖を治す方法を共に考え、行口にいるお客様には聞こえないよ」と事実を伝えることだ。すると問題行動が客観的かつ、具体的になり、改善するべき行動も「入口まで届く声で挨拶すること」と明確にできる。

一方で、年長者は「今どきの若い人は、ちょっと叱るとすぐに辞めてしまう」と嘆きがちだ。しかし、齋藤氏は「まずは世代は関係なく、他人と自分は違うのだと知ることが大事」という。「特に、いわゆる“ゆとり世代”は個性を大事に育てられてきました。そのため、自分の強みを引き出してくれることや、自分の成長につながることには前向きです。叱られることが嫌なのではなく、成長につながる的確なアドバイスをすれば、行動の改善につながっていきます」(齋藤氏)。

では、どんな「叱り方」をすればよいのだろうか。齋藤氏は、相手の行動の改善につながる「叱り方4ステップ」を提唱する(上図)。まずは、「オープニング」として相手がもっとも受け入れやすい時と場所を選び、目的がブレないように、具体的な改善提案のシーンを想定する。その準備ができたら、いよいよ本番。次ページから1つひとつのステップを詳しく紹介しよう。

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