2021/07/20 特集

イチから始めるゴーストレストラン~飲食店のための導入ノウハウ~(2ページ目)

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どんな準備をすればいい?

周辺エリアと競合の分析を基に“勝てるメニュー”を見つけ出す!

 ゴーストレストランを始めるにあたって、どんな準備が必要なのだろうか。自社で業態開発するにしろ、FCのブランドを運営するにしろ、まず決めなければいけないのが、「どんなメニューを売るか」だ。ただ、競合の数や周辺エリアに住む(もしくは勤める)人の層などによって戦略は大きく変わる。まずは、「『Uber eats』などを検索して、周辺エリアでどんなデリバリー業態が多いのかをチェックするのが第一歩」と牧本氏は語る。「唐揚げ」「丼もの」「スイーツ」など、さまざまなジャンルがあるので、周辺にある店舗のジャンルを100店舗分くらい書き出し、競合の数から競争率の高くないメニューを分析するとよい。

 次に、ターゲットの見極めも重要なので、周辺にどんな人が住んでいるかを調べるのもポイント。自店を中心に半径2km圏内くらいについて、各自治体が公開しているデータなどを参考に細かく調べると見えてくるものがあると牧本氏は語る。「デリバリーを多く使う世代のコアゾーンは、20~49歳なので、この年代の人が多く住んでいるエリアであれば、ニーズは特に高いです。また、1人世帯の数もチェックポイント。1人暮らしの学生が多いエリアは、味が濃いものや丼ものの人気が高くなる傾向があります。逆に1人世帯数が少なく、ファミリーが多いと、子どもが好きなものやヘルシーなメニューへのニーズが高まります。そのほか、人口に対する飲食店の事業所数の割合も、競合店との競争率を図る指数になります」(牧本氏)。ただ、こうした情報を細かく正確に調べるのは簡単ではない。飲食店の場合、近隣に住んでいる人や勤め人などと店内営業で接する機会があるため、来店客との会話から情報収集を行えば、エリアの特徴が把握でき、メニューを決める参考にもなるだろう。

 合わせて、メニューを決めるときに重要なのが、調理時間だ。「デリバリーのユーザーは、①何を食べたいか、②配達時間は何分か、という順番で店を絞り込んでいく傾向が強いです。その際、注文から届くまで30分以上かかると選ばれる確率はかなり下がってしまうので、30分から配達時間を差し引いて、調理は10分以内に終わらせるのがベター」と牧本氏。株式会社バーチャルレストランで展開しているブランドでは、仕込みでほとんどの調理を行っておくことで、注文から5分以内に調理が完了するようにメニューを開発しているという。メニューを開発するうえで、いかに調理オペレーションを簡略化できるかは成功のカギといえる。

 その他のテクニックとして、店内営業が忙しくなる時間帯にデリバリーの注文が殺到するのを防ぐため、カフェタイムにニーズが高まる軽食系のメニューをデリバリーの主力商品にすることで、アイドルタイムに多く注文が入るようにする方法もある。また、「普段仕入れているこだわりの食材や、料理人のアイデアを生かした独自のメニューで差別化することもポイント」と牧本氏は語る。

 ただ、いずれにしても気を付けなくてはいけないのは、店内営業とは異なり、“できたてでないとおいしくない”メニューは避けるべきだということ。利用客が食べるのは調理から20~30分後。時間が経つと伸びてしまう麺類など、商品価値が著しく下がってしまうメニューは相当な工夫が必要だろう。また、価格については、メニュージャンルを見極める方法と同様に、ターゲットとなる客層や競合を分析して決定したい。「周辺エリアの競合の価格帯をチェックし、その価格の-100円~+100円の範囲を目安に考えるとよいでしょう」と牧本氏は語る。

店内営業のピーク時にデリバリーの注文が殺到してしまうと、一気にオペレーションに負荷がかかる。アイドルタイムに注文されるような軽食系のメニューをデリバリーの主力にするのも飲食店が運営する上でのテクニックの一つ。写真は「Crazy Waffle」(株式会社バーチャルレストラン)

 そのほか、包材の選定も重要な要素。「崩れない」「漏れない」はもちろん、素材やパッケージのビジュアル、取り出しやすさもポイント。「せっかくメニューは作り込んであるのに、パッケージや盛り付けなどが雑で、“片手間感”が出てしまうと台無し。飲食店にとってはサイドビジネスのゴーストレストランでも、消費者からすると“デリバリー専門店から購入した”という期待値があります。盛り付けで手を抜いていたり、コストを優先するあまり包材が安っぽいと満足度が下がってしまい、2度と注文してくれない可能性もあります」と牧本氏は指摘する。

 加えて、法的なところで気を付けなくてはいけないのが、営業許可。アルコールなどを販売する場合は、店内営業とは別に販売許可を取らなくてはいけないものもあるため、必ずチェックしておきたい。これからの季節は、感染予防を含めた衛生管理を徹底し、食中毒などにも気を配るのはもちろん、自店が入っている保険の内容もチェックしてほしいと牧本氏は語る。「保険の内容によっては、店内営業で発生した食中毒などの事案は対象になっていても、屋号が異なる別ブランドのデリバリーは補償の対象にならないケースもあります。万が一に備えて保険の内容を見直しておいたほうがよいです」(牧本氏)。

FCブランド導入のメリットは?

業態変更しやすいゴーストレストランは、FC導入の方がメリットは多い

 前項で触れた準備は、自店で業態開発をする場合を想定したものだが、「全くノウハウがないのであれば、既存のFCブランドを導入する方がはるかに楽ですし、メリットも多い」と牧本氏。出店までのスピードもぐっと上がり、ノウハウや包材、盛り付けといった部分もマニュアルで確立されている。さらに、「FCの契約内容によりますが、ゴーストレストランのデリバリーメニューを自店の店内メニューに組み込むことができるケースもあります。テイクアウトでも販売できるメニューもありますので、さらなる売上アップにもつなげられるはず」(牧本氏)。

 もちろん、「人気のFCブランドであれば何でもいい」というわけではない。前述したように、エリアや客層の分析を行い、自店の厨房設備などを踏まえて導入するブランドを決めることが求められる。とはいえ、いくら分析しても成功するかどうかはやってみないとわからない。予想以上に売上が立つ場合もあれば、その逆も少なくない。ただ、ゴーストレストランの場合、実店舗に比べて業態変更のハードルが低いのも特徴。「しばらくやってみて、結果があまり思わしくなければ別の業態に切り替えるなど、トライ&エラーを繰り返すうちにニーズに合致したものが見つかるかもしれません」と牧本氏。FCを活用してノウハウを学びながら、自社でも独自のゴーストレストランの業態を開発するということも考えるとよいだろう。

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