2011/11/22 Top Interview

“かっこいい”“おもしろい”が繁盛店づくりの原動力~い志井グループ 代表 石井宏治氏

1950年に立ち飲み屋台を創業し、100店舗以上を展開する「い志井グループ」。立ち飲み居酒屋のパイオニア「日本再生酒場」など、個性的な業態・店舗で、存在感を示し続けている。

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更新日:2022.7.13

目次
店づくりのテーマは、“かっこいい”こと
思いを込めた店づくりの原点は「みんなの笑顔が見たいから」
日本を元気にするのは、“事業っぽくない”飲食店
バイクの運転を思い起こし、気を抜かずに走り続ける
Company History

 1950年創業の立ち飲み屋台は、100店舗以上を展開している「い志井グループ」。立ち飲み居酒屋のパイオニア「日本再生酒場」、堂々と美しい洋館の「洋食屋CHRISTMAS亭」、海外でも躍進中の「東京ハヤシライス倶楽部」など、個性的な業態・店舗で、存在感を示し続けている。「皆の笑顔を生むのは、飲食店の頑張り」と語る石井宏治氏に、その胸の内をうかがった。

石井宏治氏(Hiroharu Ishii)。い志井グループ 代表、株式会社 い志井 代表取締役社長、株式会社 エムファクトリー 取締役会長。1954年、東京・中野生まれ。日本大学卒業後、25歳の時に単身渡米。カリフォルニア州でレストランを経営する老夫婦との出会いなどがきっかけとなり、帰国後、26歳で父親の跡を継ぎもつ焼き屋を経営。もつ焼き、焼き鳥のほか、洋食、和食業態も含めて個性的な出店を続け、海外進出も果たす。モットーは「ビッグな会社よりナイスな会社」。

店づくりのテーマは、“かっこいい”こと

 東京・調布市の「洋食屋CHRISTMAS亭」は、住宅街の中に突如出現する洋館のレストラン。1階が店舗、そして2階は「い志井グループ」を率いる石井宏治氏の自宅になっている。若き日のアメリカ放浪中に出会った老夫婦のレストランを忠実に再現し、建具や調度品もアメリカから調達したという店内は、一日中、近隣の老若男女や遠方からのファンでにぎわっている。

 「店づくりで大切なのは、"かっこいい"や"おもしろい"だと思うのです。この場所にこういう店があって、私がいる様子が"かっこいい"と思えるなら、それでOKなのです。もちろん、立地や投資の見極めも大事です。しかし経費のみ考えていたら、そういう店は作りにくい。それではお客様に喜んでもらえる店にはなりません」と石井氏。

 その言葉どおり、今まで手掛けてきた業態は、業界人なら"ありえない"と思うような店舗ばかり。住居を兼ねた敷地300坪の「CHRISTMAS亭」しかり、立ち飲み業態の先駆けとなった、「日本再生酒場」しかり、だ。

 さらに、2011年10月末にオープンした新業態、「新鮮ホルモン 自家製キムチ食べ放題 サランヘ」は、グループ初の食べ放題店。通常食べ放題といえば、同じテーブルの客はみんな食べ放題メニューをオーダーするのが一般的だが、同店は食べ放題と単品オーダーの混在を可としている。

 「お客様に本当に喜んでもらうには、このシステムがベストです。業界では"ありえない"と思うかもしれませんが、あとはお客様と店との信頼関係ですね」と微笑む。どこまでもおおらかで、すがすがしい笑顔だ。

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思いを込めた店づくりの原点は「みんなの笑顔が見たいから」

 一貫して、自分の"想い"を店づくりに込めてきた。「CHRISTMAS亭」は放浪中の身を助け、人生の指針を与えてくれたアメリカの老夫婦へのオマージュであり、「日本再生酒場」は昭和のバイタリティーへの敬意。自分の思いを貫くことで周囲を元気にできる――。そんな確信が石井氏からは伝わってくる。

 「子供の頃から、とにかく周囲を楽しませたい、喜ばせたいとばかり思ってきました。自分が先生に叱られても、みんなの笑顔がはじけるなら喜んでいたずらもする。そんな子供でした。今も同じです。お客さんでいっぱいになる店が見たい、がやがやとうるさくて、みんなが笑っているところが好きでしかたがない。そういう飲食店こそがかっこいいと思うのです」。

 今、密かに温めている店の構想も、なかなかの"かっこよさ"だ。東京スカイツリーが自分のイメージどおり望める絶好のローケーションで、燻したホルモンを提供する店。そして店内には、自身が所有する、日本に2台しかないと言われる正規輸入販売のミニモーク(車)をインテリアとして飾る店だ。

 「名付けて"スモークモーク"。業界人はまず出店しない立地です。でも、そこで労働者やホルモン好きや、スカイツリー観光のお客様が、みんなで楽しんで元気になる店を、ぜひとも形にしたい」と目を輝かせる。

日本を元気にするのは、“事業っぽくない”飲食店

 ワクワク感が薄れ、「元気がない」と言われる日本。昭和中期のバイタリティーが、今は陰を潜めているかのようだ。

 「街で散歩する犬たちにも、かつて多かった大型犬は見当たらず、小型犬が目立つ。良い悪いではなく、そんなところにも、現在の社会の様相が表れているのではないでしょうか。日本がもう一度、かつての活力を取り戻すために、飲食店の果たす役割はものすごく大きいと思います。そもそも、食欲は万人が持っている根源的な欲求ですから、飲食店が元気なら、すべての人が元気になれるはず。そこが他の業種と違う飲食業の強みであり、役割だと思います」。

 では、この時代、どんな店が求められているのだろうか。

 「"事業っぽくない店"と言ったらいいでしょうか。一見、採算ベースに載せることが難しそうでも、"おもしろい"と思うなら迷わず作る。いい店ができれば人が集まり、雇用も生まれ、出入りの業者も増えて、活気が生まれます。そうすれば、店も必ず繁盛店にできる。どんな場所に作っても必ず繁盛店にするのが、私たちの仕事でもあります」と自信ものぞかせる。

 「自動車メーカーで言えば、トヨタである必要はないのです。レクサスやクラウンは作れないし、作る必要もない。その代わり、おもしろい小型のスポーツカーを作り、それを楽しめる人に乗ってもらえれば、それでいいのです。そんな店がたくさんできたら、きっと日本はあっという間に元気になりますよ。ダイヤモンドダイニングの松村厚久氏、際コーポレーションの中島武氏、力の源カンパニーの河原成美氏などは、そうした店を作っていると思いますね。みんな個性的で、おもしろいです」。

バイクの運転を思い起こし、気を抜かずに走り続ける

 2011年10月、グループを改編して、株式会社い志井と、株式会社エムファクトリーの2つを相互に独立させた。前者は創業時からの技と味を受け継いで、「い志井」ののれんを守り、大切に育てていく。後者はスケールメリットを追求しつつ、"ナイスな店づくり"への想いと結果がズレないのであれば株式上場も視野に入れて出店を目指す。これからの「い志井グループ」にはどちらの側面も不可欠で、60年の歴史を持つ「い志井」は、企業体として新たなステップに立ち、後継者も育っている。

 「実はもう一度、大型バイクに乗ろうと思っています。バイクは自動車と違い、力はいるし、冬は寒いし、雨の日のカーブではマンホールにも気を遣う。ブレーキをかけるときも、さまざまな感性を同時に働かせないと止まれない。決して気を抜けない乗り物なのです。飲食店も同じ。少し気を抜くと、たちまち"転倒"してしまいます。バイクに乗り直すことで、今一度、冷たい風を肌に受け、気持ちを引き締めたい。そして微力ながらも、日本の再生を担う一員でありたいと思っています」。

Company History

1950年

東京・中野に、4人席の立ち飲み屋台
「もつやき処 い志井」創業

1953年

「もつやき処 い志井」を8坪の店舗として近隣へ移転

1974年

「もつやき処 い志井」を東京・調布へ移転

1981年

株式会社ビーヨンシイ設立
「やきとり処 い志井」を東京・調布に出店
以後、カフェ、洋食、和食事業などを出店

1999年

有限会社エムファクトリー設立

2001年

「新宿ホルモン」(東京・新宿三丁目)出店

2003年

「日本再生酒場 もつやき処い志井」
(東京・新宿三丁目)出店

2007年

「東京ハヤシライス倶楽部」(東京・六本木)出店

2011年

10月、い志井グループとして、株式会社 い志井と、株式会社 エムファクトリーに改編
11月現在、国内外で115店舗を展開
(直営、FCを含む)

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