飲食店物件探し

譲渡所得とは?店舗を一括譲渡した場合にかかる所得税について

店舗を一括譲渡した場合、所得税はいくらぐらいかかるのか、譲渡所得と所得税の考え方について解説します。また、所得税の計算方法や、損失になった場合の対応方法も説明します。譲渡を考えている方、予定している方はぜひ計算してみてください。

廃業・閉店マニュアル 2017/08/31

店舗を一括譲渡した場合、所得税はいくらぐらいかかるのか、譲渡所得と所得税の考え方について解説します。また、所得税の計算方法や、損失になった場合の対応方法も説明します。譲渡を考えている方、予定している方はぜひ計算してみてください。

飲食店を譲渡する場合の所得税の考え方

移転や廃業などで飲食店として使っていた物件から撤退する際に、店舗の建物や内装、設備などをそのままの状態にして、新しいオーナーや借主に引き継ぐことを「居抜き譲渡」や「造作譲渡」などと呼びます。
譲渡した資産の譲渡価額が、資産を取得した際の資産の取得費と資産を譲渡した際にかかった費用(譲渡費用)の合計額を上回る場合には利益が発生します。このような譲渡で得た利益は「譲渡所得」に含まれるため、ほかの所得と同じく課税対象となります。
譲渡所得の金額や所得税を算出するには、「分離課税」と「総合課税」の2つの課税方法があり、譲渡した資産の種類によって課税方法が分けられています。
飲食店における譲渡の場合は、店舗の土地や建物を含む譲渡なのか、店舗内の各種設備等の造作のみの譲渡なのかによって、計算方法が変わってきます。
ここでは、飲食店の譲渡に関わる譲渡所得の課税方法とその対象となる資産について解説します。

2つの課税方式

分離課税
分離課税とは、特定の所得をほかの所得と分けて課税する方法です。土地や建物、株式などを譲渡した際の所得は、分離課税として税額を算出する必要があります。
飲食店の場合は、居抜き物件を土地や建物ごと売ったときに得た利益のうち、土地と建物にかかる所得のみが分離課税の対象となります。
また、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの、5年以下のものに区分して税金の計算をします。

総合課税
総合課税とは、ある所得をほかの所得と合算して税額を計算する方法です。
飲食店の譲渡の場合、造作譲渡によって得た利益が総合課税の対象となり、この計算には土地や建物の譲渡は含みません。総合課税の譲渡所得に含まれるのは、店舗で使用していた冷暖房設備や看板、造作のカウンターキッチン、照明などの造作です。ただし、洗剤などの消耗品や原材料の在庫などを譲渡して得た利益は、事業所得となりますので注意しましょう。
取得価額が10万円未満の少額減価償却資産、または使用可能期間が1年未満でその取得価額を事業の用に供した事業年度において必要経費に算入したものを譲渡した場合も譲渡所得には含まれず、事業所得に含まれます。
区分 課税対象 対象となる譲渡内容
分離課税 土地、建物 ・居抜き譲渡(物件+造作)の場合に物件のみ対象
総合課税 冷暖房設備、厨房設備、看板、照明、ネオンサイン、営業権(店名や従業員などを引き継いだ場合) ・居抜き譲渡(物件+造作)の場合に造作のみ対象
・造作のみ譲渡する場合

総合課税の計算方法

2つの課税方法のうち、造作譲渡で得た譲渡所得は総合課税の対象となります。
総合課税の譲渡所得は、資産を取得した日から売った時点までの“所有期間”によってさらに2つの計算方法に分けられています。
資産の所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」となり、所得金額の2分の1が総合課税の対象となります。また、資産の所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」となり、所得全額が総合課税の対象となります。所有期間の区分が、分離課税の場合と異なりますので確認しておきましょう。
造作譲渡する場合には、すべての造作をまとめた金額で売買することが多いと思いますが、所得税はそれぞれの所得年数によって分けて計算することを覚えておきましょう。
それでは、具体的に造作譲渡した場合の譲渡所得金額と、その所得税額の算出方法を解説します。
区分 所有期間 計算上の取り扱い
長期譲渡所得 5年超 1/2が総合課税の対象
短期譲渡所得 5年以下 全額が総合課税の対象
「No.1460 譲渡所得(土地、建物および株式等以外の資産を譲渡したとき)」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1460.htm)を加工して作成

①造作譲渡における譲渡益を算出する

まず、造作譲渡した際に得た金額を短期・長期の譲渡所得に分け、そこから取得費や譲渡する際に直接かかった譲渡費用などを差し引いて「譲渡益」を算出します。
計算式は以下の通りです。

短期譲渡所得の譲渡益=短期譲渡所得の総収入金額-(取得費+譲渡費用)・・・(1)

長期譲渡所得の譲渡益=長期譲渡所得の総収入金額-(取得費+譲渡費用)・・・(2)

総譲渡益=(1)+(2)

取得費
取得費とは、売った設備や造作を売主自身が購入した際に要した代金のことを指すのが一般的です。ほかにも、購入時にかかった手数料や、取り付け工事などにかかった費用、設備費、改良費なども含まれます。ただし、減価償却資産の場合は、購入費などから減価償却費の相当額を引いた金額が取得費となります。また、購入時の領収書などがなくて取得費がわからないという場合は、売った金額の5%を取得費として計算することが可能です。

譲渡費用
譲渡費用とは、造作を譲渡する際に直接かかった費用のことを指します。造作譲渡を専門業者に依頼した場合の仲介手数料や、売主が負担した印紙税などが含まれます。

②造作譲渡における譲渡所得金額を算出する

次に、総譲渡益から特別控除額を差し引き、「譲渡所得金額」を算出します。譲渡所得の総額だけでなく、短期と長期それぞれの譲渡所得金額を出しておくと所得税額の計算がしやすくなります。
計算式は以下の通りです。

譲渡所得金額=総譲渡益-特別控除額(最大50万円まで)

特別控除額
譲渡所得には特別控除が設けられており、短期の譲渡益と長期の譲渡益の合計から最大で50万円までの控除が受けられます。総譲渡益が50万円以上の場合は、まず短期の譲渡益から特別控除の50万円を引き、次に長期の譲渡益からこの譲渡益の金額を限度として、残った特別控除の金額を差し引きます。また、総譲渡益が50万円以下の場合は、特別控除により譲渡所得金額が0円となるため、課税されません。

③総合課税による税額を算出する

最後に、譲渡所得を含め、総合課税の対象となる所得金額を合計して税額を算出します。上で算出した譲渡所得金額のうち、課税対象となるのは、短期の譲渡所得金額は全額、長期の譲渡所得金額は2分の1です。 計算式は以下の通りです。

総合課税による税額=(総所得金額-所得控除の合計額)×所得税率

総所得金額
総所得金額とは、総合課税の対象となる所得をすべて合算した金額のことを指します。譲渡所得のほかに、給与所得や不動産所得、事業所得なども総合課税の対象となります。

所得控除
所得税額を計算する際には、各納税者の個人的事情を加味するために所得控除の制度が設けられています。個人的事情には、納税者に扶養家族がいる場合や、納税者自身が学生の場合などの事情が含まれます。
所得控除の種類には、医療費控除や社会保険料控除、生命保険料控除、配偶者控除、扶養控除などがあり、それぞれの条件によって定められている控除額を総所得金額から差し引くことが可能です。

所得税率と控除額

総合課税の所得税率と控除額は、課税される所得金額によって定められています。以下の表から税率と控除額を求め、計算に利用してください。
課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え 4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円
「No.2260 所得税の税率」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm)を加工して作成

なお、上記所得税に併せて復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1%)、と住民税(10%※)を併せて申告・納付することとなります。
※住民税の課税所得を計算する際に差し引く所得控除は、所得税の所得控除と少し異なりますが、おおよその目安になるでしょう。

譲渡所得が損失になったらどうする?

造作譲渡を行った場合に、総合課税の譲渡所得が損失(マイナス)となってしまう場合が多く見られます。譲渡所得が損失となってしまったときには、以下の方法で損失分を控除できる可能性があるので確認しておきましょう。

損益通算ができる

損益通算とは、譲渡所得金額などを計算して損失となった場合に、別の所得金額から控除することができる制度です。損益通算の対象となる所得は、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得となっています。
損益通算することで、利益の出ている所得から損失分を控除することができ、税額を抑えることが可能です。
ただし、店舗の土地や建物の譲渡で損失となった場合には、ほかの所得との損益通算はできませんので注意が必要です。

純損失の繰越控除ができる場合もある

青色申告を行っている個人事業主の場合、純損失の繰越控除を利用することができます。
これは、損失通算をしても譲渡所得の損失が控除しきれずに残ってしまった場合に、その損失額を翌年以降の3年間にわたって繰り越し、各年の所得金額から控除することができるというものです。

まとめ
造作譲渡を行う際には、譲渡所得や所得税額についても考えておくと、資金の目途がより立てやすくなります。税金と聞くと難しく感じますが、仕組みさえ理解してしまえば自分でも計算することができます。基本的には、税理士さんなどの専門家に任せたほうがよいでしょうが、自分でもおおよそ税額を知っておきたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。

監修者プロフィール
保坂 えみ
保坂えみ税理士事務所 代表
税理士、未来会計コンサルタント、認定経営革新等支援機関

中小企業である顧問先に月次決算、利益計画作成、融資の支援を行っている。特に、決算書を「未来を創造するためのツール」として活用しており、どこに手を打てば利益が出るかの指導に力を入れている。 最近ではクラウド会計導入でよりタイムリーな財務状況の把握ができるようになったと好評を得ている。
http://www.harukuru39s.com/

監修者プロフィール
赤沼 慎太郎
行政書士赤沼法務事務所/アクティス株式会社 代表
行政書士、経営コンサルタント

起業支援、事業再生、事業承継の支援を中核に展開し、資金繰り改善、資金調達支援など、中小企業支援を精力的に行っている。そのコンサルティングは分かりやすく実践的な指導と定評がある。 2010年より税理士、行政書士等の専門家を対象とした財務コンサルティング勉強会『赤沼創経塾』を主宰。他にはない実務に基づいた実践的な勉強会として高い支持を得ている。 著書に 『はじめての人の飲食店開業塾』、『銀行としぶとく交渉してゼッタイ会社を潰すな!』 、『そのまま使える契約書式文例集』(以上、かんき出版)、『「危ない隣の会社」の資金繰り』(すばる舎)等多数。
(運営サイト)赤沼慎太郎公式サイト http://akanumashintaro.com/

「飲食店の売却相談をする(無料)」

関連記事