飲食店物件探し

居抜き物件の造作譲渡について

居抜き物件の造作譲渡とは何か、メリットや注意点をお伝えします。閉店した飲食店を居抜き物件として人に譲渡する場合は、店舗の造作物を引き継ぐ「造作譲渡」という手続きが重要です。

廃業・閉店マニュアル 2017/07/12

居抜き物件の造作譲渡とは何か、メリットや注意点をお伝えします。閉店した飲食店を居抜き物件として人に譲渡する場合は、店舗の造作物を引き継ぐ「造作譲渡」という手続きが重要です。

造作譲渡を理解しよう

経営していた飲食店を閉めることになり、居抜き物件として次の経営者に譲りたい場合は、店内のインテリアや厨房機器などの設備を有償で「造作譲渡」できる可能性があります。物件の解約手続きをすすめる前に、造作譲渡についてしっかりと理解しておきましょう。

そもそも造作譲渡とは?

造作譲渡とは、店舗の造作物をそのまま残し、所有権を現在の経営者から新しい経営者へと譲り渡すことをいいます。造作物には、店の看板などの外装、家具などの内装、厨房機器やレジスターなどの備品、排水・排気設備などが含まれます。
居抜き物件の引き渡し条件は基本的に「造作譲渡あり」なので、大家との賃貸借契約とは別に、前経営者と新しい経営者で打ち合わせて造作譲渡契約を結ぶ必要があります。

一方、飲食店の閉店に伴って大半の造作物を廃棄処分したり、スケルトンに戻したりした場合は、その物件の引き渡し条件は「造作譲渡なし」となります。

いずれにしても、居抜き物件として造作譲渡をするかどうかは、現在の店舗経営者が決めることができます。造作譲渡をする場合は無償と買い取りの2つの方法があるので、買い取ってもらえそうな造作物を所有している場合には、造作譲渡金を設定します。

造作譲渡金はどういうもの?

造作譲渡金(造作譲渡料ともいいます)は、居抜き物件の造作譲渡契約後に、新しい経営者から前経営者に対して支払われるお金です。似た用語に居抜き料がありますが、造作譲渡金も居抜き料も、店舗を構成する主要な造作物に加えて、食器などの細かな備品も含めた買い取り料金を指すことがほとんどです。

造作譲渡金を高めに設定できるのは、物件の立地が良く引き合いが多いケースです。他には、とくに工事費がかさむ排水・排気設備が充実していて状態が良い場合や、造作物が新品同様の場合などです。
造作譲渡金はまとめて提示しますが、個々の造作物について査定する際は、減価償却資産の未償却残高を1つの目安とすることもできます。たとえば18万円で購入した冷蔵庫の耐用年数が6年で、すでに3年使っていて9万円を減価償却済みの場合は、まだ9万円の価値があるという考え方です。

ただし、いくら内装や設備が新しくても、買い取る人が不要と判断すれば廃棄処分する必要があるため、造作譲渡には価格交渉がつきものです。反対に、好条件な物件なら造作譲渡金が割高であっても仕方がないと考えることも少なくないので、最終的な売却金額は、立地や交渉相手によって大きく変わってきます。

造作譲渡にはこんなメリットが!

造作譲渡をする場合、どんなメリットがあるのでしょうか。造作譲渡金を撤退費用の足しにできることもその1つですが、それだけではありません。むしろ造作譲渡の大きなメリットは、譲渡金以外のところにあります。

原状回復のための時間とコストがかからない

物件の契約内容によっては、退去時に原状回復の義務があり、スケルトンに戻さなければならないことがあります。その場合も、居抜き物件として次の経営者に譲渡できれば、原状回復をする必要はなく、解体工事費用も時間もかかりません。たとえば、15坪程度の店をスケルトンにするのに100~150万円程度かかることもありますので、その費用をゼロにできるのです。造作譲渡をすることで大幅なコストカットが期待できます。

理想は、「明日からでも開業できる」状態で造作譲渡をすることです。居抜き物件は、同業態の飲食店をオープンしたい人から見ると、初期投資や時間を節約できるメリットがあるので、うまくいけば、お互いに大きなメリットがあります。

しかし、物件の契約希望者が現れるまで造作譲渡の交渉はスタートできませんし、退去期限が迫っているのになかなか譲渡相手が決まらないこともあります。そのため多くの経営者は造作譲渡料を値下げしたり無償にしたりして、造作譲渡契約を成立させることを優先します。それほど、造作譲渡によって原状回復を回避できるメリットは大きいと言えるでしょう。

解約予告期間の賃料負担が抑えられる

一般的に、飲食店の賃貸借契約では、解約の意思を6か月前から3か月前には予告して、契約期間内に原状回復工事や退店作業を終えなければなりません。しかし、造作譲渡契約が成立した場合は、原状回復工事の期間を取らなくてすむので、契約期間ギリギリまで営業できる可能性があります。結果的に、解約予告期間中に発生する家賃などの固定費の負担を軽減できることが大きなメリットとなります。

造作譲渡をするときに注意すること

造作譲渡をするときに、注意することを紹介します。造作譲渡のすすめ方を間違えると、「契約間近だったのに、破談になった」などの緊急事態を招きますので、最低限、次の点をしっかりと確認したうえで交渉をすすめてください。

物件オーナー(貸主)の承諾

店を居抜き物件として他人に譲るときは、物件の貸主であるオーナーに事前に賃借人が変わることを承諾してもらう必要があります。
また、オーナーが引き続き飲食店として賃貸するつもりがあるかどうかの確認も必要です。もしも、次は飲食店ではなく事務所として貸したいと考えていれば、造作譲渡を行うことができません。
造作譲渡契約は新旧の経営者同士で行うものなので、その内容に大家が関与してくることはないのですが、物件の賃貸契約が大前提となるので、これらの承諾を得ておくことが重要です。

現在の契約内容の確認

現在の契約内容をきちんと把握したうえで進行しないと、造作譲渡ができない物品を誤って処分して、損害賠償請求が発生する恐れなどがあります。必ず物件オーナーとリース会社との契約内容を確認しましょう。

物件オーナーとの契約内容

物件オーナーとの賃貸借契約については、「契約書」と「重要事項説明書」の両方をよく読み、とくに解約手続きの方法、造作物の所有権、原状回復の義務に関する記載に注意してください。
たとえば、解約手続きに不手際があれば、閉店時期を延長しなければならず、造作譲渡を約束した相手も予定通りに開店できない事態となります。最悪の場合、損害賠償請求に発展する恐れもあります。
また、造作物の所有権が物件オーナーにあり、それを無償貸与されていた場合は、勝手に売買したり処分したりすることはできません。
さらに、居抜き物件として譲渡すれば原状回復は必要ありませんが、原状回復義務そのものは新しい経営者に引き継がれるので、次に退去するときには原状回復が必要となる場合があります。このことを次の経営者によく理解してもらい、原状回復の範囲がどこからどこまでなのかを明確にして、将来的なトラブルの発生を防ぐことが大切です。

リース会社との契約内容

厨房機器などをリース契約していて、リース会社との契約期間がまだ残っていれば、造作譲渡した相手がリース契約を引き継ぐことになります。そのことを伝えずに造作譲渡契約を結ぶと、後々、リース料の支払いをめぐってトラブルが発生することが考えられます。
トラブル防止のために、あらかじめ造作譲渡品をリストアップし、リース契約中の物品とそうでないものを区別しておきましょう。リース以外のものについては、購入時期と耐用年数を記載しておくと親切です。
また、リストアップする過程で不要な造作物も出てくると思いますが、その処分費用を前経営者と新しい経営者のどちらが負担するのかも、あらかじめ決めておきましょう。
例えば、前経営者は「現況での引渡しだから、不用品の処分費用も新しい経営者が負担すべきだ」と考え、新しい経営者は「造作譲渡料を受け原状回復も回避できたのだから、不用品の処分費用くらいは前経営者に負担してほしい」と考えている場合、両者の考えがぶつかりトラブルにつながることがあります。

造作譲渡契約書の作成

造作譲渡契約書は必ず作成し、居抜き売買の専門業者や行政書士など立会人をつけるとお互いに安心して取引ができます。タイミングとしては、造作譲渡品のリストが完成し、金額面と引き渡し期日が合意に達した時点で作成し、契約を結ぶと良いでしょう。
造作譲渡契約書を交わさずに、物件の賃貸借契約書の特約として記載する場合もありますが、それでは相手から「やっぱり他の居抜き物件を契約することにした」などと言われて、土壇場で造作譲渡をキャンセルされてしまうリスクが発生しますので注意が必要です。

造作譲渡契約書に必ず記載すべき事項としては、主に以下のような項目などがあります。

  • 造作譲渡品リスト(リース契約の有無)
  • 造作譲渡料、引き渡し期日
  • 支払い方法と期限、遅延した場合のペナルティ(手付金を先に支払う場合もある)
  • 善管注意義務(この注意義務を怠った場合は、契約解除や造作物の買い取りを拒否すること要求ができる)
  • 危険負担(契約成立後に発生したリスクを、どちらが負担するかについて)
  • 契約解除の条件(契約違反などがあった場合について造作物の返還が要求できる)

契約書を交わしたのに相手が一向に入金してこない場合や、信用に関わる問題が発生した時、災害などにより契約の履行が難しくなった場合などに契約解除ができるような内容にしておきましょう。
また、念のため、賃借人の変更を大家が承諾していることや、原状回復義務が引き継がれることも契約書の中に書いておくのがおすすめです。

まとめ
飲食店を閉店し、居抜き物件として売却する場合、新しい経営者と造作譲渡契約を結ぶことになります。造作譲渡には、解体工事など飲食店の閉店にかかるコストや時間を削減できるメリットがありますが、トラブルが発生しやすく注意点もあります。現在の経営者と新しい経営者、そして物件オーナーとの間で食い違いが生じないように、事前確認をしっかりと行ったうえで交渉をすすめていくことが大切です。

監修者プロフィール
赤沼 慎太郎
行政書士赤沼法務事務所/アクティス株式会社 代表
行政書士、経営コンサルタント

起業支援、事業再生、事業承継の支援を中核に展開し、資金繰り改善、資金調達支援など、中小企業支援を精力的に行っている。そのコンサルティングは分かりやすく実践的な指導と定評がある。 2010年より税理士、行政書士等の専門家を対象とした財務コンサルティング勉強会『赤沼創経塾』を主宰。他にはない実務に基づいた実践的な勉強会として高い支持を得ている。 著書に 『はじめての人の飲食店開業塾』、『銀行としぶとく交渉してゼッタイ会社を潰すな!』 、『そのまま使える契約書式文例集』(以上、かんき出版)、『「危ない隣の会社」の資金繰り』(すばる舎)等多数。
(運営サイト)赤沼慎太郎公式サイト http://akanumashintaro.com/
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