飲食店物件探し

店舗明け渡しの手順や立ち退き時に気をつけること

飲食店の廃業が決まり、経営者が店舗を明け渡すときの手順・やるべきことについてわかりやすく解説します。また、店舗の「明け渡し」や「引き渡し」「立ち退き」の意味の違いや、突然立ち退きを告げられたとき、どのような対処をすべきなのかも解説します。

廃業・閉店マニュアル 2017/10/05

飲食店の廃業が決まり、経営者が店舗を明け渡すときの手順・やるべきことについてわかりやすく解説します。また、店舗の「明け渡し」や「引き渡し」「立ち退き」の意味の違いや、突然立ち退きを告げられたとき、どのような対処をすべきなのかも解説します。

「明け渡し」とはどういうこと?

明け渡しとは、建物や空間などの占有権を貸主(オーナー)に返すことを意味します。
建物の占有権は、建物の持ち主ではなくても、事実上所持する権利を持っている人に対して発生します。賃貸物件なら賃貸借契約を結んだときに貸主(オーナー)から借主へと占有権が移り、契約が終了すると再び貸主(オーナー)へと戻ります。

明け渡しの重要なポイントとして、「占有権を返すときは建物内から所有物を全て撤去する必要がある」ので注意しましょう。つまり、引っ越しをして貸主(オーナー)に鍵を返した後でも、借主である自分の荷物や家具などがまだ残されている間は、明け渡しが完了したとは認められません。

明け渡しと混同されやすいのが「引き渡し」です。物件や空間だけでなく物品などの占有権を渡すという意味もあるため、建物内に借主である自分の所有物が残っていても、退去と鍵の返却が終われば引き渡し完了となります。

もしも貸主(オーナー)や不動産会社から、なかば強制的に店舗の明け渡しをさせられた場合は、明け渡しではなく「立ち退き」と表現されるのが一般的です。

明け渡し・引き渡し・立ち退きの違い

ここまでのおさらいとして、明け渡し・引き渡し・立ち退き、それぞれの用語の意味の違いを表にまとめました。
用語 意味
明け渡し 建物内にある所有物を全て撤去して返還すること
引き渡し 建物から退去して返還すること(所有物は残置したままでもよい)
立ち退き 明け渡しと同義。ただし貸主(オーナー)など所有者から強制されるニュアンスを含む

正当事由がなければ立ち退きをしない、もしくは立ち退き料をもらう

貸主(オーナー)から、明け渡しの打診や立ち退き要求があったときは、即決せず、その理由をよく確かめてください。
明け渡し請求に正当事由がなく、借主に非がなければ、立ち退きを拒否できます。また賃貸借契約書に「契約期間が満了すると契約更新できない」などと記載されている場合でも、立ち退きの申し入れには正当事由が必要です。
正当事由の例としては、建物の老朽化や倒壊の危険性などがあります。
さらに契約解除を了承する場合は、貸主(オーナー)から「立ち退き料」が支払われるケースもあります。

物件の借主は借地借家法で保護されていますので、立ち退き要求があったときに契約更新を請求したり、立ち退き料の受け取りを主張したりすることができます。しかし、家賃の長期滞納などの契約違反をしていたうえに立ち退きを拒否すれば、貸主(オーナー)から明け渡しの強制執行をされる可能性もあります。

「立ち退き料」は、店舗の移転にかかる費用・引っ越し代・借主が投資した造作物などの買取額・営業できない期間の売上補償など、様々な項目を勘案して算出されることが多いようです。受け取れる金額は、借主が移転先で飲食店経営を続けるかどうかによっても変わるなど、相場と言うものはなく、ケースバイケースです。
なお、もともと廃業予定がなく、愛着ある土地で店を続けられないとなれば借主の精神的なダメージも大きいと思われますが、移転費用以外の損害賠償を求めるのは難しいです。
立ち退いた後で「やっぱり納得がいかない」と合意内容をくつがえすことも困難なため、事前に貸主(オーナー)・借主の間でよく話し合いましょう。

明け渡し決定後の、やるべきこととその手順

明け渡し終了までに行う4つのステップについて解説します。
退去後に問題が発覚したり、原状回復の追加工事が発生したりすると、手間も費用負担も増大しますので、計画的に進めることが肝心です。

①賃貸借契約書の確認

契約解除の際は、まず賃貸借契約書で、解約予告期間や明け渡し条件を確認しましょう。

解約予告期間はどれくらい?
一般的な賃貸借契約書には、解約予告についての記載があります。解約予告とは、事前に借主が貸主(オーナー)や不動産会社に対して解約する日を通知することです。この解約通知をしなければならない期間を解約予告期間といいます。例えば解約予告期間が6カ月の場合は、退去する日の6カ月前までに解約通知をしなければならないということです。

明け渡しの状態は?
店舗を明け渡す際は、所有物の撤去だけでなく、入居時の状態まで原状回復をすることがほとんどです。工事内容は契約時の取り決めによって異なるため、内装などの造作物を修繕して明け渡す場合や、スケルトン状態で明け渡す場合などがあります。これも契約書の記載を見たうえで、詳細は貸主(オーナー)と確認しましょう。

②賃貸契約の解約予告を行う

解約予告を行う期間や明け渡しの状態についての確認ができたら、貸主(オーナー)や不動産会社に連絡し、明け渡し手続きの不明点や退去までのスケジュールを確認します。

貸主(オーナー)や不動産会社へ連絡
貸主(オーナー)や不動産会社に解約の予告を通知します。トラブルを防ぐためにも、書面で通知するのがよいでしょう。また、解約手続きのスケジュールでわからないことをリストアップし、家賃をいつまで支払うのかなどを聞いておきます。そして、原状回復の具体的な打ち合わせに入りましょう。

原状回復工事の見積もりを取る
原状回復工事の見積もりは、貸主(オーナー)から業者の指定があったとしても、数社から相見積もりを取るべきです。指定業者の見積もりがあまりにも高いようであれば、他の業者の見積もりを見せながら貸主(オーナー)に交渉してみるとよいでしょう。また、不要な工事や撤去をしないように業者との打ち合わせは現場で行い、貸主(オーナー)にも一度は立ち会ってもらうと安心です。

③明け渡しの準備

店舗には備品や所有物を残すことができない場合が多いので、必要のないものは撤去して処分しなければなりません。廃棄は、必ず法律や条例に則って行いましょう。また、有料の引き取り先だけでなく、無料で譲る方法を探すのも一つの手です。

食器類の処分
量はたくさんあっても換金は難しいのが食器類です。まずは飲食店専門・中古専門の業者をあたってみて、難しいようであればリサイクル業者や中古品専門ショップなどの無料の引き取り先を探してみましょう。引き取り先が見つからない場合は、ガレッジセールやフリーマーケットに出品する方法などもよいでしょう。

厨房機器の処分
厨房機器は、飲食店専門・中古専門の業者が買い取ってくれる可能性があります。しかし、あまりにも年数が経過してしまっている場合や状態が悪い場合は買い取ってもらえない場合もあります。その場合は有料で業者などに処分を依頼することになります。

電気・ガス・水道・リース契約などの解約・清算
光熱費関係の停止や支払い方法の変更先はバラバラで意外と手間がかかります。電話のほか、インターネット上からも手続きできるので積極的に利用しましょう。また、リース品は原則途中解約ができません。リース料の支払いが残っている場合は、残期間のリース料またはそれに相当する違約金を一括で支払う必要があります。あらかじめ金額を算定確認し、立ち退き料の対象にしてもらえないか貸主(オーナー)に交渉してみるとよいでしょう。
これらは遅くとも退去の2~3週間前には手続きをします。

原状回復工事
原状回復工事の費用は、原則、借主の負担となります。店舗を明け渡すときはスケルトンで戻さなければいけないケースも多く、構造体を残してすべて撤去するため工事費用が高くなりがちです。空調や排気ダクトの配管なども元通りにすることが求められます。
賃貸物件の「原状回復工事」とは?

④明け渡し

明け渡しは、借主の所有物が撤去されて空き部屋となり、なおかつ鍵が返却されて貸主(オーナー)による占有が可能になった時点で完了します。

立ち合いと鍵の受け渡し
明け渡す当日は、借主と貸主(オーナー)が立ち会いのもとで最終確認し、鍵の返却も手渡しで行います。その際、明け渡しの合意書(貸主(オーナー)や不動産会社側が作成する明け渡し証明書のようなもの)を交わすことがあります。書面には決められたフォーマットがあるわけではありません。自分で内容をしっかりと確認して、納得してから署名捺印するようにしてください。

明け渡しで気をつけること

明け渡しで特に気をつけたいのは、後で追加工事や出費が発生しないようにすることと、立ち退き料などの合意内容についてトラブルが起きないようにすることです。

原状回復工事の費用は借主・貸主(オーナー)双方で確認する

原状回復については、契約時の内装がどうなっていたか、記憶があいまいなまま進めると大問題に発展しやすいです。また、工事の内容や費用負担について、貸主(オーナー)側が了承していない部分があると、明け渡し後に追加工事などを要求され、その費用でもめることになりかねません。
原状回復の範囲(負担区分)は費用に大きく影響するので、必ず工事前に借主・貸主(オーナー)双方が現場を一緒に見ながら確認をしてください。

原状回復工事にかかる期間を把握しておく

原状回復工事は「明け渡しの期日まで」や「契約終了日まで」に終えるように求められるのが一般的です。工事期間を把握し、余裕を持って実施しましょう。「原状回復はいつまでにやるべきだ」という感覚が貸主(オーナー)とズレているとトラブルが発生しやすいようです。そのため店舗を明け渡すことが決まったら、すぐに貸主(オーナー)や不動産会社に連絡を入れて相談しましょう。

まとめ
飲食店の廃業に伴う店舗の明け渡しに必要な手続きを紹介しました。なかには、突然明け渡しを要求され、よく考えずに仕方なく廃業を決める経営者もいます。貸主(オーナー)からの立ち退き要求には正当事由が必要なため、正当事由がなければ借主は明け渡しを拒否するか、立ち退き料を受け取ることができます。しかし、立ち退き料につられて事を急ぐと、かえって費用がかさむ恐れがありますので、手順を踏んで確認しながら進めてください。面倒でも、契約解除に至るやり取りはできる限りメモや書面に残しておくことをおすすめします。

監修者プロフィール
赤沼 慎太郎
行政書士赤沼法務事務所/アクティス株式会社 代表
行政書士、経営コンサルタント

起業支援、事業再生、事業承継の支援を中核に展開し、資金繰り改善、資金調達支援など、中小企業支援を精力的に行っている。そのコンサルティングは分かりやすく実践的な指導と定評がある。 2010年より税理士、行政書士等の専門家を対象とした財務コンサルティング勉強会『赤沼創経塾』を主宰。他にはない実務に基づいた実践的な勉強会として高い支持を得ている。 著書に 『はじめての人の飲食店開業塾』、『銀行としぶとく交渉してゼッタイ会社を潰すな!』 、『そのまま使える契約書式文例集』(以上、かんき出版)、『「危ない隣の会社」の資金繰り』(すばる舎)等多数。
(運営サイト)赤沼慎太郎公式サイト http://akanumashintaro.com/

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