2011/10/26 繁盛の黄金律

価格幅は狭く、価格ラインは少なく

原価積み上げで値決めをしないこと。素人がやっている店か、プロの店か、メニューを開けばひと目でわかります。

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Vol.2

原価積み上げで値決めをしないこと

素人がやっている店か、プロの店か、メニューを開けばひと目でわかります。

素人がやっている店は、次のような店です。

  1. メニュー領域が広い
  2. 価格幅が広い
  3. 価格ライン(価格の数)がやたら多い

プロの店は、この真逆です。メニュー領域が限定されていて、価格の幅が圧縮されていて、価格の数が少ない。この点が共通しています。

昔、アメリカのステーキ専門チェーンに行ったら、メニューはステーキのみで、価格もひとつでした。さすがに、私もたまげました。ステーキは、ガルニチュール(付け合わせ)やソースの違いで、20ほどの種類があります。当然、原価は1品1品違うはずなのに、価格はひとつ。しかし、これがプロの仕事というものです。メッセージがはっきりしていて、お客にとって非常にわかりやすい、使いやすい店になっています。この「動機の明確化」こそが、食べ物商売で一番大切なことです。

素人の店は、メニューがやたら多く、価格もバラバラに広がる傾向にあります。どのようなシチュエーションで利用する店なのかまったくわからず、首をかしてげしまうことが多いのです。特に低単価から高単価までいろいろなメニューがあって、そのひとつひとつの価格が異なる店に問題アリです。メニューの価格を原価積み上げ方式で決めると、こういうことになります。

繁盛点は、「価格ボックス」がすっきりしていると

メニュー1品1品の原価は違いますが、これらをいくつかの限られた価格ラインに絞り込んでいくのが、プロの仕事です。そして、メニュー全体として、狙い通りの原価率に落とし込んでいくのです。

前回(第1回「メニューが増えると客数が落ちる」)、メニューの数を絞り込むことの重要さを述べましたが、価格ラインと、それによって構成される価格ゾーンを絞り込むことも、とても大事です。これによって、価格ボックス(メニュー数、価格ライン、価格帯)そのものをすっきりさせるのです。この明快な価格ボックスこそが、「うちはこういう店です」「こういうときに使ってもらいたい」という店主のメッセージになるわけです。

繁盛店は明快な価格ボックスを持っています。繁盛していない店は、商品の中身と価格ばかりをいじくり回して、どんどんメッセージがぼやけ、何屋なのかわからなくなっています。そんな出口ナシの状態から脱出するためには、まず価格ボックスのお掃除を薦めます。いま流行りの「断捨離」ですね。これを敢行して"お部屋"をすっきりさせてください。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。