2022/01/18 特集

コロナ禍の独立・飲食店開業~経営課題に立ち向かう~

コロナ禍でも前を向いて独立し、飲食店を開業した2人にインタビュー。出店までの経緯や資金準備、開業後の集客や売上などに関する経営課題をどのように乗り越えてきたのかを聞いた。

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更新日:2022.6.20

目次
1.オープン前からInstagramで発信して集客。坪月商30万円超えの店に!
マグロと炉端 成る(東京・錦糸町)

2.満足度の高いランチで心をつかむ! 時短営業でも開店し続けることで認知を拡大
イタリアン食堂MAS(東京・武蔵小山)

 長引くコロナ禍で、飲食業で独立・開業をしたくてもできない人や、開業したものの売上が上がらず経営がうまくいかないという店もあるだろう。そこでコロナ禍で独立し、飲食店を開業した2人に取材。出店までの経緯や資金準備、集客や売上など、飲食店における経営課題をどのように乗り越えてきたのか。オープン前からInstagramを活用して集客につなげた居酒屋、ボリュームのあるランチで心をつかむ戦略を打ち出したイタリアンの事例から、厳しいコロナ禍に立ち向かうヒントを探りたい。

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オープン前からInstagramで発信し、坪月商30万円超えの店に!

マグロと炉端 成る(東京・錦糸町)
東京都墨田区江東橋4-5-5
https://r.gnavi.co.jp/cn91drpg0000/
2021年3月、東京・JR錦糸町駅から徒歩8分の路面にオープン。大きなうろこ柄の暖簾と明るい照明が周囲を照らし、大きなガラス扉から店内の活気が伝わるよう工夫している

 東京・JR錦糸町駅から徒歩8分の場所にある居酒屋「マグロと炉端 成る」。18坪・40席で、店名にあるとおりマグロと炉端焼きを看板に据えている。代表の宮﨑元成氏は、2020年春に独立・開業に向け準備を始めたが、コロナ禍となり中断。同10月より再始動し、コロナ禍での逆境を乗り越えて2021年3月オープン。SNSなどを駆使して認知を広げ、現在では繁盛店に成長している。

炉端とマグロを二枚看板に据えて差別化。在庫を抱えた業者の支援も

 宮﨑氏は「30歳までに独立する」と考え、2019年、28歳のときに所属していた飲食企業の株式会社MUGENを2020年3月に退社。同年の夏に独立・開業の計画を立てていたが、退社のタイミングは1回目の緊急事態宣言発出の直前。緊迫した空気が日増しに強くなる時期と重なった。「多くの飲食店が営業できなくなり、先輩たちも休業に苦しんでおり、開業が不安になり、いったん物件探しを中断しました」と、宮﨑氏は振り返る。

 友人の店舗の立ち上げなどを手伝いながら、しばらく様子を見ることに。コロナ禍は好転しないばかりか、ますます厳しい状況になった。しかし、そんなときに背中を押してくれたのが、前職のMUGEN代表取締役の内山正宏氏。「内山さんに『どんな時代でも状況でも、(独立して)やると決めた人はやるんだ』と言われ、本当にその通りだと思いました。すぐに物件探しを再開し、迷いを吹っ切りました」と宮﨑氏。2020年9月末のことだ。

“カウンターから盛り上がる店”をイメージし、スケルトンから設計。オープンキッチンとカウンター部分を舞台に見立て、テーブル席より一段高く設置している。椅子やテーブルは前職の店舗が閉店する際に、「この店のために取っておいてくれた」(宮﨑氏)というものを再利用

 さっそく開業に向けて行動を開始し、11月には物件が決まる。宮﨑氏の地元に近く、学生時代から親しんでいた錦糸町で、駅からやや距離があるが、通行量を調査したところ月に片道3万人と予想以上に多かった。18坪という店舗面積は「お客様への目が行き届き、仲間数人と働くことができる規模で、自分としては得意とする広さ」(宮﨑氏)で、理想的な物件だった。しかし、ネックになったのが開業資金だ。コロナ禍での新規出店、しかも個人経営に対する金融機関の評価は厳しく、融資は不調に。そこで株式会社を設立し、親族に出資を依頼して資金を集めた。

 ターゲットとする30~50代のニーズを踏まえ、看板料理に据えたのは前職で経験のあった炉端焼き。家業がマグロの卸を行っていることから、炉端焼きにマグロを組み合わせて二軸を売りにすることで特徴を出し、2021年3月15日ようやくオープンにこぎつけた。

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人気メニューの「マグロのブツのてんこ盛り」(写真手前1,380円)と「マグロの中落ちのトロたく」(同奥1,880円)。炉端焼きとともに、さまざまなマグロ料理が自慢
  • 高級感と写真映えを意識したマグロの新メニュー「ウニトロキャビア」(980円)。炉端焼きでも「干物クリエイターふじまさんのビントロ天日干し」(1,980円)など、目を引くメニューが並ぶ
  • グランドメニューのほかに、「毎日のおすすめ料理」を提供。食材の在庫を抱えた業者がいれば、積極的に購入してサポートし、「おすすめ料理」として売り切るスタンスを貫いている

 だが、オープン日は緊急事態宣言期間中。そのため、「開店告知のチラシ配りやポスティングは全て中止にし、SNSの活用に切り替え、オープン1カ月前から発信を始めました」(宮﨑氏)。中でも力を入れたのはInstagramのフォロワーの獲得だ。錦糸町駅の周辺店舗のアカウントをフォローしている人を積極的にフォロー。開店告知を毎日投稿し、認知を広げた。その戦略が奏功し、オープン時には1,500人以上のフォロワーを獲得。Instagramを見て来店し、店を気に入ってフォロワーになる人も多く、現在は20代後半~50代を集客。最高月商は970万円(坪月商53万円超)、その後も坪月商30万円超えを記録しており、好調をキープしている。

 「何よりうれしかったのは、多くのお客様から“営業してくれてありがとう”と言ってもらえたこと。居酒屋が必要とされていることを実感しました」と宮﨑氏。さらに「コロナ禍で仕入れ業者なども大変な思いをしています。私たちが営業することで、少しでも役に立ちたい」と語る。2022年2月に2店舗目を出店予定で、今後は「3年で5店舗を展開したいと思っています。DX化を進め、人材不足などの社会課題にチャレンジして飲食業界の価値を上げたい」と、宮﨑氏は力強く未来を見据えている。

代表 宮﨑 元成 氏
大学時代に株式会社MUGENの居酒屋でアルバイトをし、卒業後オーストラリアに留学。帰国後、同社に就職し、炉端業態などの店長を経験。2020年3月に独立のために退社し、2021年3月開業。

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満足度の高いランチで心をつかむ! 時短営業でも開店し続けることで認知を拡大

イタリアン食堂MAS(東京・武蔵小山)
東京都品川区小山2-6-16 松林堂SK第三マンション
https://italian-mas.jp/
2020年8月、東京・武蔵小山駅から徒歩5分の路面にオープン。カラフルなファサードで人目を引き付け、お得感のあるランチでファンを増やしてディナー利用につなげ、坪月商50万円に迫る

 東京・武蔵小山駅から徒歩5分のところにある「イタリアン食堂MAS」は、2020年8月オープン。「気軽に立ち寄れるカジュアルなイタリアン」というコンセプトを掲げ、ボリュームのあるランチで認知を高めて地域住民の心をつかみ、ディナーの集客につなげている。どんな状況でも「店を開け続けることが存在意義につながる」と店主の増田大典氏は話し、地域に根ざした店に成長している。

「おなかいっぱいに、最後までおいしく食べられる」を意識してメニューを構成

 「飲食業に就いたころから独立したいと考えていた」という増田氏が、現在の物件に出合ったのが2019年夏。「11坪の規模や路面に開いたエントランスが気に入ったのですが、当時は家賃が高くて手が出せなかった」と語る。ところが、同年年末に家賃が大幅に値下げするという連絡が入り、年明けの2020年1月に契約。5月のゴールデンウイークの開店を目指したが、4月に緊急事態宣言が発令され、準備はやむなく中断。「家賃は発生していたので、後戻りはできません。決意を固め、前を向くことにしました」と増田氏は当時を振り返る。一方、金融機関からは満額の融資を受けることができ、家賃は大家に掛け合い、1.5カ月のフリーレントにしてもらい、その後3カ月は50%減額してもらったという。

店内は「スタッフが一生懸命働く姿や頑張りがお客様に伝わるようなオープンキッチンに仕上げました」(増田氏)。カウンター席では来店客とスタッフとの会話も弾み、活気が生まれる

 業態は、アジア料理の経験もあったが、多くの人に愛されるイタリアンを選択。ランチで心をつかみ、ディナーにつなげることを前提とし、「おなかがいっぱいになり、最後までおいしく感じること」(増田氏)を重視。そこでランチでは、たっぷりのサラダと前菜、選べるパスタ、ドリンクがセットになった「パスタランチ」(1,200円~)を中心に打ち出すことにした。

「パスタランチ」(1,200円〜)は自家製ドレッシングのサラダとキッシュ、タパス、ガーリックトースト(写真奥)のほか、8種類から選ぶパスタ(同手前「燻製イワシと菜の花のトマトソースパスタ」)で構成

 2020年8月にオープンすると、このランチが予想以上に好評で、30~50代を中心に多くの人が来店。サラダは作り置きせず、注文が入ってから自家製ドレッシングで和えることで味を均一にし、丁寧な仕事ぶりをアピール。選べるパスタは8種類を用意し、毎月4種を入れ替える。「サラダのボリュームを調整したりタパスは日替わりにするなど、ランチの価格が高いと思われないよう工夫しました。お客様の反応によっては1,000円まで下げることを視野に入れていましたが、『価格の価値』を追求し、お得感と満足感を高めることに集中しました」と増田氏は語る。

 集客では、着工時にオープン告知のポスターを店頭に大きく貼り出して道行く人の期待値を高めたほか、5日間限定でワインやハイボール、レモンサワーなどを200円で提供するオープン企画を実施。このほか、ランチ営業時には、メニュー表にディナーメニューも挟んでテーブルに置いて待ち時間に見てもらえるようにし、ディナー利用へつなげた。その結果、2020年10月には月商525万円を記録。順調な滑り出しを見せていた。

左はランチ、右はディナーのメニュー表。ランチ時もディナーのメニュー表を置き、ディナーへの興味を喚起している
ディナーで人気の2品。食べ応え満点の「低温調理したサーモンとアボカド」(写真手前750円)と白だしを加えたクリームソースと合わせた「丸ごと玉ねぎグリル」(同奥700円)

 しかし、2021年1月以降、緊急事態宣言などに伴う時短営業や酒類提供の自粛による影響は大きく、ランチは2割減、ディナーは来店が1人もいないという日も。だが、増田氏は「店を開け続けることに意味がある」と、店前を通る人に向けあいさつを送り続けて「宣言が解除されたときに、来店したい店の選択肢に入ること」を心掛けた。その甲斐があってか、2021年11月には月商485万円まで回復し、確かな手応えを感じている。

 時短営業で生まれた時間を有効に活用し、次の出店にも踏み出した。2店舗目となる物件を近隣で見つけ、「地域に根ざした昔ながらの寿司店が入っていたので、気軽に入れる寿司店にできたら面白いのでは」(増田氏)と考えた。空いた時間でスタッフとともに寿司の技術を磨き、増田氏自らスーパーマーケットの鮮魚部門で魚調理の経験を積み、「寿司とmas」を2021年7月にオープン。「気持ちが落ち込みがちなときでしたが、新業態や新店舗という挑戦がスタッフを盛り上げました」と増田氏。今後はドミナントで出店を続け、業態開発とともに「イタリアン食堂MAS」のフランチャイズも視野に入れ、展開していく予定だ。

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店主 増田 大典 氏
大学時代に飲食店で働き、新卒で株式会社グローバルダイニングに就職。5年後、先輩が起業した飲食企業に転職。イタリアンやアジアン業態などを9年間手掛け、2020年独立を果たす。

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