2013/07/09 特集

ふだんの備えが食中毒予防につながる 今日からできる!衛生管理

食を提供する飲食業にとって、絶対にあってはならないのが食中毒。万が一のリスクを排除するには、日常からの備えこそが重要だ。衛生管理の基本に立ち返って、事故を起こさないオペレーションを再確認したい。

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食を提供する飲食業にとって、絶対にあってはならないのが食中毒。常に安心と安全を確保し、万が一のリスクを排除するには、場当たり的な対策ではなく、日常からの備えこそが重要だ。衛生管理の基本に立ち返って、店内で事故を起こさないオペレーションを再確認したい。

監修:NPOサニテーション・デザイナー協会理事長 安藤 洋次 氏
日本大学農獣医学部卒。獣医師。専門は実験動物の栄養学と食品衛生学。1984~85年、インドネシア国立食品薬品研究所の実験動物施設の運営管理を指導。2005年、農林水産省のHACCP(食品衛生管理システム)指導者に。1999年、NPO法人サニテーション・デザイナー協会を設立。企業、市民にHACCPを指導する。現在、同協会の理事長、農林水産省の審議会委員を務める。主な著書に「厨房のウラ側チェック」(日本食糧新聞社)などがある。

~はじめに~ 5つの行動指標

食品衛生の基礎を理解して危険を防ぐ

「高温多湿な夏は、飲食店にはとりわけ要注意の季節。ただし食中毒を完全に防ぐためには、付け焼き刃的な対応では不十分です。重要なのは衛生管理の基本をきちんと理解し、それに沿った行動を習慣化すること」。

こう話すのは、NPOサニテーション・デザイナー協会の安藤洋次理事長。数多くの現場で衛生管理システムを構築してきた、食のリスク管理のプロフェッショナルだ。PL(製造物責任)法の施行以来、フードビジネスにおいても飲食店に求められる意識水準は、年を追うごとに高くなっている。

「専門的な衛生教育を受けたことのないパート・アルバイトさんの中には、『食中毒の原因=細菌』と思い込んでいる人が少なくありません。たしかに、カンピロバクターやサルモネラなどの細菌性食中毒は夏場に多く発生します。しかし、食中毒の原因はそれだけではありません。例えば近年、昔は冬場に多かったノロウイルスによる食中毒が、1年中見られるようになってきました。また、細菌を恐れるあまり、厨房内の消毒が行きすぎると、それが化学性食中毒を引き起こしてしまうケースもありえます。お客様の安全を確保するためには、やはり職場全体で正確な知識を共有することが何より大切です」(安藤氏)。

では、食品衛生の基本となる考え方とは、どんなものだろうか。「まずは、ヒト・食材・モノの動線を管理すること」だと安藤氏は話す。

「きれいな水に1滴でも汚水が混ざれば、それは清潔とは言えません。この発想が公衆衛生の基本です。同じように従業員であれ原材料であれ、外から入ってくるものは、汚れている可能性があると考えるべき。そのため店舗内をしっかり区分けし、食材を直接扱う厨房や配膳エリアに汚れを持ち込まないことが重要です。細菌を付けない・増やさない・殺すという『衛生の三原則』は、この配慮があって初めて意味を成します」(安藤氏)。

さらに、この原則を踏まえたうえで、食品衛生に欠かせない5つの行動指標(下表)がある。次のページからは、この行動指標を具体的に解説しよう。

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