2013/07/16 挑戦者たち

株式会社シナジーカフェ 代表取締役 春名 良則氏

飲食店は“楽しい”を発信する役割を担い、そんなお店作りにはスタッフが前向きになれる環境整備が必要と語る春名氏。神戸市に5店舗を展開する気鋭の経営者に、これまでの歩み、そしてこれからを伺った。

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お客様とスタッフの幸せを追求し、地域の人たちに長く愛される店を作りたい

「シナジー」は相乗効果、「カフェ」は人が集まる場所。飲食店は“楽しい”を発信する役割を担い、そんなお店作りには、スタッフが前向きになれる環境整備が必要と語る、株式会社シナジーカフェ・代表取締役の春名良則氏。現在、兵庫県神戸市に5店舗を展開する気鋭の経営者に、これまでの歩み、そしてこれからをうかがった。

――入ったばかりの大学を中退して、飲食の道に進んだそうですね。

高校在学中から、肉体労働や焼鳥店など、様々なアルバイトをして、働いてお金を得る厳しさ、おもしろさを体感しました。大阪の大学に進んでからも、広告代理店と居酒屋のアルバイトをかけ持ちしていましたが、どちらも楽しく、やり甲斐もあったので、早く実社会に出てもっと経験を深めたいと考え、1年生の夏に大学を辞めました。やりたいことを選んだというより、仕事というものは中途半端に取り組んではいけないと思ったのです。

選んだのは飲食業。飲食には接客を通して、お客様の反応がダイレクトに得られる醍醐味がありました。また、先輩方のスマートな立ち居振る舞いやサービス、ライフスタイルも格好よく見え、20歳のときに神戸を中心に多業態の飲食店を展開する会社に就職しました。その頃は、創作居酒屋で働きながら、仕事が終わると、毎日のように朝まで飲み歩いていました。

――そこから、自分の店をオープンするまでは、どのようなステップを?

今思えば怖い者知らずだったんですが、21歳のとき、会社に申し出て、三宮にある焼鳥と串カツの店の店長になりました。しかし、気持ちだけが先走り、売上も客足もまったく伸びず、大失敗。ワンマンだった私に愛想を尽かして、アルバイトが何人も辞めていきました。結局、1年でその店は閉店。業態変更を余儀なくされました。これには随分、落ち込みました。

それでもありがたいことに、業態変更した鉄板焼店でも、もう一度店長をやらせてもらいました。前回の失敗を踏まえ、飲み歩くのもやめて、経営に関する本などを読み漁りました。とにかく、知識が必要だと感じたのです。

指示はなるべく具体的に出すようにし、接客マニュアルやスタッフが商品を説明しやすいようなオペレーションも構築。仕事終わりには食事会なども開き、環境を整えたことでチームワークが生まれ、店は繁盛店になりました。

その成功を受け、会社も同じ鉄板業態を恵比寿に出店し、東京に初進出。店の立ち上げから関わり、店長も務めましたが、オープンから1年後に月商800万円の繁盛店となったところで退社しました。地元の神戸に戻り、自分の店を出そうと決めたからです。

1982年、神戸市出身。10代から様々なアルバイトを経験し、大学中退後、飲食企業に就職。神戸、東京の鉄板焼店の店長として繁盛に導く。2007年、「にはとりや 三宮店」で独立。2010月3月に株式会社シナジーカフェを設立し、現在、神戸市内に5店舗を展開。

――独立するにあたって、焼鳥業態を選んだ理由を教えてください。

会社を辞めるときにはすでに、焼鳥店をやろうと決めていました。素材勝負で、普遍的な業態である焼鳥店を、新たなアレンジを加えて打ち出したいと思ったからです。

開業資金を貯めるために、1年間は徹底した節約生活をしながら、工場で働きました。そして、約400万円を貯め、2007年12月、三宮のビル2階に16席の「にはとりや 三宮店」を出店。25歳のときでした。

女性客を呼びたかったので、カウンターやテーブルは白いタイルを使うなど、スタイリッシュで清潔感のある店内にしました。また、先輩に信頼できる肉の仲卸業者を紹介してもらい、毎日、淡路島や丹波から朝挽きの新鮮な地鶏が届くルートも開拓できました。「マツバ」「白子」といった希少部位なども含め、20種類以上の焼鳥を用意。一切れのポーションを小さめにし、串も通常より3cmほど短い12cmを使って食べやすくしました。さらに、周りの店よりも遅くまで営業(現在は平日午前1時まで営業)すると、狙い通り女性を中心に口コミで広まり、2008年の8月頃からは行列もできるように。その年の11月には、3階にも宴会に対応できる空間を作り、順調に集客を伸ばすことができました。

――その後、別業態の「デリランテ」を出店しましたね。その意図は?

「にはとりや」のような焼鳥業態だけですと、鶏肉の仕入れに何か問題が生じたときのリスクが高いということもあり、2009年3月には同じ三宮に、炭焼きとオーブン料理がメインの洋風酒場「デリランテ 三宮店」をオープンしました。描いていたのは、バルなどのトレンドを反映しながらも、価格はリーズナブルなファミリーレストランのような店。地域に密着し、幅広い年齢の方に外食を楽しんでもらいながら、将来的には街の新しい文化を創っていく存在にしたいと考えました。

そして、2010年には株式会社シナジーカフェを設立。これは、今後の出店・展開を考えたときに、しっかりと人材を育てることが必要で、そのためには従業員の待遇や福利厚生も、組織としてさらに充実させていかなくてはいけないと考えたからです。

――現在まで、順調に出店されていますが、今後はどのような戦略を?

今後は、住宅街への出店戦略を強化していこうと考えています。競合店がひしめく繁華街よりも集客の幅が広いですし、住食が一体になった地域に根付くことで、息の長い店舗運営ができますからね。今も、「にはとりや」は全店舗が空中階、「デリランテ」は繁華街から少し離れた立地ですが、そういった立地では、特にWeb販促で認知度を上げることが必須です。実際に、ぐるなびからは宴会やパーティなど、団体客を中心に集客し、安定した売上につなげられています。

現在ある5店舗はすべて神戸市内ですが、将来的には東京も含めて、それ以外の地域への進出も視野に入れています。ただ、まずは年商10億を目標に、「にはとりや」「デリランテ」という2つのブランドの基盤を固めることに集中したいと思います。また、組織の面では決裁権を各店長に持たせ、そのうえで統括店長を配置し、月に1回、店長会議を実施しています。各店舗で情報を共有しつつ、1年に2回ほどは、全スタッフが一堂に集まる会を設けて、交流を深めています。

「にはとりや」では、授業形式の「焼鳥大学」で焼鳥の知識や技術を教え、実技試験に合格したものだけが焼き場に立つことができる

――最後に、御社のこれからの目標をお聞かせください。

私がいちばん喜びを感じるのは、スタッフがお客様に「おいしかったよ、ありがとう!」、そう言われているシーンに出会うことです。お客様と働くスタッフ、その両者がともに幸せな気持ちになれる飲食店。これほど素晴らしいものはないと思っています。

飲食店は常にお客様、スタッフ、地域社会に何が喜ばれるかを考え、追求する責任があります。私自身、今年は神戸の食のイベントである「神戸ディッシュウィーク」の代表幹事を務め、外食経営者の交流会などにも参加していますが、さらに飲食店同士のつながりを深くして、地域活性化にも積極的に携わっていきたいですね。

これまでの経験から、自分が楽しいと思えれば、困難は乗り越えられると信じています。そのためには前向きに、楽しく感じられる環境が必要です。十分な休日や明確なキャリアプランなど、社内の労働環境を整備し、従業員の個性を活かしながら、生涯働ける会社を作っていきたいですね。

にはとりや 三宮店(神戸・三宮)
http://r.gnavi.co.jp/kbjb300/
鮮度抜群の朝挽き鶏を使用した炭火焼鳥店。白を基調とした清潔感ある内装デザインで、女性客の来店率が高い。3Fは最大24名の宴会に対応。
デリランテ 六甲道店(神戸・六甲道)
http://r.gnavi.co.jp/kbjb304/
JR六甲道駅から徒歩3分の立地に2012年オープン。2Fロフトには、子供連れにも嬉しい半個室の座敷を用意し、ママ会やファミリーなどに人気。

Company Data

会社名
株式会社シナジーカフェ

所在地
兵庫県神戸市中央区北長狭通2丁目10-10 三木ビル 4F

Company History

2007年 「にはとりや 三宮店」オープン
2009年 「デリランテ 三宮店」オープン
2010年 株式会社シナジーカフェ設立 「にはとりや 元町店」オープン
2011年 「にはとりや 北野坂店」オープン
2012年 「デリランテ 六甲道店」オープン。現在、計5店舗を運営

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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