2017/05/22 繁盛の法則

オリジナル丼と北海道産素材で差別化する丼もの専門店とは

ユニークな丼メニューをそろえる「ど丼がぁドン」(東京・大手町) に学ぶ-「炙りチャーシューがぁドン」をはじめ、オリジナリティのある商品をそろえ、小盛りや豆腐換えなどの要望にも細かく対応する。

URLコピー

ど丼がぁドン

Key Point

  1. 店内で手作りするオリジナル丼を提供
  2. 小盛りや「豆腐換え」など顧客の要望に対応
  3. 北海道産の酒類や野菜で差別化

北海道出身の夫妻が都心のオフィス街に出店

印象的な店名から、大盛り自慢の男性的な丼もの専門店かと思いきや、ご飯の小盛り、極小盛り、豆腐換えなどにも対応し、女性が昼は4割、夜も2割を占めるのが、東京・大手町の「ど丼がぁドン」である。大将こと轡田(くつわだ)直紀氏と、女将の登紀子さん夫妻が2010年12月20日にオープンした店舗で、温かく家庭的な雰囲気も魅力のひとつとなっている。

轡田氏は1977年に富山で生まれ、北海道十勝地方の帯広で育った。十勝地方・中札内(なかさつない)村出身の登紀子夫人と2002年に結婚した際のプロポーズの言葉が、「10年後に飲食店を出店するけれど、いっしょにやる?」であった。まずは料理修業が必要と、京都の高級料亭を紹介してもらった轡田氏は、結婚式を挙げたその日にさっそく京都に向かった。料亭で2年半働き、料理の基本を学んだ。しかし、料亭では調理人とお客が会話を交わすことはなく、気軽に友だちに食べに来てもらうこともできなかった。そこで、独立開業する際は、カウンターを挟んでお客と和気あいあいと会話ができるような、定食や丼ものなどがメインの大衆食堂にしたいと考えた轡田氏は、2004年に東京に移った。店舗の作り方も学びたいと、飲食企業に入って業態開発や新規出店の流れを体験し、独立前の2年間は開業資金を貯めるためにアルバイトを7カ所かけ持ちして働いた。

丼もの専門店を出店するのであれば、サラリーマンの多い神田辺りがよいのではという知人からのアドバイスを受け、元は家主が車庫として使っていた18坪の現物件を見つけた。飲食店用のガス、水道などの基礎工事も必要だったが、轡田氏がアルバイトで貯めた自己資金のほか、千代田区からの融資を受け、オープンキッチンと、カウンターおよびテーブルで計18席の店舗が完成した。

魚介ベースのタレで煮込んだチャーシューを盛る「炙りチャーシューがぁドン」(写真手前・850円)、柔らかく、しっかり味がしみ込んだ「鶏唐揚げ」(写真右680円)、北海道・中札内村名産の枝豆がゴロゴロと入っている「枝豆ギョーザ」(写真左780円)

丼メニューのみでスタートし、酒類や酒肴を徐々に強化

丼ものといっても、同店では皿盛りや、熱々の鍋盛りが多く、昔ながらのカツ丼や親子丼などとは一線を画する、オリジナリティの高い商品をそろえている。ご飯の量は、小盛り150g、普通盛り200g、大盛り300gで、お客の約8割が普通盛りをオーダーしている。ご飯を豆腐半丁に置き換える「豆腐換え」は、顧客の要望から生まれたもので、1日5食ほどが出ており、お客の好みに応じて豆腐を温める場合と、冷たいままの場合がある。

丼メニューの中で、一番の人気商品は「炙りチャーシューがぁドン」(大950円、中850円、小750円)。チャーシューは、カツオ、サバ、アサリ、カキ、昆布、煮干しなどで取る魚介ベースのタレで、豚バラ肉をコトコトと半日煮込んだもの。提供時にフライパンでこんがりとあぶってご飯にのせ、黒コショウと独自の醤油ダレをかけている。鶏の唐揚げも独特で、同じ魚介ベースのタレに鶏肉を3日間浸けることにより、肉の臭みを消して魚介の旨味を浸み込ませ、柔らかく、風味豊かに仕上げている。「とり唐がぁドン」(800円)、「ネギ酢鶏唐がぁドン」(800円)、「とり(唐揚げ)カレー」(800円)といった丼メニューのほか、夜は「鶏唐揚げ」(680円)、「黒酢とり唐」(780円)などの酒肴としても提供している。

創業当初は丼メニューのみの提供で、19時ごろに閉店していた。しかし、お客からの要望で酒類を置くようになり、それに伴い、丼ものに使うアイテムを活かした酒肴も増やしてきた。現在、酒類は北海道産の地酒や焼酎に力を入れることで差別化を図っている。

野菜類も北海道産をメインに使っており、特に登紀子さんの出身地、中札内村の特産品の枝豆は、収穫後3時間以内に生のまま瞬間冷凍したものを年間通じて使用している。定番の「茹でたて枝豆」(500円)のほか、サヤを外した枝豆をたっぷり加えた「枝豆ギョーザ」(780円)も好評を得ている。

昼は客単価850円で、1日平均55人を集客。夜は客単価4000円で、平均客数は十数人だが、最近は宴会の需要が伸びている。1人4500円~のコース料理は、登紀子さんが幹事ときめ細かく打ち合わせし、そのグループに合わせながら、毎回内容を変えている。

同店がビジネス街での丼もの専門店として健闘している要因は、以下のようになるだろう。

  1. チャーシュー丼や鶏から丼といったオリジナル丼を提供している。
  2. 小盛りや豆腐換えなど、顧客の要望にきめ細かく対応している。
  3. 北海道産の酒類や野菜で差別化しながら、夜の居酒屋需要、宴会需要にも応えている。

「2人で経営しているので、お店を大きくしたいとか、2店舗目を出店したいという思いはないですね。それよりも顧客満足度を高め、より多くのお客様を笑顔で帰せるようにしたいです」と語る登紀子さん。まずは、客席をもう少しゆったりとさせ、居心地よくしたいというのが目下の課題という。

ど丼がぁドン
住所

東京都千代田区内神田1-5-7 村瀬ビル1F
TEL 03-3293-1010
営業時間
11:00~14:30(L.O. 土・祝~14:00)17:00~22:00(L.O. 月~金)
定休日
日曜日(土・祝は昼のみ営業)