2016/01/19 特集

場所が悪くても人は来る! 立地に負けない繁盛戦略

近年、いわゆる悪立地ながら連日賑わう店も少なくない。現在の外食業界にとって、立地が持つ意味とは、そして悪立地に負けない店づくりとは? フードビジネスコンサルタントの石田義昭氏に聞いた。

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かつて、「飲食店は立地が7~8割」と言われ、店がある場所の良し悪しが繁盛の大きな決め手とされた。だが近年、いわゆる悪立地ながら、連日賑わう店も少なくない。現在の外食業界にとって、立地が持つ意味とは? そして、悪立地に負けない店づくりには何が必要なのか? フードビジネスコンサルタントの石田義昭氏に聞いた。

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立地の価値は時代で変化。繁盛の絶対条件ではない!

株式会社FBA 代表取締役 フードビジネスコンサルタント 石田義昭 氏
経営コンサルタントとして約30年、「無敵の飲食店づくり」をテーマに、国内はもちろん、海外進出における経営支援なども行っている。「顧客誘導と飲食店経営」を理論体系化し、3~5坪の小さな店から大型店まで、1500店以上を直接指導。超繁盛店や多店舗展開する企業を多数輩出。10年以上の指導を受ける顧問店も数多い。さらに、大規模な商業施設のプロデュースなども手がけ、飲食関連企業の講演、セミナー、執筆など、幅広く活躍している。

確かに、飲食店にとって立地は非常に大事なもの。しかし、「いい立地は繁盛するための有利な条件ではあっても、絶対条件ではない」と、コンサルタント・石田義昭氏は指摘する。もちろん、そこに出店するだけで人が入るという立地はあるが、それでも、ずっと入り続けるとは限らないからだ。逆に2等立地や3等立地と言われる場所立地の価値は時代で変化繁盛の絶対条件ではない!でも、店の取り組みいかんでは、集客に成功することは十分可能であり、「そうなれば、そこが店にとっての1等立地になる。2~3等立地を1等立地に変える力が、飲食店にはあるのです」(石田氏)と、断言する。

しかし、立地を十分に検討しないまま出店し、「悪い立地」を理由に撤退しているケースが多々あるのも事実。その一方で、家賃の高い1等立地を避け、あえて2~3等立地に挑んで成功を目指す経営者も少なくない。石田氏は、「商売には育成期と全盛期があるが、立地も同じで、どんな立地も時代の流れのなかで変化するもの」と語る。商業施設が1つできれば、人の流れが変わることも。悪い立地がいい立地に変わることもあれば、当然その逆もあるので、油断は禁物だ。

「特に近年の外食業界は、乱立と飽和の状態。以前は、お客側にも『1等地にある店はいい店』など、立地に対する信頼があり、それが集客にもつながっていました。でも、現在の乱立状況では、1等地にも様々な店があり、立地だけで飲食店を選ぶことは少なくなっています」と石田氏。立地に対する信頼が崩れ、立地よりも「店そのものの価値」で飲食店を選ぶ傾向は、ますます顕著になっている。だからこそ、店の場所がいい立地でなくても、繁盛店になることは可能なのだ。

では、立地に負けず、繁盛店になるための戦略とはどのようなものなのだろうか。次ページから、飲食店にとっての立地の考え方を再確認し、立地状況や特性の調べ方、さらに、悪立地を克服するためには、どのような取り組みが必要なのかを見ていこう。

めくるめく

基本的知識を押さえつつ、自店の商圏を調査する

まず、飲食店の立地について、基本的な知識を押さえよう。下の表「飲食店の出店エリア分類」は、飲食店が出店を決めたり、戦略を考えたり、練り直したりするときに必要な知識だ。

「簡単に言うと、『アーバン』は市街地、『サバーブ』は郊外の住宅地です。アーバンの核は、駅に隣接する商業施設です。駅から人が湧き出て、その商業施設を利用する人の流れなどが生まれ、『駅核商圏』を形成します。一方、サバーブで核となるのは、主に郊外の大型ショッピングセンター。これを中心とした道路網に沿って『大型商圏』ができていきます」と石田氏。すなわち、アーバンの場合は回遊する歩行者動線、サバーブの場合は、車両動線に沿って商圏が形成されることになる。

さらに石田氏によれば、「1等立地、2等立地というのは、客動線の誘導比率のこと」。商圏の核から出てくる人(車)の流れのうち、もっとも大きい流れが「主流動線」で、この沿線が1等立地。主流動線から外れた表通りが「副流動線」で2等立地。副流動線から分かれた枝流は「路地」で、この路地からさらに外れたところが「路地裏」となる。ただし、主流動線でも、1等立地は路面店だけ。2階は副流動線と同じく2等立地、地下は2・5等立地、3階以上はすでに路地裏と同じだという。「つまり、どんなに駅に近くても、主流動線から外れていれば1等立地とは言えません。だからこそ、立地を考える際には、物件情報も加味するべきなのです」(石田氏)。たとえ店から見えるほど駅が近くても、主流動線や副流動線から外れていたり、階上物件の場合は、それを認識したうえで、戦略を立てなければいけないのだ。

こうした基本知識を念頭に、自店のエリアを細かくリサーチすることも、立地克服のために必要だ。石田氏は、次のようなリサーチ方法をすすめる。

まず、「どんな人がどのくらい、店の周りにいるか」の調査。歩行者動線がメインのエリアは、店まで歩きで往復しても、遠いと感じない距離(半径300~350メートル程度)が第1次商圏。車両動線がメインのエリアは、車で5分程度の距離が第1次商圏の目安になる。各自治体の統計課(統計資料課)などでは、3年に1回ほどのペースで「町丁別人口」「年齢別人口」といった調査を行っているので、ここから第1次商圏内のおよその人口と年齢の分布を割り出せる。さらに、「就業人口」を見れば、昼間の人口を推測することも可能だ。また、商工会議所や自治体の商業観光課などが「買物動向調査」を行っている場合も。売れている商品に注目すれば、住民の所得水準や生活様式、価値観などが推し量れる。

マーケットの動向を知るには、行政資料室が発表する「消費動向調査」、交通量や通行量は、自治体の交通対策課か警察に問い合わせてみる。Webで入手できる資料も少なくない。

一方、自分の足を使った調査も重要だ。歩く人々の服装、持ち物、買物袋の種類、通行する車の車種などをよく観察すると、統計数字ではわからないエリア住民の姿が見えてくる。

さらに、競合店の調査。これも自分の足で見て回ることが大切。「ここで忘れてはいけないのが、コンビニエンスストアとスーパーマーケットの食品売り場や試食コーナー」(石田氏)。弁当、惣菜などの品ぞろえや客層を見れば、住んでいる人やニーズを具体的につかめる。また「最近のスーパーのなかには、ワイン棚に銘柄ごとの味の特徴を掲示したり、それぞれのワインに合わせたチーズや料理を一緒に販売する店もある」(石田氏)。小売店がここまで工夫しているのだから、飲食店はそれ以上のサービスを提供できなければ、生き残れない。競合するのは、ほかの飲食店だけではないのだ。

飲食店の出店エリア分類

【アーバン urban】

人々が最初に住み着いて住宅地を形成し、その地を中心に街が栄えていった古くからの市街地。都市化が進んでおり、人は多いが地価が高いため郊外への人口流出も見られる。歩行者動線が発達しており、駅や大型商業施設を中心に人通りは多いが、高い地価のため事業採算性が悪いことも多い。

【サバーブ surburb】

古くからの都市に隣接し、原野や田園、農地、山林などを切り開いて、新しく造られた郊外の市街地・住宅地。都心から流入する人が多く、人口は増加傾向。生活のための移動手段は、車が主流というのが大きな特徴で、大型モールなど商業施設の進出も多く、そこを中心とした道路網が重要になる。

【ルーラル rural】

農村エリアで、いわゆる田舎。サバーブエリアの外側に広がる自然豊かな一帯を指す。目立った施設もなく、住宅・人口も少ない。そのため、飲食店や小売店の出店エリアとしては適さないが、競合店がほとんどないことから、あえてこのエリアに出店し、“唯一の店”として成功している例もある。

「わざわざ立地」の店に誘導するには、“感動価値”のある店づくりが大切!

自店の強みを強化して、立地に負けない店を!

こうした立地分析は、本来は新規出店の際にぬかりなく行うべきこと。あらかじめその地域にどんなニーズがあり、どんな店が繁盛しているのかがわかれば、戦略が練りやすくなり、失敗のリスクを小さくできる。

とは言っても、「街とは繁盛⇒衰退⇒再生を繰り返すもの。それに伴って立地の特性も常に変化する」(石田氏)。だから、立地への関心を持ち続けるとともに、集客に苦戦したとき、悪立地だからとすぐに諦めてはいけない。

「例えば、ファミリーを狙って出店したが、予想外にカップル客が多いときは、思い切って空間やサービスをカップル向けにすることで、苦境を脱する例も珍しくありません」と石田氏。店の商品・空間・サービスを、現在の立地の特性に照らし合わせて検討し、ブラッシュアップし続けることが大切だ。

同時に、店への誘導機能のチェックも必要。周囲の建物の高さが変わり、看板が見えにくくなっていることもあるので、「看板やのぼり旗などの位置や色を点検し、アクセシビリティ(近づきやすさ)を高めることを忘れてはいけません」(石田氏)。また、看板や旗などは、ずっと同じでは風景の一部になって人の目に止まらなくなる。「1カ月に1度は、位置や色を変えるといった工夫も大切」(石田氏)だ。

しかし、主流動線からも副流動線からも完全に外れた路地や路地裏にある場合は、わざわざ店に来てもらうための特別な努力がどうしても必要になる。石田氏はそうした立地を「わざわざ立地」と呼び、「『わざわざ立地』の店は、感動価値(下の表参照)がなければ、集客できません」と言い切る。では、「わざわざ立地」の飲食店に必要な感動価値とは、どうやって生み出せばよいのだろうか。

石田氏は1つの方法として、「①商品、②サービス、③店づくり(コンセプトや空間など)、④戦力(人材)の4つの視点で店の強みと弱みを書き出し、特に強みに注目して、それを徹底的に強化することで、見えてくるものがある」とアドバイスする。

なかでも重視すべきは、やはり商品力だ。「新たなヒットメニューをよりスピーディに開発するためには、外食のトレンドや、他店の成功事例を研究し、自店の強みに合わせてアレンジすることも近道」と石田氏。また、「SNSでの拡散を念頭に、見た目のインパクトを重視することも有効」と語る。

もちろん、感動価値の創出は簡単なことではない。しかし、「努力して集客のきっかけをつかんだ店は、加速度的に繁盛していく」と石田氏は諭す。「こんな場所にこんなにいい店がある」という情報は価値が高く、拡散速度も速いからだ。デメリットと思われた立地をメリットに変えるのは、飲食店自身の戦略にほかならない。

飲食に必要な3つの価値

【①基本価値】

外食として許容されるきちんとした料理を、その質と量に見合った価格で食べられるという、飲食店としての基本的な価値

【②期待価値】

なくてもクレームにはならないが、来店客の「~だったらもっとうれしいなあ」という願望を満たしてくれる価値

【③感動価値】

基本価値、期待価値を満たすだけでなく、客が予想もしなかったこと、期待を超えるものを提供できる価値

[事例紹介]駅から離れたロードサイドで、子供連れの女性たちを中心に遠方からも訪れる人気店!

【熊本・南区近見】野菜倶楽部 Belle Vege CAFE

開放的な座敷席。子供連れにとって使い勝手がよく、予約が取れないほどの人気

充実したビュッフェと広々とした空間が大好評

「野菜倶楽部 Belle Vege CAFE」は、最寄りのJR平成駅から車で約8分、熊本市の中心街からも車で10分以上かかるロードサイドのカフェレストラン。郊外店としても決して恵まれた立地とはいえず、「現在の店になる前は寿司業態。その前もいくつか違う業態を経ています」と、ホール責任者の出口智基氏は語る。

決して簡単ではないこの立地で、経営する株式会社坂本にとって初となるカフェ業態をオープン。出店にあたってのコンセプトは、「大人の女性がゆっくりできる店」だったという。

ところが、いざ開店してみると、小さい子供を連れた若い母親たちに好評で、口コミで認知が拡大。特に子供連れが使いやすい、広い小上がりの座敷席は、ランチを中心に予約がとれないほどの人気だ。そのほか、主婦のグループなど女性の利用が多く、ウエイティングが出ることも珍しくない。

もう1つの人気の理由は、ランチとディナーで提供しているビュッフェの圧倒的なお得感だ。新鮮な野菜を使ったメニューだけで20種類以上。そのほか、ご飯類、パン類、カレー、スープ、フレンチトースト、パンケーキ、子供向けのポップコーンなども用意し、ドリンクも10種類以上が飲み放題で、なんと1080円。さらに昼は、「日替わりランチ」(1134円)など、5種類のランチメニューすべてに、このビュッフェが付いてくる。

ディナーの場合は、ビュッフェをオーダーすると、アラカルトメニューが単品で頼んだ時と比べて最大500円以上安くなるサービスも。また、子供用にハーフサイズのメニューも用意。入店すると、こうしたシステムを、スタッフがていねいにわかりやすく説明してくれるのも好印象だ。

「お客様の意見を聞いてブラッシュアップを重ね、メニューも徐々に増やして、現在のかたちになりました」と語る出口氏。心がけているのは、「選択肢を増やすこと」(出口氏)。当初、昼より価格が高かったディナービュッフェを、1年前にランチと同価格に改定。また、「日替わりランチ」以外も季節や旬を意識して、随時メニューを入れ替え、飽きさせないようにしたり、しっかり食べたい人にも満足してもらえるよう、肉料理を増やすなど、客目線で使い勝手を追求してきた。

空間は、小上がりの座敷席以外も魅力的だ。店内は天井が高く、開放的。テーブル席も各テーブルの間隔を広く取り、ベビーカーや車椅子でもスムーズに動けるように工夫している。

「この立地ですから、常連客の獲得と来店頻度のアップは必須。また、ロードサイドにあるため、店の存在は知っていても入店したことがない人を、いかに来店に結びつけるかも課題」と出口氏。そのため、より様々なシーンで使える店になることと、新規客が利用しやすくなる方法を模索中だ。最近では、初めて来店する子供連れに小上がりの座敷席を体験してもらうため、予約で埋めないようにしているという。

「今後の目標は、客足が鈍るカフェタイムの集客と、ディナータイムの売上の安定化」と出口氏。立地に左右されない、一層愛される店を目指す。

ランチタイムを中心に、子供連れの女性たちが数多く来店する
座敷席の隣にはキッズルームも設置。ママたちはゆっくりおしゃべりを楽しみながら、食事に飽きた子供たちを遊ばせることができる
野菜だけで20 種類以上ある充実したビュッフェ。季節感を意識し、新鮮な野菜をたっぷり食べられるよう工夫
写真左のジャーから白米、炊き込みごはん、トマトカレー、野菜スープ。後ろにはオーブンを使って焼けるパンとポップコーンも
パンケーキやフレンチトーストは焼き立てが並ぶ。店内のブースで焼いている様子を見ることもできる
平日限定20 食の「日替わりランチ」。この日は、エビフライとコロッケにサツマイモのポタージュが付く
昼はランチメニューすべてにビュッフェが付く。システムはスタッフがていねいに説明
人気の「ランチパスタ」(1,296 円)。この日は「明太子」。ソースも和風かクリームを選べる
店内では、店で使う野菜などを販売し、安心・安全をアピール。帰りに購入する人も多い
夜のメニューブック。ビュッフェをオーダーすると、ハンバーグなどのアラカルトメニューが格安になる
ホール責任者
出口智基 氏岡山県内のコーヒー専門店で14 年働き、バリスタの資格を取得。その後、イタリアンレストランなどを経て、2013 年12月より現職。

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