飲食店物件探し

賃貸物件の「原状回復工事」とは?

賃貸物件で閉店するときは、原状回復工事をしてから退去することを契約で義務付けられていることが多いです。では、そもそも原状回復とは何なのか、原状回復の範囲や工事の内容などについて解説します。工事前にやっておくべきことについても記載。スムーズに原状回復工事を進めて、手間や費用を抑えましょう。

廃業・閉店マニュアル 2017/08/09

賃貸物件で閉店するときは、原状回復工事をしてから退去することを契約で義務付けられていることが多いです。では、そもそも原状回復とは何なのか、原状回復の範囲や工事の内容などについて解説します。工事前にやっておくべきことについても記載。スムーズに原状回復工事を進めて、手間や費用を抑えましょう。

まずは原状回復を理解しよう

原状回復とは、店舗の賃貸借契約を解消して退去するときに、内外装を契約時に取り決めた状態まで回復させることをいいます。賃貸物件の契約書に原状回復の義務条項が定められていれば、原則的に賃借人(借主)が原状回復工事を行って、その工事費用も負担しなければなりません。

どこまで回復させればいい?

物件の原状回復の範囲や程度は、それぞれの契約内容に応じて変わりますが、住宅用の場合とは異なり事業者同士の賃貸借契約では原状回復の範囲は広めに設定される傾向があります。
飲食店に関しては、スケルトンで借りた場合も居抜きで借りた場合も、契約書に「退去時はスケルトン戻し」と定められていることが多いので注意してください。

消費者契約法の適用と原状回復の範囲
区分 契約状況 消費者契約法の適用 原状回復の範囲
事業用(店舗・オフィス)賃貸 事業者同士の契約 なし 広い。通常損耗部分を超える原状回復の借主負担特約が適用される場合がある
住宅用賃貸 個人と事業者の契約 あり 狭い。借主(個人)に不利な内容の原状回復特約の無効の主張が可能

消費者契約法とは、消費者の利益を守ることを目的として制定された法律です。消費者と事業者の間には情報の質・量や交渉力に格差があるため、一定条件のもと締結された消費者にとって不利な契約は取消または無効を主張することができます。

契約書の原状回復の条件が「スケルトン戻し」の場合は、建物の構造体以外の内装設備を解体工事してから明け渡す必要があります。
一方、原状回復の条件が「契約時の状態に戻す」の場合は、原状回復の範囲(負担区分)を大家とよく確認する必要があります。

普通、賃貸住宅を退去するときは、通常損耗と呼ばれる部分(経年劣化や通常の使用による損耗)の修繕費は、毎月の賃料でまかなわれると考えることができます。
しかし事業用の賃貸物件は住宅に比べて損耗の程度が大きくなりがちで、カフェよりも焼肉店などの重飲食業態のほうが原状回復の範囲はより広くなる傾向があります。

たとえば店内のクロスが調理による油汚れやタバコのヤニで変色したり嫌な匂いがしたりする場合、原状回復の負担区分は大家と借主のどちらになるのでしょうか?
これは、借主が負担するケースが多いと考えられます。
クロスは日焼けなどで経年劣化しますが、タバコのヤニや臭いの付着は日々の手入れを怠ったことによる損耗とみなされ、原状回復の対象になる場合が多いです。

また、賃貸借契約書には特約の項目があり、物件オーナーは賃借人に対して、通常損耗の範囲を超えた原状回復義務を要求することもできるようになっています。

こうした細かな点については、国土交通省住宅局の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)」が参考になります。あくまで賃貸住宅用のガイドラインですが、揉め事が起きた場合に備えて一読しておくと良いでしょう。 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)

原状回復工事ってどんなことをするの?

原状回復工事には、店舗の内装解体工事、修繕工事、設備工事、スケルトン工事のほか、テナントの退去に伴って発生する廃棄物処理などの種類があります。
住宅賃貸の場合には、退去後の空室クリーニングは大家の負担で行われるのが一般的です。
しかし、店舗やオフィスなどの場合は、借主が負担するのが一般的であり、契約書にも書かれていることが多いです。
以下に、借主が行う主な原状回復工事の内容をまとめました。

内装解体工事
内装の解体工事を最初に行い、店内の装飾や設備などの造作物を撤去します。

修繕工事
内装解体工事が終わったら、床・壁・天井などの修繕を行って綺麗な状態にします。構造体の修繕のほか、クッションフロアーやカーペットの張り替え、クロスや障子の張り替え、ペンキ塗装などを行います。

設備工事
むき出しの状態になった配線を、漏電・ガス漏れなどの不具合がないかどうかも確認しながら整備する工事を行います。飲食店では給排水・吸排気設備の修繕や整備もウエイトの大きい工事となります。

スケルトン工事
建物の構造体以外の内装をすべて解体することをスケルトン工事といいます。内装解体工事と設備工事を行い、修繕工事は必要な範囲で行います。床や壁は基礎コンクリート剥き出しの状態、天井も閉じずに配線が見える状態に仕上げるのが一般的です。

廃棄物処理
廃材や廃棄物の処理は法律や条例に則って行います。処理方法を勝手に判断すると問題や違法性が発生することがあるので、信頼できる専門業者に任せることが大切です。

原状回復工事前にやっておくべきこと

スムーズに原状回復工事を進めるために、事前にやっておくべきことをご紹介します。以下に挙げる項目は、工事をするうえで非常に重要なので、必ず行ってください。

見積もりの前に建物の構造・配管を把握する

原状回復工事は、信頼のおける業者に頼まないとトラブルの元になります。何社か相見積もりをとって対応や費用を比較検討するようにしましょう。

その事前作業として、まず自分で建物の構造・配管をきちんと把握しておくことが大切です。これを怠ると、見積を依頼することが出来ませんし、解体してはいけない部分を解体して破損してしまったり、やらなくてよい工事をしてしまったりして、予定外の費用を請求される恐れがあります。
とくに、厨房設備の場所や給排水・吸排気設備を変更する場合は大掛かりな工事となり費用も小さくないので、明確な指示を出せるように準備しておきましょう。

また、造作譲渡したい備品や返却しなければならないリース品などを誤って解体したり、処分しないように注意しましょう。造作譲渡品とリース品は必ずリストを作り、要るものと不用品の区別がつくようにしておくことが大切です。

物件オーナーに原状回復の範囲を確認する

原状回復をどこまでやるのか、その費用は誰が負担するのか、という区分は分かりにくく、賃貸人(物件オーナー、大家)と賃借人(飲食店オーナー)の間で認識が大きく違うことが多々あります。

そのため、負担区分をあらかじめ確認しておかないと、退去時に揉め事が起こったり、借主が追加工事を発注しなければならなくなったりする恐れがあります。
また、賃貸借契約書に「原状回復義務あり(スケルトン戻し)」などと書かれていても、大家に交渉した結果、居抜き売却ができたというケースもあります。
居抜き売却すれば、解体工事費用を大幅に削減することができるので、居抜き売却や造作譲渡をできる可能性があるかどうか、確かめてみて損はありません。

物件オーナーとの確認・話し合いは、賃貸借契約書を元に進めますが、入居時に損耗があったかどうかが分かる写真資料などもあるとなお良いです。
入居時の資料がなくても、後でトラブルになったときに備えて、退去時に損耗や毀損の有無があったかどうかチェックした確認資料を作成し、大家と一緒に確認するようにしましょう。話し合いの場には、原状回復工事業者や、居抜き売却業者、宅建資格を持つ第三者などを立ち会わせるのも良い案です。
関係者間で「言った・言わない・聞いてない」といった食い違いの発生や、工事ミスを防ぐことができます。

まとめ
原状回復においては、賃貸人(大家)と賃借人(借主)の間で認識が違うためにしばしば、トラブルが発生することがあります。 その際、きちんと交渉をして損を被らないようにするためには、原状回復や物件の設備についてある程度の知識を持っておくことが大切です。今回紹介した基礎的な内容を抑えておき、スムーズに原状回復工事を進めましょう。

監修者プロフィール
赤沼 慎太郎
行政書士赤沼法務事務所/アクティス株式会社 代表
行政書士、経営コンサルタント

起業支援、事業再生、事業承継の支援を中核に展開し、資金繰り改善、資金調達支援など、中小企業支援を精力的に行っている。そのコンサルティングは分かりやすく実践的な指導と定評がある。 2010年より税理士、行政書士等の専門家を対象とした財務コンサルティング勉強会『赤沼創経塾』を主宰。他にはない実務に基づいた実践的な勉強会として高い支持を得ている。 著書に 『はじめての人の飲食店開業塾』、『銀行としぶとく交渉してゼッタイ会社を潰すな!』 、『そのまま使える契約書式文例集』(以上、かんき出版)、『「危ない隣の会社」の資金繰り』(すばる舎)等多数。
(運営サイト)赤沼慎太郎公式サイト http://akanumashintaro.com/

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