2014/11/20 挑戦者たち

株式会社ラフダイニング 代表取締役 大坪 友樹氏

居酒屋「港町酒場 もんきち商店」を中心に北海道で飲食店を展開。大坪氏は上場企業の正社員から、飲食業界に飛び込んだ。独自の産直仕入れルートを開拓し、物流まで手がける大坪氏に熱い理念を伺った。

URLコピー

目指すのは産地の人とお客様が笑顔になり、働く社員が夢を見られる会社です

居酒屋「港町酒場 もんきち商店」を中心に、北海道で飲食店を展開する株式会社ラフダイニング。代表取締役の大坪友樹氏は、上場企業の正社員という安定をなげうって、飲食業界に飛び込んだチャレンジャーだ。道内各地に独自の産直仕入れルートを開拓し、新たに物流まで手がける大坪氏のこれまでの歩みと熱い理念を伺った。

――会社員を辞めて起業し、飲食店を始めた経緯を教えてください。

大学卒業後、商社に就職し、順調なサラリーマン生活を送っていました。その一方で天狗になっている自分が嫌で、「失敗するなら若いうちがいい」と思って3年で会社を辞め、高校時代から6年、和食料理屋に勤務した経験から飲食の道に進もうと、会社を立ち上げたのです。それしか知らなかったので、飲食で開業したというのが大きな理由です。今思えば、何も知らない24歳の若造じゃなければできませんね。

会社を設立した翌年に、私を含めた3人で札幌の南区澄川に1号店の「懐飲庵(かいいんあん)」をオープンしました。お世辞にもおいしいとは言えない料理で、売上も最初はまったくダメでしたが「来てくれたお客様をとにかく楽しませよう!」ということに集中して続けていたら、1年を過ぎた頃から徐々に繁盛し始め、狭い店が常連さんであふれるようになりました。

――その後、3店舗目で居酒屋「もんきち商店」が誕生したのですね。

「懐飲庵」の常連さんにもっと楽しんでほしいと思って、同じ澄川に「もんきち商店」を開きましたが、当時は今のように産直にこだわった店ではありませんでした。ここでも、何よりお客様の満足度を考えて営業していましたが、同時にスタッフにも同じくらい愛情を持って接して、楽しく働ける職場にしなければいけないという想いが膨らんできました。「もんきち商店」を出店した頃には、働くスタッフの給料を増やして、きちんと休みも与えて、会社として福利厚生を整えたいと決意し、そのためには何をすべきか、考えるようになりました。

1980年、北海道美幌町出身。商社勤務を経て2005年、1号店「懐飲庵(かいいんあん)」をオープン。現在、「港町酒場 もんきち商店」「産直大衆ビストロ SACHI」など8店舗を展開。関連会社・株式会社ラフプロダクトでは、2015年より流通・卸事業にも進出する。

――それらを実現するために考えたのが食材の「産直」だったのですか?

お客様に商品を安く提供しつつ、どうやって利益を出してスタッフに還元できるかを考え、FL(F=材料費、L=人件費)以外の経費コスト(家賃、光熱費、その他本部経費)を抑えて、人件費をカバーしようと考えました。同時に、生産地から飲食店までの流通コストをカットするための取り組みとして、産直を始めたんです。

初めての産直は魚ではなく、豚肉。十勝の養豚場にツテを持っていた店のお客様の紹介による、豚肉の一頭買いでした。始めてみたらビックリするほど安くていい豚肉が手に入りました。それなら魚も産直にしようと思い、漁協へのアプローチを開始。情報収集をして、話を聞いてくれそうな道内の漁協に目星をつけ、飛び込みで当たりました。はね返されるのは当たり前。生産者と信頼関係を築き、お互いが潤う仕組み作りが目的ですから、本気で当たりました。あきらめることなく何度も何度も訪ね、熱意をわかってくれて取引できることになったときはうれしかったですね。そのうち、漁師経験者が入社し、その縁でえりも漁協と直接取引できるようになるなど、徐々に取引してくれる漁協や仲買人さんを増やすことができました。

――実際に産直食材を店で提供するのに、難しい面はありますか?

魚介の水揚げ量は、季節やシケなどによって影響されますので、1カ所だけの取引では入荷が止まってしまう可能性があります。そこで、北海道全体を網羅するように、お付き合いをする浜を増やしていきました。それは、四方が海に囲まれた北海道だから可能だったこと。今では、道内20カ所もの漁協や産地の仲買人さんから、年間を通して安定的に魚介を仕入れられる体制が構築できました。また、産地との密な取引に欠かせないのは信頼関係です。そこで社内に1人、仕入れ専属のバイヤーを置くことで、「こいつだから」とか、「この会社となら」と思ってもらえることができました。

産直の取り組みを進めていくと、流通に乗らず、現地で漁師さんしか消費していない魚種を教えてもらったり、現地ならではの食べ方を知ることができます。これらを店で提供してブランド化し、価値を高めることで、私たちにとっても漁師さんにとっても、新たなヒット商品につなげる。そうするには、接客するスタッフが熱意を持って、「漁師さんだけが知っているおいしい魚だから、絶対おすすめですよ!」と伝えるマインド作りが重要です。目の前で力強くそう言われたら、お客様は絶対注文したくなると思うんですよ。浜の人から聞いたおいしい食べ方を、お客様に伝えるというのが接客の原点。スタッフのモチベーションを上げる効果的な方法は、産地の方に普段から店に来てもらえることですね。

――産直仕入れの次のステップとして、どんなことを考えていますか?

食材が安く買えても、産地から送料をかけて仕入れてたら、大して意味がない。店舗までの送料がかからない物流をどう作るかということが課題でしたが、来年1月から、浜から札幌卸売市場に向かうトラックに、弊社の商品も混載して輸送してもらえることになりました。これで送料はゼロ。まさに信頼関係を築いてきた結果、実現した仕組みで、私たちが仕入れる商品には価格優位性が生まれます。それを活かして来年から、札幌市内の飲食店への流通・卸事業を展開します。

生産現場と飲食店にきちんと利益が還元される構造ができてはじめて、人件費率の改善が実現し、スタッフの待遇向上につながると考えています。

「大きな家族」として結ばれているスタッフたち。居酒屋甲子園でも何度も好成績をおさめる彼らが、店の運営を支えている

――御社の店づくりの戦略や、今後のビジョンについて教えてください。

現在、居酒屋「もんきち商店」と、ビストロ「SACHI」を展開していますが、新しい業態を作ろうという考えは今のところありません。それよりも現状の2業態を深掘りし、客単価の高い店としてブラッシュアップするなどの戦略を進めます。出店エリアは家賃比率5%以内、坪売上25万円以上の予測がたつ立地。そういった場所で「もんきち」と「SACHI」の「エリア2店舗構想」を展開します。これは品切れと在庫ロスを補完するための対策。また、客単価の高いアッパー業態に関しては札幌中心部、ライセンス店舗様に関しては、東京都内への出店を考えています。

事業としてのアイデアはいろいろあります。例えばメニューブックにレシピを載せ、料理本として販売して広告収入を得るとか。食に関する製販、流通、店舗運営に関わるすべてを事業化するという発想のなかには、新たなビジネスチャンスが無数にあるわけです。

現在、弊社は原価35%、人件費36%、その他販売管理費15%、営業利益14%という構成です。もっと成長して人件費率を上げられれば、いい人材が集まり、店にお客様も集まってくる。そうなるためには経営者がどれだけ考えられるか。そこにゴールはなく、給料も働く環境も良くし続けなければいけません。経営計画はそのためのもので、3年後の給料まで明確に設定しています。その先に、目標である「社員が夢を見られる会社」があるのです。

港町酒場 もんきち商店 新さっぽろ店(北海道・新さっぽろ)
http://r.gnavi.co.jp/pg55ktyx0000/
名物の刺盛りや浜焼きなど、道内20カ所から直接仕入れる新鮮な魚介が売り。港町を意識した内装と、元気で明るいスタッフの接客も好評。
北海道産直ビストロ SACHI 新さっぽろ店(北海道・新さっぽろ)
http://r.gnavi.co.jp/pwppvm090000/
魚をはじめ、野菜、肉など産直食材を豊富に使ったイタリアンを低価格で提供。惣菜やスイーツのビュッフェが付くランチも人気で、9割は女性客。

Company Data

会社名
株式会社ラフダイニング

所在地
札幌市中央区南2西7 日宝第2ビル10F

Company History

2005年 「港町酒場 もんきち商店 澄川店」オープン
2008年 「しゃぶしゃぶ北海道 サチの家」オープン
2011年 「北海道産直ビストロ SACHI」オープン
2013年 「港町酒場 もんきち商店 新さっぽろ店」オープン
2014年 「北海道産直ビストロ SACHI 新さっぽろ店」「港町酒場 もんきち商店 桑園AEON前店」オープン現在、計8店舗を運営